12:00
俺は瑠愛くんに頼まれて悠を家に送るために、瑠愛くんの家に悠を迎えに行くととても不機嫌で目が腫れてる悠が俺のことを玄関で待っていた。
夏「どうし…」
悠「行こ。」
悠は自分の荷物を取ると俺の手を引きながら足早に玄関を出てエレベーターに乗り込む。
夏「…瑠愛くんと喧嘩したの?」
そう聞くと悠は静かに頷いた。
今度は何があったのか聞こうとするけど、悠は黙ったままでどんどん駅に向かっていってしまう。
夏「仲直りした?」
悠「…した。」
けど、なんでそんなに不機嫌そうな顔なんだ?
俺は全く分からなくてどうすればいいのか考えていると、横目にフルーツジュース屋が見えてそこで少しだけ悠の機嫌を取ることにした。
夏「何にする?俺はオレンジかなー。」
悠「…いちご。」
夏「分かった。」
俺はフルーツジュースを買い、店の端にあったベンチに座って悠と一緒にフルーツ休憩する。
夏「やっぱり100%って美味しいね。」
悠「…100%がいい?」
夏「そうかも。コンビニの香料入ってるオレンジジュースよりこっちの方が美味しい。」
俺はこんなとこにこんなに美味しいオレンジジュースがあることに感動して旨味で目を少し潤ませながら飲んでると悠は口につけていたストローを外し、俺の腕にもたれかかってきた。
夏「…どうしたの?」
悠「私、100%で瑠愛くんのこと好きじゃないのに付き合ってもらってるのなんだか悪いなって思ってきちゃった。」
夏「まだ永海のこと、好きってこと?」
悠「好きだけど、恋愛の方はちゃんと区切りつけたよ。」
夏「じゃあ100%じゃん。」
俺がそう言うと悠は首を振って、俺の肩に頭を置いた。
悠「可愛い子触りたいって思うから100%じゃない。それで昨日瑠愛くんのこと泣かせちゃった。」
喧嘩の理由を話してくれた悠は俺の肩を濡らし、俺の膝に乗せている結露を始めたいちごジュースでも濡らしてくる。
悠「私、瑠愛くんのこと好きなはずなのに、触りたいって思うのは女の子で昨日夢衣さんのこと襲いかけた。」
夏「…え?」
悠「一くんがいたから止められたけど、2人だけだったら全部してたかも。」
何がどうなってそうなったかは分からないけど、性的欲求を自制するの難しいよな。
だから俺がやってた仕事がある訳でお金が貰えていたんだ。
夏「欲求抑えるの難しいよね。俺もたくさんキスしちゃうし…。」
俺は2人とのキスを思い出し、大切な人たちにこのことを内緒にしていることがとても罪悪感を感じる。
悠「恋人同士ならいいじゃん…。」
莉李とはそうだけど、永海とは違うんだ。
けど、それは悠にも誰にも言えない。
夏「じゃない人ともしたって言ったら怒る…?」
俺は自分の気持ちを少しだけでも軽くしたくて、悠にそう聞いてみた。
悠「…仕事ならしょうがないじゃん。私、仕事でも好きな人でもない人としてるし。」
夏「…俺とのキスは罪悪感ある?」
そう質問すると悠は少し体を跳ねらせて驚き、俺の肩から顔を離してびっくりしたまま俺を見てくる。
悠「ないことないけど、あの時は付き合ってない時だったよ?」
夏「この間は半分付き合ってたし、瑠愛くんのこと好きなのにしたのはなんで?」
悠「寂しかったし…、夏くんが私のこと好きにならないって分かってたし…。」
夏「莉李のために旅行に行ったから?」
悠「うん…。」
夏「莉李も好きで、悠も好きだったらどうしてた?」
俺は申し訳ないと思いながらも、永海を悠に置き換えた。
悠「…え?でも好きじゃないじゃん。」
夏「好きだよ。」
友達として。
あの日、莉李と会わせるように動いてくれたことも、俺の気持ちを最優先して付き合えたことをお祝いしてくれる、そういう悠が好き。
けど、恋愛として動かないのは出会いの印象が永海や莉李より印象的じゃなかっただけ。
もし、永海の後ろに隠れながら自己紹介をせずに、俺と悠だけの初対面だったりしたら好きになってたかもしれない。
全部、タイミングや巡り合わせの話だけど嫌いな人ではないからその気持ちになる可能性はいくらでもあったんだ。
ただ、2人より好きになる印象がちょっと薄かっただけ。
悠「…夏くん、ちょっと怖いかも。」
驚いて顔が少し強張る悠が寄りかかっていた俺の腕から離れようとしたので、俺はその腕で悠の腰を持ち自分に引き寄せる。
悠「夏く…」
