015 二つのチーム
詳しいことを裕美が説明してくれた。
それによると、大我が死んだのは昨夜。
スタート村に逃げ帰ってから2~3時間後のことだ。
最初に糸原が宣言を出した。
大我は死んだ、俺が殺した、大我の時代は終わりだと。
この時点では、皆、糸原が仕切り始めるのかと思っていた。
しかし、それは違っていた。
「これからは私の時代よ」
名乗りを上げたのが東雲友加里だ。
彼女こそ、糸原をそそのかした張本人だった。
友加里は“ご奉仕”を条件に糸原を動かしたのだ。
友加里の方針は、大我と似ていた。
どうするかを決めて指示を出すのは友加里だ。
悪さをした者に対する処分も、友加里の匙加減で決定する。
労働面についても似ていた。
危険な任務は男が引き受け、女は身をもって男を労う。
ただ、大我と違って、女は必ず癒やし担当になる。
例外はなく、リーダーの友加里ですら働くという。
大我は「癒やし担当が嫌なら男と同じ仕事をしろ」と考えていた。
なので、労働面に関しては、大我よりも自由度が低い。
一方で、チームを抜けるのは自由だ。
嫌なら他所へ行けばいい、というスタンス。
さらに、脱退後の再加入も罰則なしで受け付けている。
また、女の労働について、友加里は呼称を改めた。
「癒やし」や「ご奉仕」ではなく、「下賜」である、と。
下賜とは、上の者が下の者に物を与えることを指す言葉だ。
「男は女のために働く。しっかり働いた男には、女から価値ある褒美が与えられる。それが私の考え方。立場は女のほうが上よ」
友加里のリーダー宣言には多くの者が反対した。
女尊男卑のこの方針に異を唱えたのは、女子だ。
立場や呼称がどうであれ、やっていることは大我と同じである。
そのため、多くの女子にとっては受け入れがたい話だった。
大我と違って恐怖による支配もないため、大半が拒んだ。
大ブーイングの女子に対して、友加里は迷うことなく言い放つ。
「私の考えに賛同できない人は、明日の内にここを去りなさい」
友加里にとって必要なのは、女子ではなく男子だった。
自分の手足となって働く男子を多く確保したい。
もちろん女子も必要だが、強制できないのは分かっていた。
大我ですら失敗したのだから、暴力による支配には限度がある。
そして翌朝。
多くの女子がスタート村を離れた。
その大半が、体育会系の男子連中と共に学校村へ移った。
学校村のリーダーは、男子の二階堂。
サッカー部のキャプテンで、深瀬以上にモテる男だ。
深瀬や大我と違い、男子からの人気もそれなりに高い。
二階堂も昨日の戦いに参加していた。
誰よりも消極的な動きをしていたのが印象的だ。
彼は癒やし隊に頼るまでもなく女に困らない。
それ故の余裕が感じられた。
「――そんなわけで、友加里と二階堂のチームで綺麗に分かれた感じ」
友加里チームは男子11人・女子4人からなる計15人。
二階堂チームは男子7人・女子7人からなる計14人。
ちなみに、俺たちは男子2人・女子4人からなる計6人だ。
「性を武器に男を支配する友加里チームと、それに反発した女子たちを吸収した体育会系主体の二階堂チームか」
どちらも大我の時に比べると穏やかそうだ。
「二人はどうしてポテチ村に来たの?」
尋ねたのは瀬奈だ。
それは俺も気になっていた。
「だって、一緒だから」
裕美が答えた。
「一緒って?」
「友加里も二階堂も、女に求めることが一緒なの」
「二階堂もご奉仕をさせようって考えなんだ?」
「友加里と違って強制ではないけど、雰囲気的にね。それに、二階堂チームの女子も同じようなものだから」
「イケメンにご奉仕するのは構わないが、僕のようなブサメンにはご奉仕したくない……ということか」
吉井が眼鏡をクイッとする。
裕美は苦笑いを浮かべつつ、「まぁ、そう」と頷く。
海を一瞥したあと、彼女はこう続けた。
「それに、私と若葉は風斗のことが気になっていたから」
「それって……つまり?」
瀬奈の目が細くなる。
「鷹野のことが好きってことか!? そうなのか!?」
なぜか興奮する吉井。
「ちがああああああああああああう!」
若葉が大きな声で否定する。
「誤解させてごめんね」
と言ってから、裕美は詳細を話した。
「大我に立ち向かったり、いつの間にか石包丁を作っていたり、風斗は不思議に満ちている。大我たちに勝った昨日の戦いもそう。勝つなんて信じられなかった。だから、一緒に過ごしたら面白いんじゃないかって思ったの。そういう意味で気になった」
「なるほど。俺はそんな風に見られていたわけか」
何故だか「ホッ」と安堵する瀬奈と里依。
「私たちに話せるのはそれくらいかな」
裕美が話を終わらせる。
「よく分かったよ、ありがとう」
いよいよ本日の活動だ。
「人数が増えたけど、やることは変わらない。二人一組の三班に分かれて周辺を探索する。友加里や二階堂が脅威になるかは不明だが、なんにしてもしばらくは平和だろうから、今の間に動きまくるぞ!」
皆が「おー!」と拳を突き上げた。
「で、班分けだが……」
「私は裕美ちんと一緒がいいー!」
若葉が裕美とのペアを希望する。
「二人はいつも一緒だしな。それがいいだろう」
俺は若葉にスリングショットと小石の入った革袋を渡した。
「他チームの男子や野生動物に襲われて危険な時は、それを使って撃退するといい。小石じゃなくても、同じような大きさ物なら弾として使えるから」
「おおー! これで大我をやっつけたんだ!?」
「おうよ」
「鷹野っちやるぅ!」
若葉はスリングショットを構え、明後日の方向に小石を放つ。
それから再び「おおー」と感嘆した。
裕美も同じような反応をしている。
「さて、次のペアは……」
瀬奈と里依に目を向ける。
その時、吉井がニヤニヤしながら言った。
「果たして鷹野はどちらを選ぶのか!? 瀬奈か? それとも里依か?」
この発言によって、瀬奈と里依の頬がポッと赤くなる。
「なになにそういう感じなわけぇ!?」
若葉もニヤニヤし始める。
「へぇ、そうなんだ。隅におけないなぁ、風斗って」
裕美もなんだか楽しそう。
「いや、意味が分からん」
俺だけが理解できていなかった。
「で、どっちを選ぶのだ?」
吉井が尋ねてくる。
瀬奈と里依はジーッと俺の目を見つめる。
どちらの顔にも「私を選んで」と書いていた。
(選びづらい……)
片方を選んだら、もう片方に恨まれる気がした。
「よし、吉井、俺と――」
「NO! NO! それはお断り! 鷹野は女子と組むんだ!」
「はぁ!?」
「頼もしい男子が二人でペアってのは駄目だよねー!」
若葉が吉井を援護する。
「男女、男女、女女のペアにしないと」と裕美が続く。
「ぐぐぐ……」
この島に来てこれほど悩んだことはない。
「よし、それだったら三人一組にして――」
「駄目駄目! それだと非効率的になるだろ?」
吉井が音速で俺の退路を潰してくる。
「鷹野っち!」「風斗」
「「どっちを選ぶの!?」」
若葉と裕美に詰め寄られる。
「じゃ、じゃあ……」
俺はたじたじになりながら答えた。
絢乃です。
なろうで連載している作品
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