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模型兵装  作者: 存在 竹刀
高等部入学
37/47

順位戦決勝前 昼休み

 昼休み。サヤの様子を見に行くと作業は終了していた。


「盾か」

「はい。何の種も仕掛けもありません。ただただ軽く頑丈というのを追求しただけの盾です。剣型外部兵装は起動、強化していない状態で切り結ぶと歪んで、以降は斬れなくなる可能性があります。今までの対戦相手の反応速度でしたらその心配は要らなかったのですが」

「確かに。重量差で飛ばされるから剣…で受けるつもりは全く無い上、避けてから反撃できていたからな。しかし今回はそうはいかないから盾か、なるほど。ところでいちいち剣型外部兵装と言うの、面倒じゃないか?」

「そうですか?では命名をお願いします。想像できるでしょうが、私は命名は不得手なのです」


 確かに、そういった感性があるならいつまでも剣型外部兵装と呼びはしないか。


「ふむ…水刃剣とかどうか」

「ではそれで」


 殆ど間髪入れずに了承されたが、ふざけた名前だったりしたらどうしたのだろうか。

 いやそんな事するつもりはないが。

 どうでもいいのだろうな、多分。

 二人で話しながら学園食堂で飯を食う。

 

「後は…そうですね、これを」


 そう言って俺に手渡したのは古く傷だらけの玉に、紐を通した装飾品。


「これは?」

「前史では戦場に向かう家族、またそれに類する者にこういったお守りを渡す風習があったそうです」

「つまり気休めか」

「現代においてはそうですね。ところが当時の技術だとこの小さな石の中に魔術回路を搭載できて、模型兵装の中でなら効果を発揮していたそうです。生命力増強とか、治癒力促進とか」

「これがそうだと?」

「まさか。だとしたら資産価値は計り知れません。これは学園入学前に古市で売られていたのを気に入って購入しただけなのでそんな大層な物ではありません、多分。万が一くらいにはその可能性もあるかもしれませんが、つまりは気休めです。要りませんか?」

「いや、ありがたく受け取るよ。何となく、突き詰めて考える研究者気質の人間は気休めとかは必要ないと考えると思っていたから予想が外れて驚いただけだ」


 俺の言葉にサヤは微笑んだと思う。


「そうですね、間違ってはいませんよ。私も意味がなかったらしませんから。気休めに限らず、気の持ちよう全般は少し調子に影響を及ぼす程度が基本で、良くするのは難しく、悪くするのは容易く、個人差も激しい、と扱いにくい割に効果がいまいちなので、効率的に考えるなら触れる必要のない部分ですし」

「なら、何故?」


 軽く呼吸を整えるサヤ。


「確かに、勝つのは難しいと思われます。けれど勝ち目が零という訳ではありません。速度そのものは僅かに先輩の方が速く、今まで戦った機体のように一撃で切断は出来ないでしょうが、外部装甲を破壊する位は出来るでしょう。同じ位置を攻撃出来れば部位破壊も可能です。無駄撃ち空撃ちは厳禁ですが。それに、高級は高い性能を有しますが、その分消耗も激しいですから、基礎を疎かにしているアーセイル先輩の魔力では長時間の駆動は厳しい筈です。つまり…」


 何が言いたいのかわかったので口を挟んでみる。


「持久戦に持ち込め、という事だな」

「はい。うちの子も消費は相当なので簡単ではないとは思いますが、構造強化や再生を最低限まで抑えれば、先輩の魔力量なら不可能ではないと判断しました。それなら、少しでも勝率を上げるために出来る事はしようかなと。それこそ気休めでも」

「なるほど…ありがとう。君のお陰で決勝戦どころか、高級相手に闘い得るところまで来れた」


 俺の感謝の言葉にしかし、サヤは小首を傾げる。


「それは先輩の実力です。私は製造者としてそれをお手伝いしただけですし、その恩恵に預かっているので礼は不要ですよ?」

「それでも、今まで君以外の誰も出来なかった事だ。感謝の気持ちくらいは受け取ってくれ」

「…わかりました。しかしアーセイル先輩は、いきなり高級に乗る危険性をご存知ないのでしょうか」

「そう思う。装手を志すなら最初に習う筈なんだが。しかし俺達が言ったところで聞く耳は持たんだろう。結局は勝たなければな」


 その時、昼休み終了を告げる鐘が鳴り響いた。そろそろ決勝戦が行われる闘技場に向かわねばならない。


「さて、いくか」

「はい、いってらっしゃいませ。ご武運をお祈りしております」

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