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第三の謎・解&第四の謎

『問H:

a circuit → 赤色

反語 - 紐育 → 藍色

over っ eating → 褐色

英雄 → ??


ヒント:ほにゃく☆』

「だから語尾に☆をつけるなとあれほど――」

『その件はさっき説明したはずなんだけど!?』

 お約束のやり取りを挟んだのち、皐月は改めて謎の書かれた紙を確認する。

「今度は問Hね……B、K、Hとなんの法則性もなければ意味もなさそうだけれど……二回続けば推測はできる。問Bの答えが分泌で、問Kの答えが彼女なのを考えると、このアルファベットは謎の答えの頭文字を指してる可能性が高いんじゃないかしら。だから今回の謎の答えはHから始まる色になるのかしらね。灰色とか? まあ、偶然の可能性もあるから、普通に解いていきましょうか」

 この皐月の考察を、モニターの向こうの菜々は心臓バックバクで聞いていた。この後輩、私が思ってるよりもだいぶ頭いいかもしれない、と。

「今回も法則系の謎解きね。右側が色で統一されているから恐らく答えも色。逆に左側は統一感があまりないわね。英語だったり漢字だったり。でもってヒントはほにゃく、と。何よほにゃくって。こんにゃくの友達かなにかかしら」

 聞きなれない単語に、皐月は先程も利用したタブレットを使って検索をしてみることにした。すると、ほにゃくの検索結果ではなく翻訳の検索結果が表示された。ミスタップだと判断されたらしい。改めてほにゃくでもう一度検索してみたが、ろくな情報は得られなかった。取り敢えずこんにゃくの友達ではなかったようだ。

「意味のある単語ではなさそうね……検索エンジンにも翻訳と間違われるし。……いやでも、翻訳は割と試してみる価値ありそうよね。例えば一番上の「a circuit」を翻訳してみると……回路よね。それが赤色になるってことは……あ、もしかして「a circuit」の「circuit」部分だけを日本語に翻訳して「a 回路」で赤色ってこと? そんな単純でいいのかしら」

 先程までの二問に比べて簡単すぎるのでは、と思いつつも、今のところそれしか思いつかないので他のものにも当てはめてみる。

「同じく英語の三つ目から考えてみましょうか。「over っ eating」だから……間に入ってる小さいつは気になるけれど、言葉としては「over eating」よね。翻訳すると食べ過ぎ、過食。間に小さいつが入って「過っ食」だから、褐色ってことね。うん、これで良さそう」

 自分の考え方が正しそうなことを確信した皐月は、さっさとこの謎も終わらせてしまおうと思考を加速させる。一方自分の考えた謎が瞬殺されそうな現状が面白くない菜々は、再び懲りずにちょっかいをかける。

『さっちん、今うんこって言ったよね?』

「は、はあ? 突然そんなこと言うわけないじゃないですか」

『いいや言ったね! ここに偶然たまたまなんとなく録音してた音声があるけど『うん、こ』ってほらしっかり言ってるよ!』

「先輩が悪意ある切り取り方をしてるだけでしょう!? というか、なんでそんなの録音してるんですか! すぐに消してください!」

『嫌だ! これは私の「さっちん下ネタボイス集」に追加するんだ!』

「なっ! なななんですかそのおぞましいボイス集は! そんなものいつどこで録ったんですか!」

『あっやべ、また余計なこと言った。菜々ちゃんちょっとミュートしま~す!』

「ちょ、またですか先輩! せんぱーい!?」

 皐月は何度も呼びかけたが、宣言通りミュートしているのか菜々からの返事は一切なかった。後でハードディスクごと全データを焼き尽くしてやると心に誓いつつ、皐月は謎解きを再開する。ちなみにミュートされたスピーカーの向こうでは「うわぁまたやっちゃったよ、私がさっちんの盗聴ボイスを切り貼りしてエロボイスを作って遊んでたのがバレちゃうよ~」と菜々が頭を抱えていた。この人が美しい土下座を披露するまで残り1時間半。

