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ひと夏の恋  作者: 環流 虹向
8/24
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22:00

俺は先に遊びに来た悠と一緒に、仕事終わりの瑠愛くんが来る前に1歩も動かなくてもいいぐらいの呑み会が出来るようセッティングしていく。


すると玄関の鍵が開く音がして少し賑やかな声が聞こえた。


きっと瑠愛くんが夕焼けを捕まえた俺の家に驚いているんだろう。


俺はそんな瑠愛くんを迎えに玄関に行くと、夢衣さんも一緒に来ていた。


夏「わぁっ!夢衣さん、プードルみたいで可愛いですね!」


夢衣さんは肩まであった髪を耳にかかる程度まで切って、ウェーブが大きいふわふわの髪型になっていたので俺は驚いた。


夢衣「ありがとー♡髪の毛が首につくとちょっとあれだったから…。」


と、気まずそうに夢衣さんは教えてくれたけど、そんなことより夢衣さんの細く長めの首とその髪型がとてもマッチしていて、早めに見れた紅葉を見てるのかのようで気持ちが高ぶる。


瑠愛「今日友達と美容院行ってイメチェンしてきたんだよね!友達のセンス良き良きねっ♡」


夢衣「初めてこんなに切ったからちょっと不思議な感じなんだー。」


そう話してくれた夢衣さんと瑠愛くんを部屋に通して、悠と準備していた呑み会を始める。


この間はウイスキーとビールを拒否していた悠だったけど、今日の夕方に買い出しに行ったら自分からその2つの酒をカゴにいれてくれた。


きっと、あの公園でしっかり話が出来たんだろう。


俺は2人がまた仲直りしてくれてよかったなと思いながら、マサキさんに教えてもらったカクテルを莉李に呑んでもらいながらこの場を楽しむ。


瑠愛「来虎兄さんってこんな大きかったんだね!俺、てっきりすらりんモデルさんみたいな人だと思ってた。」


来虎「名前は“ココ”って可愛い感じだからなぁ。それが嫌で身長と筋肉大きくするのに必死でこんなんになった。」


と、俺が知らない来虎兄さんになった理由を教えてくれた来虎兄さんは、同い年の夢衣さんととても意気投合していてこの場を楽しんでいくれている。


みんなこの呑み会を楽しんでくれてよかったなと思いながら、俺はふと隣にいる莉李を見ると少し眠そうに目を瞑って頭を空に置こうといていた。


夏「莉李、眠い…?」


莉李「…あ、ちょこっとだけね。でもまだ寝たくないの。」


夏「無理しなくてもいいよ?」


莉李「みんなともっと一緒にいたいし、夏が私のために作ってくれたこの部屋をもっとこの目で見てたい。」


そう言ってくれた莉李は沈みかけの夕日を見て愛おしそうに微笑む夕顔みたいで、また新しく知った莉李を好きになり俺は抱きしめてキスをする。


瑠愛「やんっ♡夏くんって意外とお熱々なのねっ!」


悠「この間も私と来虎さんの前でちゅーしてたよ。」


瑠愛「俺も悠ちゃんとしたいなぁ。」


悠「瑠愛くんからじゃないとしない。」


瑠愛「俺も悠ちゃんからじゃないとしないっ。」


この間の喧嘩のあとからずっとしてないのか?と不思議に思っていると、莉李が不思議そうに悠のことを見つめていた。


夏「どうしたの?」


莉李「…悠さんは瑠愛くんとのちゅーすごい好きって言ってたけどしないの?」


そう莉李が言うと、悠が少し体を跳ねさせて固まる。


莉李「この間、公園で恋話した時に瑠愛くんとのちゅーはわたがしと犬が遊んでるみたいなちゅーで、今までのちゅーで1番好きって言ってたじゃん。」


瑠愛「…え?わたがし?犬?いちばん?」


莉李「うん。瑠愛くんのちゅーって甘くて気まぐれなもちこに似てていっぱい愛あるから好きって言ってたよ。」


瑠愛「愛…、あるっ!」


そう言うと瑠愛くんは固まったままの悠を持ち上げて一緒に立ち上がった。


瑠愛「莉李ちゃんの部屋借りていい…?」


莉李「いいよ。私、夏の部屋で寝たかったし。」


瑠愛「このお礼は明日のお昼ね!」


と、莉李と俺の頭に軽くキスをした瑠愛くんは悠を連れて莉李のために用意したベッドがある部屋に向かった。


来虎「…そんな話してたのか。」


莉李「うん。悠さんがそんな風に思う瑠愛くんってどんな人なんだろうって思って会いたかったの。」


そうだったのか…。


まあ、2人が仲直りするなら新品のベッドシーツをどんな色に変えられても構わないなと思っていると夢衣さんが急に泣き出してしまった。


来虎「どうした?酔ったら泣いちゃうのか?」


夢衣「ううん…。みんないいなって思っただけ…。」


そう寂しく呟いた夢衣さんはこんなに楽しいと思えた空間でも、ずっと独りを感じていたのか溢れ出る涙が止まらない様子。


来虎「いいよな。俺も思ってたとこ。」


夢衣「ちゅー…、する?」


来虎「え…」


と、来虎兄さんが驚いていると夢衣さんは来虎兄さんの頬に手を置き、顔を近づけていく。


