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模型兵装  作者: 存在 竹刀
高等部入学
17/47

順位戦予選1

 回想を終えて、試合会場となる第5運動場に到着する。

 運動場と名が付いてはいるものの、実態はただの広場だ。こうした運動場は二桁に上る程はある。


 審判役を示す旗を抱え、駐機姿勢を取る模型兵装に、向かい合わせに同じ駐機姿勢で停まり、操縦席から出て傍にたたずむ教師に声を掛ける。


「高等部1年、戦闘科のケイルムです」


何とも言い難い微妙な表情で俺の機体を見上げている教師が、俺の声で我に返る。


「あ、あぁ。確認した。君の配置は一番だ」

「はい」


 運動場の大半を囲う円形の線と、開始時の立ち位置を示す番号が描かれている。

 番号は円の内側すぐの所に等間隔に6番まである。今回の予選は6人での乱戦という事だ。


 円形の線から出ると場外負けとなる。故に試合開始後に様子見で動かないでいると押し出されて簡単に負けてしまう事もある。だが一方で背後からの攻撃を気にしなくて良くなるという利点もある。


 それ以外だと、一部位以上を破壊された後で頸部に剣あるいは外部兵装を添えられると敗北と見なされる。予戦の時は審判次第で省略される事も多々あるが。


 さて、自分はどう動くべきだろうか。

 次々と現れ、配置に着いていく試合相手達を眺めながら考える。全員、石材製で準人型なのが確認出来た。


 自分の左側と、奥の左右が片手に剣ともう片手に外部兵装を装備した基本型3機。

 外部兵装とは基本的に射撃術式の発射に適した形の、筒状に造られた金属の事だ。

 正面一番遠くに外部兵装を両手に装備した遠距離型1機。右近くに剣と盾を装備した近接型が1機。


 本戦上位陣に名を連ねる、名の知れた機体は無い。

 俺の機体は完全人型である事もあり目立つだろう。今も注目を集めているのが分かる。試合開始と共に集中攻撃を受ける可能性が高い。


 特に右側近くに近接型がいるのだ。先ずこれが飛び込んで、他の機体はそれに合わせて術式攻撃、という流れになるだろう。


 乱戦では目立たない方が残り易く、不利な状況と言えるだろう。だが今まで見てきた模型兵装の動きを思い返し、現在の自分に当てはめると不思議な程脅威を感じない。


 こう来たならこう返して、と言葉にすると簡単だが、他人にそのまま言うと『側で観て考えるのと土壇場で自分が追い詰められているのとで同じ様に動けるはずがない、油断するな』と必ず返ってくるし、俺も周囲にそんな事を言う奴が居たらそう返すだろうと自分でも思う。

 

 それが分かっていて尚そう感じる、いや正確にはそれ以上に感じる。これはそれとは違う、と。俺はその感覚を信じる。


落ちこぼれの俺が特別な感覚に縋り着いているだけなのかもしれない。だとしたらぼろぼろになるだけだ。


 だがもしその感覚が本当に本物なら、サヤの言う通りの最優秀にだってなれるかも知れない。あの天才の後輩がむけて来る無条件の信用に相応しい自分に、成れるものなら成りたいと俺が一番思っているのだから。


 とにかく、この戦いでそれらも分かるはず。俺はただ気を鎮めて挑む事にした。

そして鐘の音が高らかに開始を告げる。


何も周囲の思考通りに動いてやる事もない。走り出そうと一歩踏み出した近接機の脇を通り過ぎ、その後ろへ回り込む。自分で言うのもなんだが、圧倒的な速さだ。


 やはり気のせいなどでは無かった。審判役の教師ですら俺の機体を見失っている。


 俺が元居た場所で爆発が一つ。両手に外装を持って居た奴だ。二種類打ち分けられるのだから他より僅か早めに射出してしまい、結果無駄撃ちしてしまったのだろう。


目の前の近接型が驚いたのか無理にこちらを向こうとしている。少し腕の振りを煽る様に動かせば上半身が流れ、下半身が踏み出す位置も変わってくる。その足も払う事で少しだけ着地位置を変えさせる。そうした小さな積み重ねの集大成として転ばせる。場外へと。


