2/102
些細な、されど大いなる歪み(一)
幼い頃。私の内には、疑念と葛藤が渦巻いていた。
置かれた環境に不満があった訳ではない。
我が家には、母上と称される方がお三方いらっしゃる。正室である母上と、側室である義母上方だ。住まいはそれぞれ別棟だが、家族仲は良好。私たち兄弟も、同母異母問わず仲が良い。
また武家であることから、父上や異母兄上方の官位は高くなかったが、別段どうということもなかった。
「いかなる身の上にあろうと、己の責務を全うするのが、人としての誇りというもの」
源氏の長でいらっしゃる源のお祖父様──為義公の教えが功を奏したのだろう。
清和天皇陛下の末裔であるという誇り。
己の立場をわきまえ、相手の立場を慮る。
皆がこれらを心に留めながら生活しているからこそ、邸内には、いつも笑顔があふれていた。
お読みいただきありがとうございます。
またブックマークや評価などにも感謝いたします。
次回更新は、4月8日23:00頃を予定しております。
誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。