俺と莉李は初めて見る2人の様子に驚いて止めることを忘れてしまっていた。


来虎「ちょ、ちょっと待って!俺、全然夢衣のこと知らない。」


夢衣「知らなくても出来るよ…?」


そう言った夢衣さんの顔が唯一見える来虎兄さんは何を思ったのか、夢衣さんを抱きしめた。


来虎「もっと、自分のことを大切に…」


夢衣「大切にしても、どれだけ着飾っても、私は便利商品みたいにすぐに飽きられて捨てられるの。そういう私って分かったからもういいの。」


俺の全く知らない夢衣さんは何をされてきたのかは分からない。

けど、俺があの社長たちの店で感じたことを夢衣さんが口に出したのを聞いて俺まで涙が出る。


夢衣「…来虎がちゅーしたいなって思ったら私の口使ってもいいよ。私はそれで満足だもん。」


震える声で自分のことを物扱いしてしまう夢衣さんが見ていられなくて、俺は莉李の肩に顔を埋めて見えないようにしていると何も知らない莉李が抱きしめてくれた。


俺はそういう変わらない莉李も好きで涙が止まらない。


来虎「人同士が触れ合う時はその相手を想って触れ合うんだ。そうしないと夢衣みたいに自分が人だってことを少しだけ忘れてしまうから人肌を求めるようになるんだ。けど、体温を奪ってばかりじゃダメなんだぞ?」


と、来虎兄さんは腕の中にいる夢衣さんに優しく教える。


来虎「温めてもらったら、次はその人を温め返さないと人になってくれない。夢衣はそうした?」


夢衣「たくさんしてみたけど、全然だったよ…?」


来虎「そうか…。誰1人ダメだった?」


夢衣「…1人だけいるけど、その人とは付き合えないもん。」


来虎「なんで?」


夢衣「その人のこと好きすぎて殺しそうになるから。」


その言葉を聞いて俺たちは驚き、何も言葉に出来なくなる。


夢衣「私の好きなことも嫌なことも1回聞けばずっと覚えててくれて、何も考えてないようでいっぱい私に好きって思うことしてくれるの。」


と、夢衣さんはまだ好きと思う人の話をしてくれる。


夢衣「その人のこと忘れようって思っていろんな人と付き合って、みんなが言ういい彼女になろうとしたけど全然ダメなの。料理教室行ったり、ダイエット頑張ったり、可愛い顔作ってもみんないなくなるの。」


来虎「…なんで?夢衣すごい頑張ってるじゃん。」


夢衣「みんな一緒。『重い』って一言で私の好きを捨てるの。けど、一は1回もそんなこと言わずに私のこと全部受け入れてくれるからずっと好きなの。」


…一くん?


友達って言っていたけど元彼だったんだ。


俺はその事実に驚き、来虎兄さんに抱きしめ続けられる夢衣さんを莉李の腕の間から見てしまう。


来虎「一さんはちゃんと夢衣の努力を見てくれる素敵な人なんだな。」


夢衣「うんっ…。だからずっと忘れられない。」


来虎「忘れられなくていいよ。そういう素敵な人との思い出は捨てたりしたらもったいないよ。」


夢衣「けど…、辛いっ。その人、違う人好きだから。」


来虎「そうか…。じゃあ俺と一緒にアルバム作るか。」


夢衣「アルバム…?」


来虎「そう。一さんのことを忘れないよう、大切な思い出として取っておくために。」


夢衣「…する。したい。」


来虎「よし!夏、なんかノートあるか?」


と、涙が落ち着いてきた俺に来虎兄さんは聞いてきた。


夏「…あ、スケッチブックなら来虎兄さんが寝る部屋にいろんな大きさのあります。」


来虎「そうかそうか。じゃあ俺たちそっちの部屋でアルバム作ってくるな。」


そう言って来虎兄さんは俺と莉李の頭を撫でてから夢衣さんの手を引いて、部屋に行ってしまった。


夏「来虎兄さん、優しいね。」


莉李「うん。あんなに優しくてモテるのに恋人いた事ないんだ。」


夏「え?そうなの?」


莉李「うん。来虎兄さんが『恋って感情が分からない』って言ってた。」


夏「…あんなに愛がいっぱいで溢れてるのに?」


莉李「溢れてるのは全部親愛で恋愛じゃないんだって。」


夏「だから羨ましいって言ったのかな。」


莉李「うん…。恋人いて羨ましいじゃなくて、恋愛を知ってて羨ましいって思うんだって。」


夏「そうなんだ…。確かに線引き難しいかも。」


俺は朝の永海とのことを思い出し、また自分の気持ちが分からなくなってると莉李が俺にキスをしてくれた。


莉李「私は夏のこと、ちゃんと恋して好きだよ。こうやってまたお話できるのすごい嬉しい。」


夏「俺はずっと莉李に恋してる。出会って付き合って別れた後も、こうやってまた付き合えた今も莉李のこと愛してる。」


莉李「…嬉しい。」


夏「俺も。」


俺はレモンとカシスオレンジの味がする莉李の唇を何度も味わい、莉李からの愛をいっぱい受け取りながらたくさんの愛を知った夜を過ごした。





→ Sweet My Lady


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