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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
二章 保元元年(一一五六)六〜七月

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懸念が形を成す(二)




 七月九日未明。

 小助が慌てた様子で駆け込んで参るのが、遠くに聞こえた。


「若様……! お休みのところ申し訳ございません……!」


 御帳台の前で、小声で叫んでいる。


「……何ぞ……?」


 半覚醒のせいか、素早い返答にならなかった。


「大殿が……!」


 その(げん)に私の眠気は吹き飛び、御帳台を飛び出した。


「お祖父様が、いかがなさったのだ!?」

「大殿が、崇徳方へ……!」

「何と! 何故そのようなことになるのだ!?」

「それが……話せば長く……」

「よい! 順を追って話せ!」


 私は寝衣のまま仁王立ちをしていたことに気づき、その場に腰をおろした。(はや)る鼓動を鎮めるべく、深く息を吐く。


「すまぬ小助。そなたに怒りを覚えた訳ではないのだ。どうやら気が動転しているらしい」

「無理もないことでございます。どうぞお気になさいませんよう」


 伏せた小助の目も、若干泳いでいた。だが焦燥感に囚われながらも、努めて冷静になろうとしているのが見受けられた。

 住まう邸はそれぞれでも、家族を始め家臣から下働きまで皆がお祖父様を慕っている。源氏の長としては元より、お人柄が皆を惹きつけるのだ。

 小助も例外ではないのだろう。膝に置いた手が、わずかに震えていた。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、6月28日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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