38話 村人との再会
ヒカリの台詞は全てが『』で表現してあります。
玄人が思ったことや通信している場合は ―― が頭についています。
『――』は、ヒカリが玄人に通信している時の表現です。
以降、よろしくお願いします。
「そういえば・・・二人は襲われた時、何も持ってなかったけど荷物とかは持ってなかったの?」
魔石を見ながら、盛り上がっていたルージュとアマリージョに聞いてみた。
「え?、持ってたわよ。でも襲われた時、その場に置いて来ちゃったのよ」
「それってどの辺り?」
「えーと、あっちの方ですかね?」
アマリージョが指しながら答えた。
「そうね。ここから5分くらい歩けば着くと思うわ。でも荷物と言っても大した物じゃないから、別に取りに行かなくてもいいわよ」
「でも方向的に大きく変わるわけじゃないし、一応荷物を取ってからいこうか」
俺はそう言って荷物を抱えて、アマリージョが指さした方へ歩き出した。
『玄人さん。北東3キロ先・・人間です。全部で6名。このまま進みますと、丁度、私たちが向かっている方角で出会うことになります』
「それって・・・」
『方角といい、人数といい、おそらくはお二人を探しに来た村の人のではないでしょうか?』
「そうですね。私たちを心配して見に来たのかも知れません」
アマリージョが答える。
「村の人が? 私たちのことなんて誰も心配なんかしないわよ?」
ルージュは意見が違うようだ。
『もしかしたら、捨てた荷物を見つけて、何かあったと思い探しに来たのかも知れませんね』
「まったく・・・誰が来たって私より弱いくせに・・・」
ルージュは文句を言いながらも、なんだか嬉しそうだ。
「姉さん! それでも心配はさせたと思うから、もし村の人ならちゃんと謝らないとダメよ」
「分かってるわよ・・・もう」
「でも、これが村の人なら合流できて良かったと思うよ。すれ違いで探し続けて、今度は村の人が魔物に襲われたっことになれば、後味悪いしね」
「そうですね。でもこんな事を思えるのも、元々はクロードさんに助けて頂いたからからなので・・・」
「そうね。それは私も認めるわ」
「そんなの気にしないでいいよ、ホント。俺もこれで村に住めるかも知れないんだし。逆に感謝してもしきれないんだから」
『そうですね。私からもお礼をいいます』
「・・・よし。じゃこれで貸し借りなしってことでいいわね。だから私たちのことはルージュとアマリでいいわよ。私たちもクロードとヒカリって呼ぶから」
「姉さん、それはいくら何でも失礼よ」
アマリージョが慌ててルージュを制した。
「あ、いや・・・そうだね。それでいいよ。これからは対等の付き合いだよ。ルージュもアマリージョ・・・あ、いや、アマリも改めてよろしくね」
「ええ、クロードもヒカリもよろしく」
ルージュがちょっとどや顔なのが気になる。
『はい。ルージュ、アマリ。私もよろしくお願いします』
「ほら、アマリもちゃんと挨拶しなさいよ」
ルージュが急かす。
「はい・・・えーと、クロードさ、・・・クロード。・・・ヒカリ、よろしくお願いします」
アマリージョが、恐縮した様子で言ったので、俺とヒカリは「こちらこそ、よろしく」と二人揃ってやさしく返事をした。
「じゃ急いで荷物を取りに行って、村の人と合流しようか」
「はい」「ええ」
それからすぐに荷物を落としたという場所に到着した。
周囲を見回すと、あちこち争った形跡はあるが、見えるところに荷物はなかった。
「あれ、この辺りだと思うんだけど・・・」
ルージュが木の陰などを探す。
『玄人。来ました。合計6名。視認できるはずです』
「お、見えたよ。アマリ・・・あれは村の人で間違いない?」
視線の先には、先頭に剣を持った男性が2名。一番後ろに1名。
3名の男に挟まれる形で女性が3名がいた。
「えーと・・・・はい。あっ・・そうです。前にいるのが村のポッケルとカテールです。あとは・・はい。みんな知り合いです」
「おーい!!」
ルージュが手を振りながら、大声を張り上げた。
少し先にいた村人がその声に気づき、なにやら話をしたあと、全員揃って
走ってきた。
「「「「「「ルージュ!」」」」」」
アマリージョにも気がつき、声を上げる。
「「「「「「アマリ!!」」」」」」
「ルージュ・・・アマリも本当に無事でよかったよ」
恰幅の良いおばさんがルージュとアマリージョを抱き寄せて喜んでいる。
「ベルタおばさん・・・痛いわよ。力強すぎなのよ」
「ごめんなさい、ベルタさん。本当にご心配をおかけしました」
「いいのよ・・無事なら何でもいいさ。本当によかったよ・・・」
「で、そちらの方は?」
武装した3人の男のうち、一番後ろを歩いていた背の高い男が話しかけてきた。
年は50を過ぎたくらいだろうか。
筋肉モリモリの、ガテン系のオジサンだ。
目は優しそうだけど、顔はちょっと怖い。
「クロードよ。クロード・ハーザキー。私たちがオグルベアに襲われたところを助けてくれたの」
俺が答える前にルージュが答える。
「オグルベア!?じゃあ、やっぱり・・・」
怖い顔のオジサンは、驚いた表情を見せた。
その後少しの沈黙があった後、
「申し遅れました、私はベニートと申します。このたびはルージュとアマリージョを助けて頂き、感謝いたします。あとこっちの丸いのがポッケルと痩せてるのがカテール」
怖い顔の男は自分をベニートと名乗り、横にいる重そうな斧を持った太っちょの男・ポッケルと、細めの剣と安っぽい革の盾を持った細めの男・カテールを紹介した。
二人はベニートと違い、武器と防具に着せられている感じが丸出しだった。
――ねぇヒカリ・・・この二人、年齢も30そこそこっぽいし。武器を持つの慣れてない感じしない?
