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模型兵装  作者: 存在 竹刀
高等部入学
22/47

順位戦本戦1回戦目放課後1

  修理の為、教師が駆る2機の模型兵装が抱える担架に乗せられて、見るからに軽々とサヤの工房まで運ばれていく機体と共に二人で戻る。

 こそこそと密談しながら。


「その考え自体は間違ってはいないでしょう。けれどその場合、アーセイル先輩に協力した教師が気になります。学園側としての行動であったなら親鍵の持ち出しは明らかにやり過ぎだと思うのです。壊された子も、こんな急造で出さなければならなかったこの子も可哀想です。学園側としての行動なら学園を、教師独自の行動なら教師を、とても許せそうにありません」


 サヤは怒っていた。眼鏡で表情は分からないし、声の調子もいつも通りに聞こえるけれども、確実に怒っていた。

 それを見て、この天才と呼ばれるに相応しい常に頼もしい後輩も、感情の乱れで素を出す未熟さを持っているのだと思うと少し可笑しくて笑ってしまった。

 本当は年齢を考えればその方が普通なのだが。


「ふっ…」

「何がおかしいのですか」

「いや、君は普段、模型兵装を『機体』と呼んでいるのに、今は『子』なのだな、と思ってな」


 俺のその言葉に顔がやや上を向く。記憶を思い返す時の癖なのだろう。


「…確かにそうですね。もう中等部に上がったのだから子供っぽい言い方は止めようとしていたのですが、失敗しました」


 そして気持ちを切り替える為に一つ深呼吸。揺れていた感情が収まったのがわかった。これ以上この話は続けられないだろうと判断して違う話題を振る。


「俺は結局試合に呑まれて観客の反応とか気にする暇も無かったんだが、どうだったんだ?」

「そうですね。思っていたよりも良い反応でした」

「ほう、天才から見て、この国はまだ見所があったか」

「その天才というの、止めてください…では、原材料に木を使う物と言うと、何を思い浮かべますか」

「薪、それから家具、後は紙くらいか」

「はい。この国ではそれ位です。他の島国では本来あり得ない状況なのです。一つ足りません。それは…」

「待ってくれ。それは貴族にしか分からない問題なのか?」

「いえ。貴族でなくても分かりますよ。ただ、大半の方には関係も影響も無いですから難しいかも。けれど学園生の方には気付いて欲しい所です」


 含みのある言い方が少し気になって、原因を考える。すぐに思い当たった。


「ならちゃんと俺にも考えさせてくれ…と、俺が言い出す様に話を振ったな?そんなに天才と呼ばれるのが嫌なのか」

「見抜かれてしまいましたか。私は少しばかり他の方より知識があるだけだと自己分析しております。なのでそのような言葉は迷惑なのです」

「分かった。すまない、俺が悪かった。少なくともからかう目的では言わない」

「それ以外の目的でも言って欲しく無いのですが」

「君だけが、俺を救ってくれた恩人だから。俺にとって君はそういう立場なんだよ。だから心の中ではそう思い続けるし、とっさの時にそれに類する言葉が出るの位は許して欲しいな」


俺の本心を語ったら、何故か俺の方を見たまま動きを止めるサヤ。


「どうした?」

「…いえ。頑固だな、と呆れていました」

「だから今、まだここに居る」

「そうでしたね。ところでもうすぐ工房に到着しますが、話は続けますか?終わらせても構いませんが」

「いや、続けてくれ。今までの会話で充分糸口もあったのだろう?」

「そうですね」

「島国、海に囲まれた国。この国だけ、ニフオーンにだけある。木、石材や金属材と比べれば柔らかいが、家具に使える程度には頑丈で、模型兵装にもなる」

「それは今回関係ありません。本当はま…」


模型兵装の所は冗談めかして言ったのだが実に素早い返しだった。小さくなっていって後半は聞き取れなかったが。


「冗談はさておき、つまりそこそこ固くとにかく軽い…」


これらを繋げて考える。


「成程、船か」

「はい。この国は、島国であるにもかかわらず、造船、航海技術が高くありません。理由はこの国が興る切っ掛けとなった伝説級の模型兵装、アーム・アーティラスの固有能力『転移門』にある訳ですが」


 古代機の英雄級、伝説級は機体毎に何等かの特殊な魔術…固有能力と呼ばれる機能を持つ。


 伝説級は、機体を構成する素材からして未知にして解析不能であり、傷付ける事すら困難極まる。更に自己修復能力もある為、分解するどころか、装甲を外す事さえ出来ない。

 そして固有魔術の効果はどれも絶大で替えが効かない。伝説級2体の激突の際に起こる大爆発の原因だと目されている、以上の理由により固有能力の解析は行われていない。


 このニフオーン王国の守護を担うアーム・アーティラスという銘を持つ伝説級の模型兵装の固有能力は一際有名であろう。


 固有能力の概要は、伝説級と証明する時の儀式じみた…というかお祭り騒ぎじみたやり取りの中で伝えられる。


 分かりやすく簡単に説明すると、複数国が各々英雄級の機体を持ち出して、不正が起きない様に互いに試合した後、それら英雄級が、試しに出された自称伝説級に襲い掛かる。


 破壊されたら偽物。かすり傷程度までの傷であれば、その後に周囲に危険の無い程度で固有能力の実演が求められ、それらを乗り越えると伝説級と認められる。


 伝説級が有する固有能力はどれも強力で、悪用すれば大陸そのものにも影響を出しかねない。それ故に情報の開示は必須とされている。勿論、全てを明らかにする訳ではないが、その能力の傾向が分かる程度には開示が求められる。


 この試しの儀式、凡そ百五十年前に実行されて以来、何年かに一度はどこかの国で盛大なお祭り騒ぎと共に行われている。


 だが、最初に各国が証明した以外で伝説級と認められたのは約百年程前に一度きり。そう、我が母国ニフオーンの祖、初代国王とその模型兵装アーム・アーティラスだけである。

 前置きが長くなってしまったが、まだ続く。


 そういった事情で各国の伝説級模型兵装とその固有能力はそれなりに知られているのである。

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