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ひと夏の恋  作者: 環流 虹向
8/12
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7:00

最近たくさん考えることがあってちゃんと寝れないな。


俺は自分で買った緑茶を淹れながら今日どのくらいまで絵が進められるか考えていると、瑠愛くんから電話が来た。


瑠愛『おは夏くん!』


夏「おはよう。」


瑠愛くんはいつ寝てるのか不思議なくらい元気な挨拶をした。


瑠愛『今日の事務作業来れそう?』


夏「大丈夫。20時くらいに終わればいいなって思ってるんだけどどうかな?」


今日は合宿の時に永海と約束した流星群の日。

約束したからちゃんと守らなくちゃ。


瑠愛『うん!途中になっても俺がやるから大丈夫だよ。』


夏「…瑠愛くん、ちゃんと寝てる?」


瑠愛『さっきまで悠ちゃんの腕枕で寝かせて頂いた!』


と、幸せな笑い声が聞こえて俺も微笑んでしまう。


夏「良かった。ゆっくり寝れたみたいだね。」


瑠愛『穏やかに激しく、優しさと強引さに溢れた抱き心地でしたぁ♡』


夏「そこまで聞いてないよ。」


瑠愛『話したくなっちゃった。嫌だった?』


瑠愛くんは不安そうに俺に聞いてくる。


夏「ううん。そういう話好きだよ。愛がいっぱいに溢れてる感じ好きなんだ。」


瑠愛『愛愛悠(あいらぶゆう)だね!俺も好きなんだぁ♡夏くんからもそんな話聞きたいよ。』


夏「…俺はしばらくないよ。」


そう言うしか出来なかった。


莉李も俺もあの日のように戻れるのか分からない。


俺は戻りたいと思っていても莉李がそう思ってくれないと、この想いの一方通行は赤信号で止まったままなんだ。


瑠愛『そっかぁ。俺はいつでも待ってるからね!』


夏「うん。いつか話すね。」


楽しみにしてると言って瑠愛くんは電話を切り、また悠の腕の中に眠りにいった。


2人ともまだ好きと思っていた人を諦めきれていないのになんでお互いを求め合ったんだろう。


俺は2人の心情がまだ分からなくて、モヤつく気持ちのまま絵を進めていいのかと悩みながら画材を準備していると携帯のアラームが鳴った。


そうだ、マサキさんにおはようの電話をするんだった。


俺は携帯を取り、マサキさんに電話をかけるとしっかり寝ていたのか少し出る時間に間があった。


夏「マサキさん、おはよう。」


マサキ『…おはよ。』


少しかすれ気味の声で起きたてのマサキさんが挨拶してくれる。


夏「今日はすごく晴れて青空が綺麗だよ。」


俺がそう言うとマサキさんの電話口から、立ち上がり窓を開ける音が聞こえる。


マサキ『夏だね。』


夏「夏だよ。」


そうだったとマサキさんは笑い、その場で深呼吸をする。


マサキ『今日は仕込みだけしてお店出るの休もうと思うんだけど、…いいと思う?』


と、マサキさんは不安そうに聞いてくる。


マサキさんは根が仕事人間だから強制的に休みを入れないとずっと働いて頑張ってしまう人だからそう思った時は休んでほしい。


夏「うん。休もう。今日は流星群が明け方まで見えるからゆっくり過ごそう。」


マサキ『久しぶりに夜空見るかも。』


夏「…そっか。仕事だもんね?」


マサキ『うん。休みでもあんまり見上げたりしなかった。』


夏「いい機会だね。たくさんお願い事して叶えてもらおう。」


マサキ『そんなにお願い事ないよ。』


と、マサキさんは笑いながら俺とのたわいのない会話を楽しんでくれる。


よかった。

ちゃんとマサキさんが戻ってきてくれたみたいだ。


マサキ『本当にお願い事を叶えたい時は…』


と、マサキさんは流れ星で願いを必ず叶える方法を俺に教えてくれる。


夏「…本当に?」


マサキ『私は1回だけ成功したよ。』


こういうお願い事ってあまり叶わないイメージがあったけど、マサキさんがそう言うならやってみるかな。


夏「やってみる!教えてくれてありがとう。」


マサキ『昨日のお礼、…って言うのには安すぎるね。』


夏「安いとか高いとかじゃなくて、それを教えてくれたマサキさんの気持ちが嬉しいよ。」


マサキ『夏くんは優しいね。』


夏「…そうでもないよ。」


俺は自分の自分勝手な行動を思い出して心臓がチクチク痛い。


マサキ『そんな夏くんのお願いが叶うように私もやっておくね。』


夏「え!マサキさんの分はマサキさんの分だよ。」


マサキ『だからそうするの。』


マサキさんは優しく笑い、夜が楽しみだと言う。


なんでマサキさんはこんなにも優しいのに辛いことばかり起きてしまうんだろうな。


夏「俺はマサキさんや周りの人の幸せを願うよ。」


マサキ『…優しいね。』


夏「ううん。俺には出来ないから。」


マサキ『出来てるよ…!!』


マサキさんは突然大きい声でそう言った。


マサキ『あの日からずっと1人でいるのが嫌で家に帰るのも遅くなったけど、夏くんがいてくれてすごく嬉しかったの。1人じゃないって思わせてくれた夏くんは私の心を幸せで満たしてくれたよ。』


夏「…そんな風に思ってくれたの?」


マサキ『優くんといるときも夏くんといるときも私は幸せいっぱいだよ。こんな私なんかといてくれる数少ない1人だもん。』


夏「マサキさんは“なんか”で収まる人じゃないよ。」


マサキ『…ありがとう。そういう夏くんの言葉一つ一つが嬉しいの。』


夏「そう、言ってくれるの…、すごく嬉しい。」


俺は人より言葉が拙いと思っていたから俺の言葉で喜んでくれる人がいるなんて思いもしなかった。


マサキ『またいっぱいお話ししてね。』


夏「うん。いっぱいするね。」


俺はそう約束してマサキさんとの電話を終えて、自分の言葉を絵に乗せることに決めた。





→ 流れ星

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