「……言いたいことは死ぬ程あるけれど、とりあえずは脱出を優先しましょう。ええと、次に考えるのは……「反語 - 紐育」ね。さっきとは逆で、この単語を英語に翻訳する感じかしら。だとすると、反語は「irony」で、紐育は……へえ、これでニューヨークって読むのね。初めて知ったわ。で、これらを合わせて考えると「irony」からニューヨークを引く……NYを引け、ってことでいいのかしら。だとすると「iro」になって、これが藍色……確かに、そう読めなくもないかしら。ちょっと強引な気はするけどね」

 謎解き制作三問目にして飽きが来ていたのかしら、と制作時の菜々の様子を想像しつつ、皐月は最後の部分の謎解きに取り掛かる。一方スピーカーの向こうでは「私が頑張って作った謎にケチをつけるとはいい度胸だ!」と菜々が叫んでいたが、マイクがミュートになったままだったので皐月の耳にその怒りの声が届くことはなかった。

「最後は「英雄」……これまたえらくシンプルね。翻訳機能を使うまでもない気はするけれど一応……まあそうよね、ヒーローよね。ヒーロー……ひいろー……緋色、ってことでいいのかしら。頭文字もHで問のアルファベットと一致してるし、これで試してみましょう」

 間違えたところで別にペナルティがあるわけでもないし、と皐月は木箱の入力装置に「ひいろ」と打ち込む。どうやらそれは正解だったようで、木箱からかちゃりという解錠の音が聞こえた。

『第三の謎突破オメデトー』

「……なんかテンション低くないですか、先輩」

『だって、私が頑張って作った謎が5分でクリアされたんだもん! そりゃあ棒読みにもなるよ!』

「そう言われましても……私もこの部屋から出られないと乙女の危機ですし」

『一応冷蔵庫の中に空のペットボトルは入れておいたから急がなくても大丈夫だよ?』

「ちっとも大丈夫じゃないですね。それだけは死んでも使いたくないです」

 最悪の事態を想像して顔をしかめつつ、皐月は鍵の開いた木箱の蓋を開ける。またどこぞの鍵でも入っているのかと思いきや、中に入っていたのは四つ折りにされた紙切れだった。取り出して広げてみると、そこには『麻雀卓を起動せよ』とだけ書かれていた。恐らく菜々の手書きだ。

「麻雀卓、っていうのはどう考えてもアレのことよね」

 皐月は自分の部屋にあるのが違和感でしかない全自動麻雀卓を見やる。麻雀をやらないわけではないが、スマホやパソコンで打つことがほとんどなのでこうして本物の卓をまじまじと見るのは初めてだ。緑色の卓上に物はほとんど置かれておらず、あるのは麻雀に使われる「東」とかかれたプレートと卓の中央に置かれたタブレットだけだ。

(あの人どれだけタブレット用意してるのかしら……その資金はどこから出てるのよ……)

 一つ年上の先輩の得体の知れなさに慄きつつ、皐月は指示通りに麻雀卓のスイッチに触れる。すると、ウィーンという駆動音と共に麻雀卓が動き出す。本来であればゲーム開始のために17×2段に自動で積まれた麻雀牌の山が四角形の四辺にそれぞれせりあがってくる仕組みなのだが、麻雀牌など一枚たりとも出ては来ず、代わりにせりあがってきたのは平仮名の書かれた紙だった。

『問Y:

□ しんのう□

ゅ     た

ん  ?? け

か     く

わ 東   ら

□ あいぼ □


ヒント:1日☆』

 皐月のいる場所から見て手前の辺には「あいぼ」の文字、右側の辺には「たけくら」、左側には「しゅんかわ」、奥の辺には「しんのう」の文字が書かれた紙がそれぞれ現れる。「東」と書かれたプレートは「あいぼ」のすぐ横に置かれており、それらの紙の出現と同時にタブレット上には『問Y:?? ヒント:1日☆』の文字が躍る。ここに答えを入力すればいいようだ。

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