戦の爪痕(三)
御上へのご機嫌取りの言葉を並べ立てた後、発端の者どもは膝を突き合わせ、
『荒事とは、まことに恐ろしゅうござりまするなぁ』
『怖や、怖や』
『京の都にて刀を抜くなど』
『我らのような出自には、思いつきもしないことにござりまする』
『まことに野蛮なことにござりまするなぁ』
『『『あぁ、怖や、怖や』』』
と嘲笑っていた──
私は報告を耳にしながら。小助自身も報告を口にしながら。それぞれに、握り締めた手が震えていた。
「……許せぬな……」
「……はい……」
小助は頷きつつ、居たたまれぬような顔をした。戦当日、報告の中から今の話を外したことを、後ろめたく思っているのやもしれぬ。
「そなたが、そのような顔をすることはない。おそらく父上や親衡殿から止められたのだろう? 童である私に、一度に多大なる刺激を与えてはならぬ、と」
私が家臣であったとしても、口をつぐんでいただろう。祖父を喪った悲しみに暮れる童に、さらなる衝撃を与えようとは思わぬ。
「……そのとおりです。……若様は、ずいぶんと大人びた考え方をなさいますね。そのお年頃ならば、もっと癇癪を起こしてもおかしくはないのに」
小助は苦笑した。
「それは、御帳台から飛び出した時のことを申しているのか?」
あの時は、お祖父様のことで頭がいっぱいだったゆえな。
「揶揄しているわけではありませんよ。若様はいつでも、おひとりで立とうとなさるから心配なんです」
「自立心があるのは良いことだろう」
「たしかにそうですね。でも、若様はまだ童なんです。いついかなる時も〝次期長の嫡男〟であろうとしなくていいんですよ」
「小助……」
「出過ぎたことを申し上げているのは、わかっています。ですが……おひとりで、すべてを背負わないでください」
小助の目は真剣だった。
お読みいただきありがとうございます。
またブックマークや評価などにも感謝いたします。
次回更新は、8月1日23:00頃を予定しております。
誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。




