↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/225

藍色の夢(八)




「もしかしたら、あなたの考え方は、前世のあなたに似ているのかもしれないわね」

「……彼女に、でございますか……?」

「えぇ。彼女の場合は、独りで生きてきたがゆえの、自立心だったのでしょうけど」

「……独り……」


 ……あぁ。たしかに彼女は、独りだった。生を享けてから事故にて早世するまで、ずっと。だからこそ、雪に倒れた彼女が虚空に見たのは〝唯一の拠り所〟だった。

 藤原行成(ゆきなり)卿の敬(けい)慕(ぼ)文(ぶみ)。

 あの巻子本だ。

 彼女が幸せそうに微笑んでいたのは、行成卿の書を見つめていた時のみだった。

 おそらく彼女は、わずかでも誰かの負担になることを厭うたのだろう。ゆえに人と距離をとり、孤独を選んだ。温かな家庭への憧れを、心の奥底へと封じ込めながら……

 たしかに、そのようなところは私と似ているのやもしれぬ。


 少しずつ、私の内を荒れ狂う波が収まっていく。

 早鐘を打つ心の臓を落ち着かせるため、深く息をついた。


「……私が、この世界に違和感を覚えたのは……」


 神使の方を見つめる。


「彼女の記憶に因(よ)るものだったのでございますね」

「そう。あの巻子本への想いが強すぎて、前世を置いてくることができなかったのね。彼女の魂を抱えたまま、あなたはこの世界に生まれたの。……ここは、彼女が知る〝平安時代〟とは似ているけど、違う世界よ」

「違う……世界」


 建築様式の融合された邸も。

 世紀を越えた書物や食物、植物なども。

 〝平安時代〟ではないがゆえに存在すると……


「されど、時間軸の問題がございますが……」


 作物はともかく、菜根譚の作者の方は明(みん)の時代を生きたはずだ。十六世紀に著されたものが十二世紀に在るというのは……


「そこは考えないほうが良いかもしれないわね。『ここはそういう世界』と受け入れたほうが楽よ。でないと堂々巡りになるから」

「……承知いたしました」


 得心しかねるところはあるが、今は胸に収めるほかなかろう。他にも尋ねたいことがあるのだ。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、4月21日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。