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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
一章 久寿三年(一一五五)四月~十二月

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※ 熱田のお祖父様(三)




 十二月二日。

 真っ白な雪が、静かに降る日だった。

 私たちが見守る中。熱田のお祖父様は、六十六年の生涯に幕を閉じられた。

 最期まで、高潔な魂のまま。

 静かに、眠るように。

 神使の方は、ずっと枕元にいらした。力を振り絞り、お祖父様に安らかな最期を迎えさせてくださったのだろう。

 神力の最後の一滴は言霊となり、静かに注がれた。何と仰ったのかはわからぬが、それを合図に、お祖父様の魂魄(こんぱく)が解放された。枯れ木のようになってしまわれた、その体から。 

 魂魄は、若々しい青年の姿をしていた。お祖父様──藤原季範(すえのり)公の霊力が最も高められていた頃の姿だろう。

 季範公の霊力は〝神懸った〟という言葉すら過小表現だった。人であることが不思議なほど、神々しかった。

 霊力を扱う者として未熟な私ですら、眩いばかりに輝く季範公の霊力から目が離せぬ。神使の方もきっと、そうでいらしたに違いない。


 昔、季範公から拝聴したことがある。こちらの神使の方が、夢にお見えになったそうだ。熱田の大神官について御神託にいらしたとのこと。以前から天界よりご覧になっていたそうだが、実際にお会いして、季範公の霊力と廉潔さに心を奪われたらしい。


『あなたこそ、大神官にふさわしい人よ』


 そう微笑まれた神使の方。その御神託どおり、季範公は二十数年もの間大神官を務められ、次の方に位を譲る際は惜しむ声も多かったとか。


 今、神使の方は、安堵の中に幸せを味わうような表情をなさっている。いたわるように寄り添われるご様子は、たしかに季範公を格別に想われているように見受けられた。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、6月13日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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