※ 七月十一日(四)
お祖父様の太刀筋は、戦場においても見事だっただろう。後白河方に属されていたら、さぞ称賛されたに違いない。……だが、いくらお祖父様が優れた武士でいらしたとて、おひとりで戦を行うわけではない。
「崇徳方の他の指揮官は、どのような方々でいらした?」
「おひと方は源氏の方でした。大殿を慕い、戦場でも大殿を守ろうと必死でいらっしゃいました。あとのおふた方は平氏の方々でした」
いずれの方々も急遽集められた私兵団の指揮をしつつ、懸命に戦われた。
「頼長卿は、いかに?」
私の問いに、小助は静かに嘲笑った。
「何とも無様なものでしたよ。大将でありながら最後尾から出て来ようともせず、戦況が危うくなればなるほど『何をしている! 私を守れ! そのための武士だろう!』などと声高に叫び散らしていました」
「な──っ」
私は絶句した。大将ともあろう方が、あまりに無責任ではないか。
「その大声のおかげで、すぐに居場所が知れて捕縛と相成った訳ですが。いくら『日本一の学者』などと称えられようとも、肝心な時に人を盾にするようでは、その資格があるとは思えませんね。まぁ、ある意味貴族らしいとも言えますが」
珍しく矢継ぎ早に話す小助。
「……たしかにな」
私は、いささか気圧されつつ相づちを打った。
身分の違いによる偏見は、この世界の随所で見られる。よほどの人徳者でない限り、貴族は頼長卿のような考え方が多い。
「此度の件により、殿と義康様は内昇殿(清涼殿の殿上の間へ昇ること)を認められましたが、貴族側の偏見がなくならない限り、肩を並べることは難しいでしょうね」
「そうだな。我ら武士は〝猛々しい(図々しい)者〟であり、屋根の外で警護する者──らしいゆえな」
「実に馬鹿馬鹿しいと思いますよ。此度の戦は、その武士の力をいいように利用したのですからね。まことに図々しいのはどちらか、冷静に考えてみればわかることでしょうが」
小助の〝気〟が怒りに揺らぐ。
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