魔物住まう森1
隣国の名前はシュツッドルド王国。
リクは別れる前にそう教えてくれた。
離宮に書庫があり、そこの蔵書を読むのが好きだった私は、知識として国のことを知っていても、実際にどのような国なのかをまるで知りません。
やってきてわかったことは、この地域では、マナと呼ばれる魔力の素が非常に豊富だということ。これなら、聖女がいなくても技術さえあれば誰にでも魔法は使えると思います。
国外へやってきた興奮もいよいよ冷め、歩き通しだったせいで疲れた私は、小さな町を見つけ、そこにある食堂で食事休憩をすることにしました。
モグモグ、とパンを頬張り、スープを飲みながら、今後のことを考えました。
このまま旅をしていてもいいのだけど、やっぱりどこかに家がほしいです。
優しい動物たちと戯れ、晴耕雨読の日々が送れるような……そんな穏やかで静かな家が。
「お嬢ちゃん、一人かい?」
そんなとき、店主が声をかけてくれました。
「はい。さっきこの町に来たばかりで」
「旅の人?」
「ええっと、まあ、そんなところです」
はぁ~、と感心するような驚いたような感嘆の声を店主は上げました。
「あんまり、年頃の女の子がウロウロするもんじゃねえぜ? このフランガスの町はまだ比較的治安のいいほうだが、森にゃ魔獣や魔物がいるんだ」
「近くに森があるんですか?」
「ああ。畑の作物を勝手に食っちまうってんで、この前有志を募って狩りに行ったんだが、怪我だけして帰ってきてな」
「それは困りましたね……」
「死人が出なかっただけよかったが……。作物がなくなれば、いよいよ町を襲うかもしれねえ。だからよ、あんまり長居しねえことを勧めるよ」
冗談めかして言う店主は、快活そうに笑いました。
「森の中には、魔物たちの食べ物はないんでしょうか?」
「どうだかな。魔物の考えるこたぁ、オレらにゃわかんねえ」
いずれ町を襲うようになれば、平和でのんびりしたここも、タダでは済まないかもしれません。
食事を済ませた私は、店主にお願いしてパンと干し肉を少し買いました。
「気をつけるんだぞ」
と心配してくれる店主。
きっと、また旅に出るのだと思ったに違いありません。
お礼を言って、私は町を出ました。
魔物の食料問題が解決すれば、町に食料を求めて森から出ていくこともないはずです。
そうすれば、町の人も困ることはないですし、私も住めそうな森かどうか下見ができるので、一石二鳥でした。
あたりを見回してみると、街道の外れに鬱蒼とした森が見えます。
「話にあった森ですね、きっと」
私は意気揚々と歩き出し、森へと歩を進めました。




