22:00
俺はこの間約束した沙樹たちとJ ORICONNに作品を無事に提出できたおつかれ会を楽しみ、俺と沙樹と愛海で何件もハシゴしながら夜を楽しむ。
愛海「2人とも無事に提出できてよかった。」
沙樹「うん!あとは結果待つだけだねー。」
夏「2人の作品をJ ORICONNの会場で見たいよ。」
俺たちもだよ、と言ってくれる2人の温かい笑顔があの絵を完成させた時に感じた喪失感を埋めてくれてる気がして2人の存在の大きさに改めて感謝する。
愛海「次、どこ行く?」
沙樹「のんびり出来るとこにしよ。」
夏「じゃあBAR行こうよ。少し割引してあげるって言ってくれたんだ。」
俺はこの間のクラス会で使ったBARに今日出勤しているというマサキさんに連絡して、テーブルにあるおつまみ数品を胃に入れたら行くことにした。
沙樹「夏は復縁したんだ…?」
と、沙樹は今さっき俺が惚気た莉李のことを驚いた顔のまま聞いてきた。
夏「うん。来週の火曜にお兄さんと一緒に来てくれるんだ。」
愛海「いい兄さん持ったなぁ。俺だったら妹に彼氏出来たらちょっと警戒する。」
沙樹「僕もそうかも。」
…そっか。
よく考えれば2人とも妹いるんだったな。
夏「やっぱり妹と仲いい男の人ってなんか嫌な気持ちになる?」
愛海「夏みたいな奴だったら歓迎。」
沙樹「そうだね。優しさのオーラが溢れてるもん。」
夏「…そうかな。」
沙樹「そうだよ。そのオーラが僕たちの癒し。」
愛海「だな。俺もそんな存在になりたかった。」
俺は自分自身のオーラも存在もまだ分からないから2人がそう言ってくれても腑に落ちない。
本当にそんな存在だったらもっと一緒にいたかった人と、今ここにいないのが不思議でしょうがない。
そう頭の中で考えるけれど意識が点滅し始めた俺は少しふわつく足で何も考えずに、学校近くにあるマサキさんのBARへうろ覚えな2人を案内していると少し遠くにマサキさんのBARの看板が見えた。
夏「あそこ。TIMULooopってとこ。」
愛海「ああ、あそこか。半地下のとこな。」
沙樹「あそこのお酒、美味しかったよねー。」
3人でマサキさんの作る美味しい酒の話をしていると、俺はまたあの色を見つけてしまい思わず顔を俯せてしまう。
沙樹「どうした?気持ち悪い?」
夏「…あ、ちょっと…、ね。」
愛海「あ、永海じゃん。」
沙樹「…え?」
沙樹、その子の隣にいる人を見ないで。
俺はその人と永海が一緒にいるところを見て、胸がえぐられるような辛い気持ちになったから沙樹が見たら泣いちゃうよ。
沙樹「どうして、一くんなんだろ…。」
俺もそう思った。
なんでその子の隣にはいつも一くんがいるんだろうって。
愛海「…付き合ってはないと思うけど。」
沙樹「手、繋いで楽しそうにしてるけど…?」
愛海「う、ん…。」
いつも自信がある言葉を口に出してくれる愛海でも、あの2人の様子を見たら言葉を詰まらせてしまうんだ。
それほど、あの2人は仲良く見える。
沙樹「…この間あったサーフィンの大会で結構仲よさそうにしてたんだ。」
愛海「そうなのか?」
沙樹「うん。BBQしてる時に悠とドリンク貰いに行ったと思ったらあの2人で店の外に行ってたし、一くんがいないと思えば永海の電話に一くんから電話来てたし、永海がテラスで1人泣いてたから元気づけようとしたけど頼ったのはずっと一くんだった。」
愛海「…俺、全く気づかなかった。」
沙樹「愛海はあの日、すごい忙しい日だったから気づかなくて当然だよ。」
夏「…電話は俺を呼び出すためだから。」
沙樹「そのあと、永海は一くんになにか相談してたんだ。僕、ずっと側にいたけど頼り甲斐がないのかも。」
夏「そんなことないって。」
沙樹「そういうことだよ。言葉と行動は嘘をつけるけど、永海は笑顔で嘘をつけないよ。」
俺は2人の幸せを願ってああしたのに、なんでこうも上手くいかないんだろう。
俺がそうしたって選ぶのは永海だからどうしようもない。
けど…。
それは分かってるけど、こんなにも辛い思いをするのであれば…。
俺は自分の考えに急ブレーキをかけてUターンをする。
沙樹「…僕、もう告る。」
「「え…?」」
沙樹「今日ピクニックした時にデート誘ったら永海がOKしてくれたんだ。」
愛海「いいのか?時間かけてもいいんだぞ?」
沙樹「永海は僕の気持ち分かってるから。もう困らせたくない。」
夏「告白して困らない…?」
沙樹「永海はうやむやな事が嫌いだから。ちゃんときっぱり振ってもらうよ。」
そう言って沙樹は笑顔を作ってしまった。
夏「付き合うかも。」
沙樹「そうだといいな。」
愛海「応援してる。いつ?」
沙樹「25日。サマークリスマスだからツリー見に行く。」
愛海「そんなのあるんだ。」
沙樹「僕が見つけたツリーがあるんだ。そこに連れてく。」
夏「喜んでくれるよ。」
沙樹「そう思ってもらうようにに準備頑張る。」
沙樹の意気込みを愛海と一緒に聞き、2人で沙樹の終わりかけの恋を応援する。
その沙樹の想いが今、俺と思っていた人とは違う人が隣にいる永海に届くように心の中で願った。
→ なんてさ。




