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ひと夏の恋  作者: 環流 虹向
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22:00

俺は迎えに来てくれた来虎兄さんとたくさん知らないことを伝えあった莉李を、ホームで見送り家に帰ってきたところ。


久しぶりに1人の家でとても寂しく感じるけれど、俺は作業部屋に行って莉李が俺のために描いてくれたひまわりと男の子と絵を眺めながら瑠愛くんに電話をする。


瑠愛『夏くんだぁ♡莉李ちゃんとらぶらぶぅ…?』


と、なぜかとても酔っ払っている瑠愛くんが電話に出るなり質問してきた。


夏「ラブラブだよ。さっき京都に帰るの見送ったとこ。」


瑠愛『あららぁ…。莉李たん帰っちゃったんだ…。』


夏「うん。でも、また会いに来てくれるし、会いに行く予定。」


瑠愛『わぁあおっ♡積極的な夏くん好きぃ♡』


夏「ありがとう。瑠愛くんだいぶ酔ってるけど何かのお祝い?」


瑠愛『明日、悠ちゃんの家に行く前祝いぃっ。明日の夕方までお休みにしたからのんびり出来るの。』


なるほどな。


仲直り出来たし、悠の家族とも会えるから楽しそうなのか。


夏「久しぶりのお休み楽しんでね。」


俺は仕事を始めたいと伝えるのを明日にしようと思い、電話を切り上げようとすると瑠愛くんは俺を呼び止めた。


瑠愛『夏くん、この仕事続ける?辞める?』


と、瑠愛くんが不安げにそう聞いてきた。


夏「え?続けるつもりだよ?」


瑠愛『はぁああ…。よかったぁぁあああ。』


夏「ん?なんで?」


瑠愛『彼女出来ると辞めるって人、一定数いるから夏くんもそうなのかなって思って…。』


夏「それもちょっとよぎったけど、莉李とちゃんと話して仕事終わりは一緒にお風呂入ることで許してもらった。」


瑠愛『えぇっ!?いいないいなぁ、俺も悠ちゃんとお風呂入りたいー。』


夏「入ればいいじゃん。」


瑠愛『ダメってぇ。いっぱいおっぱい見てるのにお風呂は恥ずかしいってさ。』


と、少し不機嫌そうな瑠愛くんが何かに埋もれながら残念がる。


瑠愛『…夏くんは、悠ちゃんとお風呂入った?』


夏「え?」


瑠愛『入った…?お泊まりした時…。』


瑠愛くんは不安げで今にも泣き出しそうな声で俺に聞いてきた。


夏「入ってないよ。海で水着も見てないよ。」


瑠愛『…けど、おっぱい食べたでしょ。』


俺はその言葉で心臓が締め付けられる。


あの時、悠は何も無いような素ぶりをしてたけど、顔に出てしまう俺が自分で語ってしまったんだろう。


夏「…食べた。」


瑠愛『悠ちゃんの蜜漬けタン食べた?』


夏「食べた…。断れなくて…。」


瑠愛『…夏鞭(なつびん)入れた?』


夏「なにそれ…、分かんない。」


瑠愛『男が女に入れるもんなんか、“それ”と指くらいしかないよ。』


夏「…入れた。」


ダメだ…。


瑠愛くんに嫌われた。


自分の彼女が自分の友達と寝たってこと知ったら、夢衣さん以上に瑠愛くんが傷つくのは確定なのに。


悠が寂しいからってその時の対処しか考えないで、今こうやって瑠愛くんに知られた時の対処なんか1度もちゃんと考えてなかったから正直に言うしかない。


夏「…俺のことクビにして。」


もう瑠愛くんは俺の顔なんか見たくないから。


俺だって莉李が知らない人と寝てるってことを知った時、すごい嫌な気持ちになったから。


俺は出会わないで済むけど、瑠愛くんは仕事をするたびに顔を合わせて毎回嫌な気持ちになるから。


夏「もう、瑠愛くんに会わないし、悠とも距離置くから。悲しい気持ちにさせてごめん。」


俺は電話を切り、自分の寝室のベッドで布団に包まり目を瞑る。


自分の仕事を失った辛さよりも、ずっと俺のことをそばで見守ってくれていた瑠愛くんを悲しませてしまったことが辛い。


その場の人の悲しそうな表情を見たらなんとかしたいって思うけど、その後のことなんか1度もちゃんと考えたことないから数少ない友達を2人も失った。


幸せにするって言ってくれた人を俺は幸せな気持ちにも、笑顔にもさせてあげられない。


本当に俺って何も考えられない能無しだ。


「夏くん。」


と、耳元でもう聞けないと思っていた声が俺の名前を呼んだ。


夏「…瑠愛くん?」


俺は布団に埋めていた顔を声がした方へ向けると、少し酒臭い瑠愛くんが薄く頬を染めて微笑んでくれていた。


瑠愛「夏くんが会いたくなくても俺は会いに来ちゃうし、悠ちゃんはたくさん近づいちゃうよ。」


と、瑠愛くんは俺の側にしゃがみ、優しく頭を撫でてくれた。


夏「で、でも…。俺、瑠愛くんのこと傷つけた…。」


瑠愛「死ななければ全部かすり傷。痛いけど死なないならいいよ。」


夏「痛いの…、嫌だよ…。」


瑠愛「俺は痛いの慣れちゃったから。夏くんのは正気に戻させてくれるビンタくらい。」


そう言って瑠愛くんはベッドに寝転び、俺を背後から抱きしめてくれる。


瑠愛「これ以上穴兄弟は増やしたくないけど、これは俺の責任だから夏くんは悪くないよ。」


夏「悪いよ。大悪党だよ。」


瑠愛「誤魔化したり嘘ついたら大悪党になってたけど、やっぱり夏くんは聖人で本当のこと言ってくれたから好きだよ。」


夏「俺、みんなが思うほどいい人になれてない…。」


瑠愛「みんなそんなもんだよ。人に嫌われるところを大っぴらにするのはバカがやること。嫌われるのが嫌で隠し通そうとするのは大嘘つき。嫌われる覚悟で真実に真正面に向き合う夏くんはいい子。」


夏「でも…、自分から言えなかった。」


瑠愛「俺のためでしょ?2人して隠したのは俺と一緒にいたいって思ってくれたからじゃないの?」


夏「…うん。」


瑠愛「それが聞けて俺は嬉しいよ。俺もずっと一緒にいたいから酒の力借りて聞いちゃった。ごめんね。」


夏「瑠愛くんは悪くないよ。俺が悪いんだ。ごめん。」


俺は瑠愛くんの腕を抱きしめて背中で瑠愛くんの体温を感じる。


瑠愛「どっちも悪子(わるこ)ちゃんね。今日は悪子ブラザーズで一緒に寝ていい?」


夏「…うんっ。一緒に寝たい。」


俺は背中にいる瑠愛くんの方を向き、頭に抱きつく。


瑠愛「うーんっ!夏くんの匂い好きなんだぁ♡シンプルな洗剤なはずなのに、向こうの方に太陽がある匂いするぅ。」


と、瑠愛くんは俺の服の匂いを吸い、夢うつつに俺の好きなところをたくさん言ってくれる中、俺はそれを子守唄にさせてもらって眠りにつかせてもらった。






→ 想いきり


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