もっと力づくで行ければ話も早いのだろうが、そうもいかない。

サヤの弁を信じるなら、いやそもそも疑う必要が一切ないのだが、総重量が一般の石材製と比べて五分の一程度しかないとの事。


 石材製と金属製でも倍近い差があるが、元の重量が最低限度あるから大丈夫なのだそうだ。つまりこの機体はその最低限の重量すら無いと言う事。近接攻撃にはある程度は重量が必要なのは言うまでもないだろう。まぁそれもやり方次第ではあるが。


 二回目は流石に俺の機体を見失う事はなかった様だが、さて基本型のうち一機、俺にばかり注目していて大丈夫かな?俺と君の位置の直線上に遠距離型が居る、つまり君は完全に背中を晒してしまっているが…ほら狙われる事になる…っと俺も纏めて貫通術式で吹っ飛ばす腹か。


 正解だ。まぁ俺は避けるが。完全にこちらに意識を傾け切っていた機体は後頭部部分に直撃を受け、視界に異常をきたした様だ。隣にいた別の基本形が素早く敗北を確定させる。


 しかし3機から2機に減ったからといっても攻撃の圧がそこまで減る訳でもない。

 が、これだけの速度差があるとどの道当たりはしない。

まとわりつかせたまま場の状況を操作していけるだけの能力に、自分でも驚くばかりだ。


 とにかく、これで2機。思っていたより遠距離型の動きがいい。最後まで残そうかと思っていたが、あれは早めに潰した方が良いだろう。


 2機の基本形の内一機が、どちらかといえばもう一機に近接を任せて俺から距離を取りたい様子だ。そのもう一機も俺と一対一は嫌な様子で、離脱させない様に動いている。

 そこで場外の線を利用して二機を分断すれば一機がこれ幸いとばかりに俺から距離を取ろうとする。そっちには近付かれるのを嫌がる遠距離型が居るが。


 遠距離型も急に踏み込まれて焦ったのはわかる。咄嗟に爆破型の術式で突き放しにかかるのは間違いではない。この場での最適解ではなかっただけで。


 この場では貫通術式が正解だったのだが、それを言ってもしょうがない。爆発術式の後に起こる視界の悪さこそが俺の望みだったのだから。


 敵を減らしてくれた上に目隠しまでしてくれた遠距離型には感謝すら覚えるところではあるが、上手くいかせた自分を褒める事にしよう。

 

 その気になれば重さ関係無く近接攻撃で損害を与えられる事。但しその為には特定の危険がある事。全ての情報を繋げれば難しくも何ともないが、あえて曝け出す必要もない。


 だから互いに見えないという状況を作って、即攻撃破したのだ。

 そして残り一体、こちらを見失っている、という絶好の機会を見逃すはずもなく、勝負を決めさせてもらった。


 最初にサヤが言った通り、しっかりと大地を踏みしめて、相手より下の位置から切り上げる。それなら石材や金属製などの硬い素体でも、関節は耐えられない。下からの斬撃は基本的には股関節に当たる為、首に剣を添えるのも簡単になる。


 言葉にすればそれだけだが、目にも止まらぬ速さが持ち味でありながら、攻撃の瞬間は敵の足元で動きを止めなければならない、という明確な弱点。


 それが露見したら勝てないだろう。だから秘密にさせてもらう。もっとも、本戦からは注目度が桁違いに増えるうえに個人戦が主となるからすぐに気付かれるだろうが。

 本戦は6試合しかないから、1試合の重要性がおのずと高くなる。その1試合を、少しでも勝つ可能性を高くするために努力する。

重ねて、コメントありがとうございます。

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