7:00
うるさいアラームの音で目を覚ますと、瑠愛くんの代わりとして使っていた腕が痺れていることに気づき、横を見ると俺の腕の上で泣き疲れた悠が静かに寝ていた。
夏「悠、朝だよ。準備しないと。」
悠「…眠っぃ。」
と、悠は若干機嫌悪そうな顔をして言葉を放ったけれど目を開けてくれない。
夏「起きないと弱いとこくすぐるよ。」
悠「…ぅん。」
ダメだ。夜更かししちゃって全く起きてくれない。
俺は鳴り続けるアラームに手伸ばし、アラーム解除をして時間を確認するとあと30分で出ないと行けない時間になっていた。
俺もだいぶ寝過ごしてたらしい。
俺は強制的に悠の体を起こしてまだ寝ぼけまなこな悠に服や化粧ポーチを渡し、準備してもらうように起きてもらう。
悠「…眠い。」
夏「動いたら目覚めるから。」
悠は唸りながらゆったりと準備を始めて俺が外に出る頃にはちょうど全ての準備を終わらせてくれた。
夏「多分、今日帰ってこないと思うけど大丈夫?」
悠「私のことは心配しなくていいよ。」
夏「…来虎兄さんもお酒強いから呑み明かしたら?」
悠「ありかも。」
ちょっと嬉しそうな顔をする悠にしっかりと鍵を渡したことを確認して、俺たちは莉李と来虎兄さんと約束している河原に向かう。
悠「あーあ。夏くんは莉李さんと付き合うのか。」
と、残念そうに呟く悠。
夏「そうしたいけど、莉李がOKしてくれるか分からないよ。」
悠「してくれなかったら諦めるの?」
夏「…なんで?」
悠「んー…?夏くんのこと、好きな子が東京にいるの知ってるから。」
夏「いないよ。」
悠「いるの。」
そうやって悠と呟く声で言い合いながら待ち合わせ場所に着くと、莉李と来虎兄さんが楽しそうに話してるのを見つける。
悠「お待たせしましたー。」
悠は2人に駆け寄り、笑顔を作る。
来虎「2人ともおはよう。」
夏「おはようございます。」
莉李「おはよー。」
来虎「じゃあそれぞれ“散歩”しに行くか。」
そう言って早速来虎兄さんは悠の手を取り、また走り出そうとするのを俺はとっさに止める。
夏「明日までよろしくお願いします。」
と、俺は耳打ちすると来虎兄さんは任せとけと快く引き受けてくれてゆっくりと歩いてどこかへ向かっていった。
莉李「夏、手繋いで。」
莉李は少し外れたところに手を伸ばし、俺の手を待っていた。
夏「うん。」
俺は莉李のお願いを叶えるために手を握り、どこにもいかないように握り締める。
夏「これ、莉李がずっと使ってたMaquislの8番のリップ。カバンの中に入れとくね。」
俺は莉李が肩にかけてるお気に入りのカバンのリップ入れに、前と同じように入れたあげる。
莉李「…ありがとう!久しぶりにMaquislのレモンの香り嗅げるの嬉しい。」
と、莉李はとても喜んでくれるけれど、どうしてもサングラスを外したくなってしまう。
莉李「よーしっ。夏の行きたいところ行こう?」
夏「んー…、もう着いちゃったからな。」
莉李「いいよ。夏の心向くまま、いろんなところ行こう。」
夏「うん。分かった。」
俺は初めて莉李より先に足を踏み出し、まだ1歩も踏み入れたことのない街に莉李と一緒に飛び込むことにした。
→ 愛言葉