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03話 異世界転移

『ピーピー、ピーピー、ピーピー、ピーピー』

 朝、聞きなれない電子音で目が覚めた。

 時計を見ると朝の5時。


 何が悲しくて、休日に早起きをしなければいけないのだろうか。

 どこで鳴っているかは知らないが、迷惑な話だ。

 

 布団を被って、もう一度寝ようとする。

 ・・・が、相変わらず電子音は鳴り続けていて、気になって仕方がない。


「あぁもう。どこの家だよ!」

 イライラしながら、布団を蹴飛ばして起きる。 


 まだ、鳴り止む気配はない。

 

 ここでふと気づく。

 最初は、隣の家で目覚まし時計でも鳴っているのかとも思っていたのだが、それが間違いだったことに。

 電子音は意外と近くで鳴っていた。


 音の出ている方を見渡し、近づいて聞いてみる。

 それは、予想通りというか、やはりノートパソコンであった。

 夜に起動音がしていたのは、夢ではなかったようだ。


 袋を開けてそっと中を覗く、アイツが生き返ったと言うわけでもなさそうだ。


 気持ち悪いのを我慢して、パソコンの端っこを掴んで持ち上げる。

 そして、袋から出し終えた所で、電子音が止まった。


「なんだったんだ?」

 いや、これはなんだ。

 今、掴んでいるパソコン・・・昨日よりも一回り大きい気がする。

 それに青い柄模様が入っているし。


 それよりもゴキブリはどこだ?

 カバーはピッタリと閉じられた状態で、挟まっているはずのアイツ姿が見えない。

 袋の中に、転がっている・・・ということもない。

 それどころが潰した時の変な液体のシミもない。


――これは、一度開けて見るしかないか・・・

 そう思い、仕方なく、パソコンを机に置く。


 正面に座り直してから、息を整える。

 正直、つぶれたアイツの死体は、見たくはない。

 でも、なんか変な虫とか湧くのも勘弁願いたい。


 いろいろ考えても、結局、開けて確かめてみるのが一番良いと思えた。


 俺は、ため息をつきながら、嫌々パソコンのカバーに手を伸ばす。

 すると突然、『ガコン!』という音とともに、カバーが勢いよく開いた。

 驚いて声すら出ない。

 そのまま固まる俺。


 しばらくすると、パソコンが勝手に起動し、画面が明るくなり、動画が再生された。

『ヨウ!キョウダイ!ゲンキニシテルカ!』

 再生された動画は、有名なハリウッド映画のワンシーン。

 日本でも有名なアメリカのコメディ俳優が、馴染みのある吹き替えの声で笑っていた。


 もう驚きというより唖然。

「あ・・・何だこれ・・・」

 やっと声が出たところで、画面が真っ暗になった。


 続いてチャット画面のような吹き出しが表れ、文字が打ち込まれていく。

『申し訳ありませんでした。久しぶりにする挨拶はそうするものだとデータにあったものですから。勝手ながら、ファイルに残っていた映画を引用させていただきました』


――???

 意味が分からない。


『混乱しているのは分かりますが、現在危険が迫っています。早急に身支度を整えて逃げることをお薦めします』


「・・・誰?・・・なんのイタズラ?」

 独り言を呟く


『時間にして15分程しかありません。早急に避難のご準備を、お願いします』


「だから何? だれ? 何これ?」

 チャットする友達もいないのに、誰かがイタズラを仕掛けてきている。

 取りあえず穏便に、話を終わらせたい。

 そう思って、キーボードに文字を打ち込んだ。

[あなたは・・・]


『打ち込まなくても、マイクが付いていますから理解できます。それよりも危険が迫っています。早急に避難の準備をお願いします』

 パソコンの音声が同じ事を繰り返す。


「マイク? そうなのか。それより誰? なんのイタズラ?」


『イタズラではありませんし、私はあなたのノートパソコンです』

 スラスラと画面に文字が打ち込まれる。


「だから、なんのイタズラだよ!」

 イライラしてきて大声を出す。


『イタズラではありません。本当です。ある程度疑問にも答えることはできますが、今は早急に身支度を整えてもらえませんか?』


「もうなんだよ! それに危険って何?」

 パソコンに向かって投げやりに話しかける。


『魔物が近づいています』

 予想外の文字が画面に現われた。


「魔物? 魔物ってなんだよ!」

 もうイライラはピークに達しそうだった。


『魔物は魔物です。ほかの表現ですとモンスターとも言いますが・・・』


「説明になってねえじゃん。魔物とかモンスターとか。誰がそんな話に騙されるんだよ」


『この世界では数多く生息しております。現在、数にして50体ほどが、こちらに向かってきています』


「この世界もなにも、日本にそんなのがいたらパニックだろ。あ、撮影か? ドッキリとか?」


『現在、こちらの部屋がある場所は、日本ではありませんから、撮影でもドッキリでもありません』


「え?」

 また、予想外のチャット。


『窓から外を見ていただければ分かるかと思います』

 面倒だとは思ったが、言われるがまま立ち上がってカーテンを開けて、外を見てみた。


「うわっ眩しい・・・うーん爽やかな朝じゃん・・・ってなにこれ? なんもねーじゃん!」

 窓の外にはあるはずのものが何も無く、そこには見渡す限りの草原が広がっていた。


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