夏「俺は他の人と触れ合っても怒ったりしないよ?瑠愛くんと付き合ってても、好きだなぁって思ってるよ。」
悠「お願いっ…。離して。」
と、悠は腰にある俺の腕から逃れようとするけど、案外逃げられないらしい。
夏「悠が泣いてるとこ、見てられないよ。ひとりで寂しそうにしてるのも見てられない。だからずっと誰かさんたちの代わりしてたけど、気づいてなかった?」
俺は焦る悠の口元に安心して自分の唇を近づけると、予想した通り間に手が入ってきた。
悠「…ご、ごめん。私、瑠愛くん好き。」
夏「うん。」
悠「瑠愛くん好きだから出来ない…。」
夏「気持ち入ってないキスも無理?」
悠「…え?」
夏「俺、悠のこと好きだけど、感謝がいっぱいの友達として好きなんだ。だから恋愛の好きの気持ちは入ってないよ。」
悠「そっ…、か…。びっくりした…。」
夏「ごめん。驚かせて。」
俺は悠の腰から腕を離し、溢れかけのいちごジュースを持ち直させる。
夏「瑠愛くんも可愛い子の体に触りたい気持ち分かると思うし、そこに恋愛の好きが入ってないのは分かってるから大丈夫だよ。そういう仕事、してきてる訳だし。」
悠「でも…、泣かせちゃったよ。」
夏「夢衣さんだからじゃない?友達同士だから恋愛感情が湧いて別れることになったら嫌だなって思うんだよ。」
悠「…お店でも恋愛してる人いたけど。」
夏「瑠愛くんNo. 1だったんだよ?そこをちゃんと割り切れる人じゃないと出来ないよ。」
悠「私、お店で告白されて付き合っちゃったよ…。」
夏「この前の彼氏?」
そう聞くと悠は言葉を発さずに頷いた。
夏「悠は好きじゃないって言ってたじゃん。」
悠「…少し、好きだったよ。」
その時のことを思い出したのか悠の目が潤み出す。
だからずっと嫉妬してたのか。
やっと悠の不機嫌な理由が分かった気がする。
夏「瑠愛くんはしない人だよ。いつもブスとかお腹減ったとか言ってて、仕事で手抜きしようとしてお客さんに蹴られた瑠愛くんだから大丈夫。」
悠「今、真面目に仕事してるのに…?」
夏「今は自分の会社だから。この前まで津々美さんとか桃汰さんを動かしてる社長が経営してるお店だったからお金だけ稼ぎに来てたよ。」
悠「…そうなんだ。」
俺が知ってる不真面目な瑠愛くんを悠は知らなかったらしく、少し俯きながらも目を丸くさせて驚いていた。
夏「あの時、悠が瑠愛くんと連絡先交換するの忘れたって俺に言ったじゃん?」
悠「…え、うん?」
夏「いつもの瑠愛くんなら仕事用の連絡先を女の子に渡すのに、プライベート用の連絡先渡しといてって言ってくれたんだ。だからあの時から悠は瑠愛くんにちゃんと愛されてるよ。」
悠「そう…、思う…?」
と、悠は涙目で俺に聞いてきた。
夏「うん。ホテルでちゅーしたのも悠のことたくさん考えてだと思うよ。俺が合宿で悠にそっけない態度とったのバレて叱ってくれた。」
悠「…だから朝に連絡くれたの?」
夏「そうだよ。瑠愛くん、人が着てる服とか身につけてるものあんまり侮辱しないけど、あのシャツのことセンスないって言ったからびっくりだよ。」
悠「あれ、ほんと趣味疑うよね…。」
夏「そうだね…。あとは仕事の電話かと思ったら悠の腕枕の惚気を言ってた時もあった。瑠愛くん、声だけなのに幸せ溢れてて抱き心地まで話してくれたよ。」
悠「…夏くんも知ってるけどね。」
夏「俺は穏やかで優しいのしか知らないよ。激しいのと強引なのは瑠愛くんだけじゃない?」
と、俺が首を傾げながら聞くと悠は真っ赤になった顔を両手で隠した。
夏「3日間別れたのは桃汰さんたちのせい。瑠愛くんは悠のこと守りたいから俺に電話して家まで送ってほしいってお願いしてきたんだ。」
悠「私が瑠愛くん守りたいもん。」
夏「…あの時、悠がビール瓶投げつけてなかったら俺が悠の彼氏になって瑠愛くんの代わりになってたとこだよ。」
悠「なにそれ…。」
夏「悠を1人にしたらどっか行っちゃうの知ってたからだよ。自分がいなくなっても悠の全部、守ろうとしてたよ。」
そう話すと悠はゆっくりと赤い顔から手を離し、俺の手を掴んだ。
悠「瑠愛くんのとこ、帰る。それでちゃんと私も好きなの伝えたい。」
夏「…うん!行こっか。」
俺たちは駅を背に歩き出し、悠は帰るべき場所に帰り俺は莉李が待ってる家に帰った。
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