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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
一章 久寿三年(一一五五)四月~十二月

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※ 熱田のお祖父様(一)




 十一月下旬。

 熱田のお祖父様の容態が急変した。

 毎日お見舞いに伺う私たちの目の前で、喘鳴とともに日に日に痩せ衰えていかれるお祖父様。

 幼い頃から私を圧倒し、導いてくださっていた神懸った霊力は、今は細々と残されているのみ。それは、まもなく死を迎える命であることを、私たちに実感させているようだった。

 不安げに震える母上の肩を、父上は力強く抱きしめていらっしゃる。 

 ……かような姿を、ただ見ていろと? 私の霊力を注いでさし上げたら──


『……やめよ……』


 お祖父様が念話で伝えてこられた。目を閉じ喘鳴を繰り返しながらも、私が一線を越えぬようにと心を配ってくださる。


『たしかに、私の霊力はつたないものにございます。されど、お祖父様のお力になりたいのです』

『……わからぬか……』


 私を諭すように、深く言葉を紡がれるお祖父様。


『……すでにあれが注いでおる。だが、この有様だ……』


 今もなお、神使の方が懸命に神力を注いでいらっしゃる。だが神の眷属の力を持ってしても、これ以上の快復は見込めぬ──仰りたいことを理解してしまった私は、唇を噛みしめた。

 何のための霊力なのだ。

 私は、何のために精進して参ったのだ。

 己の手を見つめ、きつく握りしめたとて、この場では何の役にも立たぬ。

 お祖父様を助けたい、ただそれだけのことが叶わぬとは……


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、6月9日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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