※ 熱田のお祖父様(三)
十二月二日。
真っ白な雪が、静かに降る日だった。
私たちが見守る中。熱田のお祖父様は、六十六年の生涯に幕を閉じられた。
最期まで、高潔な魂のまま。
静かに、眠るように。
神使の方は、ずっと枕元にいらした。力を振り絞り、お祖父様に安らかな最期を迎えさせてくださったのだろう。
神力の最後の一滴は言霊となり、静かに注がれた。何と仰ったのかはわからぬが、それを合図に、お祖父様の魂魄が解放された。枯れ木のようになってしまわれた、その体から。
魂魄は、若々しい青年の姿をしていた。お祖父様──藤原季範公の霊力が最も高められていた頃の姿だろう。
季範公の霊力は〝神懸った〟という言葉すら過小表現だった。人であることが不思議なほど、神々しかった。
霊力を扱う者として未熟な私ですら、眩いばかりに輝く季範公の霊力から目が離せぬ。神使の方もきっと、そうでいらしたに違いない。
昔、季範公から拝聴したことがある。こちらの神使の方が、夢にお見えになったそうだ。熱田の大神官について御神託にいらしたとのこと。以前から天界よりご覧になっていたそうだが、実際にお会いして、季範公の霊力と廉潔さに心を奪われたらしい。
『あなたこそ、大神官にふさわしい人よ』
そう微笑まれた神使の方。その御神託どおり、季範公は二十数年もの間大神官を務められ、次の方に位を譲る際は惜しむ声も多かったとか。
今、神使の方は、安堵の中に幸せを味わうような表情をなさっている。いたわるように寄り添われるご様子は、たしかに季範公を格別に想われているように見受けられた。
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