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模型兵装  作者: 存在 竹刀
高等部入学
31/47

順位戦決勝戦当日、三位決定戦2

 正直なところ、俺が下した方…高等部三年のファーシー・ヤッコウだったかは順位戦準決勝まで残っていただけに弱くはないが、爆炎の魔女を相手に勝ち得るとは思えない。

 個人的には彼には平民代表として頑張ってもらいたいが、相手はカーム・アーセイルの実家より高位の、侯爵家で英才教育を施されて育った正真正銘の闘うお嬢様である…無理だろうな。

 彼の機体は金属製、準人型。

 俺と闘った時は少しでも軽く反応を良くするために薄くしていた装甲を、厚くしてきている。それも、学園標準よりは下半身の比重が高いか。

 その分貧弱になった上半身を大型の盾で覆う、と。

 遠距離戦では勝ち目が無いと踏んで、強引に接近戦に持ち込むつもりか。

 防御力と機動力の両立を考慮した、急場で行える対応としては上出来だと思う。


 対する爆炎の魔女ことセイラ・バルエンの機体は金属製、完全人型。

 女性的な印象を与える優美な姿の機体。

 カーム・アーセイルといい、地位と金があると見栄えにもこだわりが生まれるのだろうか?

 いや嫌いではない。むしろ好きな部類だが。だって目に楽しい。


 地位も金も持っていない俺が乗る機体…いや、決勝までに得た得点で正式に譲り受けたからもう俺の機体と言っていいのだった。

 それが完全人型なのは別に俺が何か関与した訳ではない。

 多分、それまでの会話で準人型があまり好きではないと汲み取ったサヤが機体を造る時に気を利かせてくれたのだと思っているが、それはさておき。

 

 試合開始の鐘が鳴り、ファーシー・ヤッコウの機体が大盾を正面に構え、前傾姿勢で駆け出す。

 セイラ・バルエンは自らは動かずひたすら爆破魔術を連発する闘い方しか今までした事がない。

 闘い方が分かっているのだから対応策を取りやすい筈なのだが、順位戦出場者でカイル・ライロウ以外に互角に闘えた者は居ない。

 いや、一応今回カーム・アーセイルが勝ってはいるのだが。


 模型兵装が装備する外部兵装は、模型兵装の腕の長さ位までが短包、身長位までを中包、それ以上を長包という分類で分けている。

 余談だが順位戦では長包はほぼ見かけない。理由は今更言う必要もないだろうが、取り回しが悪く、発動が遅く、術式が複雑で起動が難しい、と順位戦…というか学生向けではないからだ。


 セイラ・バルエンは両手に中包を構え、その二丁で絶え間なく爆破式魔術弾を飛ばしてくる。

 重量が不足していたら爆風で近付く事もできない内に損傷がかさみ、しかし充分な重量があると爆発の威力を余さず連続で受け止めやはり損壊する。

 それに耐えて接近できても相手は金属製、動き回る事を前提としていないので装甲も厚い。そしてその装甲任せで至近距離でも爆破魔術を連射されるので、大半の機体は耐えられない。


 防御面は機体性能頼り、という点で見ると基本的な闘い方はカーム・アーセイルと似ていると言えなくもない。

 攻撃方法が剣か魔術かの違いだけで。

 しかしその段違いの攻撃範囲の差が彼女を学園最強の一角足らしめたのは間違いない。

 正確にはカーム・アーセイルがセイラ・バルエンの闘い方を真似たのだが。

 魔術は真似出来なかったから剣を振り回すのだろう…が、今はそれは関係ないか。

 

 とにかく、爆炎の魔女の異名を持つセイラ・バルエンは、攻撃は最大の防御を体現した装手で、自らの魔力の質を最大限活用した良い例でもある。

 実際の戦場ならともかく、広さが限られた闘技場の中である程度離れた位置から試合開始となる順位戦に特化した闘い方とも言える。


 それと互角に闘うカイル・ライロウもまた総合力の化物という異名に相応しいのだろう。

 まず、セイラ・バルエンが去年の今頃に頭角を表し、その圧倒的な攻撃力で優勝。

 当時はまだ中包一本だったか。

 ともあれその勢いで二回連続優勝を果たすと誰もが思った。

 しかしその大半の予想は覆された。

 一月後、セイラ・バルエンがカイル・ライロウに破れたのである。


 その方法が尋常ではなかった。

 それもそうだ。誰にでも出来る対策で対応できたなら他の者も当然真似をする。

 以降1年経とうかという現在でさえ、同じ事が出来る者は極少数だろう。

 その方法は言葉にすれば単純だった。

 カイル・ライロウはセイラ・バルエンとの対戦時に、魔力消費が少ない、単発式のさして大きくも硬くもないただ速度と連射だけは早い岩石弾を射出する短包を準備した。

 そしてそれで、セイラ・バルエンが射出した爆破弾をほぼ全て爆破圏内に入る前に迎撃してみせたのである。


 その難易度は相手が球を投げたのを見てから自分も球を投げて球同士を当てろ、と言うのと同程度には難しい。

 流石に全弾では無かったが、少なくともセイラ・バルエンが魔力切れで動けなくなるまで破壊される事なく粘りきり、カイル・ライロウは勝利を手にしたのだ。


 セイラ・バルエンも自信とそこからくる驕り、そしておそらく焦りがあったのだろう。冷静に考えられたなら、最初の数発で戦法を変えていたと思われる。

 しかし次に合間見えた時には流石に頭も冷えていたのか、力押し一辺倒に変わりはないものの、随所に工夫が見られる様になっていた。


 例えば二度目の対決の時の決定打は、一発目に隠れて発射された同じ速度、同じ軌道、ただ小さく目立たない弾。

 それ自体が与えた損壊は無かっただろうが、態勢を崩すには充分だった。

 そして態勢が崩れてしまえばそれまでの様な精密射撃は到底望めない。

 そこからの連続爆撃に対応できず、この時はカイル・ライロウが敗北した。


 更に次の対決時はカイル・ライロウが貫通の術式を追加して対応し、近距離に持ち込んで外部兵装を破壊して勝ち。

 また次の対戦でセイラ・バルエンが両手に中包を装備して微妙な軌道変更で貫通に対抗しつつ火力密度を上げて勝利…と。

 カイル・ライロウは様々な手段で変幻自在に、セイラ・バルエンは基本戦術は変えず火力と手数で。

 全く違う闘い方の二人はしかし、まるで釣り合いの取れた天秤を揺らしたかの如くであった。

 その均衡を崩したのが俺とカーム・アーセイルなのだから世の中分からないものである。

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