『――そうですね。魔素量も低いですね。この中ですと私たちを除いて、魔素量はベニートが一番多いです。続いてルージュ、アマリ・・・それから先程二人がベルタと呼んでいた方、それからポッケル、女性二人で・・・最後にカテールです』
――カテール弱くない? 大丈夫?
『――武器があるので何とかなるのではないでしょうか。たしかに魔素量だけだと、カテールというより、マケールですね』
「ぶほっ・・ゲホッゲホッ、ゲホッ・・・あ、ごめんなさい。ちょっと喉が・・すいません。えーとクロードです」
どさくさ紛れで挨拶もしてみた。
ちよっと変な目で見られている気がするけど、なんとか誤魔化せた。
続けて、ルージュとアマリージョを抱き寄せていた太めのおばさんが挨拶をする。
「そして私がベルタ。あと・・・」
「ブリジッタです」
「テアです」
残りの二人が挨拶をしてきた。
ベルタは50歳くらいで、とても優しそうなおばさんだ。
残りの二人は30歳くらい。
聞けば、この女性3人は、森に水汲みに来たらしい。
男3人は水汲みの護衛と森でルージュとアマリージョの手がかりを探すのが目的だったとのこと。
本来、ここまで来る予定ではなかったが、女性3人が荷物が見つかった周辺を探したいというので、6人で森の奥まできたそうだ。
全員、自己紹介を終えると、ベニートが質問してきた。
「不躾な質問で申し訳ないが、クロードさんは、家名があるのか?この辺りじゃ聞かない家名だが・・」
「家名?」
「あっ、先ほどルージュがクロード・ハーザキーと・・・」
「あーっと・・・クロードは貴族じゃないわ。遠い国の出身で家を飛び出してきた放蕩息子なのよ。家名は貴族じゃなくてもある国だそうよ。そう、それで住めるところを探して旅してて、たまたま村の移住者募集を見てやってきたんだって・・・」
ルージュが突然、嘘を並べ立てて説明した。
――もっともらしい嘘だけど、ハーザキーじゃないんだよな・・・そもそも
「そうか、それはすまなかった。ならいいんだ。最近、聞いた事の無い家名の貴族を名乗り、詐欺を働く輩も多いと聞いていてな」
――どんな詐欺師だよ。簡単にバレるだろ、そんなの
「クロードはそんなことしないわよ。ただのアホなお人好しだもの」
ルージュが擁護をする。
――おいおい、それはただの悪口ですぜ、ルージュさん
「まぁ、わかったわかった。すまなかった。とにかくルージュとアマリージョにも会えて目的の一つは達成できたんだ。これで村のみんなも安心するし、良かったよ」
「みなさん、心配かけてごめんなさい」
アマリージョが謝る。
「結局は無事だったんだ・・・何も言わなくていいよ」
ベニートはそう言って、アマリージョの頭を優しくなでた。
その後、3人と1台、それに村人6人は一緒に村に行くことになった。
ルージュとアマリージョは、ベルタ、ブリジッタ、テアの3人と楽しそうにおしゃべりしながら歩いている。
無事に会えてほっとしたのだろう。
皆、笑顔だ。
ベニートたち男三人の護衛衆は、前二人、後一人に別れて周囲を警戒しながら歩いている。
そして、俺はというと誰にも相手にされなくなった。
時々、アマリージョがこちらを気にして、視線を向けてくるが、そのたびに首を振って話しかけなくていいよ、と合図する。
そして、残された俺とヒカリは、歩きながら先程ルージュが作った嘘の話の辻褄合わせを考えながら、村へ向かった。




