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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
一章 久寿三年(一一五五)四月~十二月

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新たな心持ちで(四)




 近江の目が潤んでいる。突然のことに戸惑いを覚えつつも、嬉しさが上回り感極まったようだ。


「私は童の身だが、主(あるじ)として精進して参るゆえ、これからもよろしく頼む」


 私は座礼にて頭を下げた。

 

「……そのような……もったいない……」


 近江の目から、涙がこぼれた。

 私は膝を寄せ、頬をつたう清らかな雫を指で拭った。この者も護るのだと己に誓いながら。


「そなたの涙を拭う役目を買って出たと伝えたら、仲綱(なかつな)殿(近江の婚約者)に叱られそうだな」

「まぁ……朝長様のようなことを仰いますのね」

「異母兄上ならば、これくらいで済まぬのではないか?」

「ふふ。そうかもしれませんわね」


 朝長異母兄上を引き合いに出してしまったが、近江の涙を止められたのなら、よしとしよう。


 その後、近江が落ち着いたところで私室の御簾(みす)をくぐった。

 近江を伴い、家族で朝餉(あさげ)をいただく広間へと向かう。

 庇(ひさし)の間(ま)(廊下)を通ると、朝日に映える庭が目に入った。庭師たちが精魂込めた庭は、塵ひとつなく清々しい。


 後光のような朝の光が木々や草花を照らし。花たちも応えるように、みずみずしく色あざやかに咲き誇っている。

 まるで我が家の女性たちを目にしているかのようだ。

 どの花も可憐で、健気に思う。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、5月2日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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