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233話 大鋸から出るから大鋸屑

 翌日、俺たちは全員そろってティグリス王都の観光に出た。

 武器や防具などの戦いに必要なものは、足軽の里で銀龍石が手に入ったため、そのうちヒカリが加工してくれる。

 カレーに必要な材料も手に入れたし、連日の船旅のせいで、身体も疲れているため急いで何かをやろうという気も起らない。


 とくれば・・・久しぶり・・・いや初めてと言ってくくらいの本当にやることがなくブラブラするだけの休日だ。


 全員バラバラで好きに過ごしていいと言っていたのだが、結局まとまって王都内を観光することとなった。


 それからしばらく街を散策していると、

「ねぇねぇ、あのカレー屋・・・なんだか前に来た時と雰囲気違くない?」


 ルージュが指摘するように、確かに前回来店した時とは少し気が変わっていた。

 なんだか人も多い。


 近づいてみると、外観はほとんど変わっていなかったが、店内の様子が完全に変わっていることに気づく。


「あ・・・・」

先に店内をのぞき込んでいたルージュが見てはいけないものを様子で振り返った。

俺たちも続けてが店内をのぞき込む。


「「「「あ・・・」」」」


 つい先日まで普通のカレー屋だった店内は、完全に桃子のカレー屋としてリニューアルされていた。

 店内の装飾品が全体的にピンクになっている。

 壁に掛けられたメニューは、全て一新され全てのメニューに「桃子姫の」というタイトルがつけられていた。


 そして、入り口を入ってすぐ横のスペースには、オリジナル桃子グッズ。

 その中には「桃子姫さまが踏みしめた砂」と書かれた小瓶も売られていた。


「こんなものまで・・・」


「ここまで来ると桃子を崇めているのか、桃子で金儲けしたいだけなのかわからないわね」


「まぁまぁ、お二人ともそんな怒らないで・・・カレーの材料も分けてもらえましたし、私もこれくらいは別に・・・」


「桃子がいいなら・・・別に俺はいいんたけど」

「そうね・・・でもそのうち儲けたお金は全額回収してやるわ」


「姉さん、悪い顔になってますよっ」


 そんなこんなで、俺たちはまたカレーを食べることになった。

 新しく名付けられた「桃子姫のカレー」は、同じ味だったが暫く食べられないかもと思うと感慨深い味となった。


 食べ終わった後は、桃子が店員に囲まれてサインを求められていた。

 桃子はサインを書き終えて、店員一人ずつと握手をしながら、味についての感想を述べていた。


 桃子は終始笑顔だった。

 しかし、あんなに付きまとわれて疲れないのだろうか?

 アイドルという職業は本当に大変な仕事だな・・・そんなことを考える休日となった。



──翌日


 朝、起きて全員で朝食をとっていると大使館に客が訪れた。

 執事が対応すると、それはティグリスの国王・トクガワ・ジュウシロウだった。


「クロード殿、暫くぶりじゃな」

 そう言ってドアを開けたジュウシロウは、元がライオン顔なので分かりづらいが、なんとなくボサボサ頭に、髭も伸び放題で整ってはいなかった。


「あれ? なんか疲れてますか?」


「あぁ、疲れてるも何も・・・ここ3日はほぼ徹夜で聖大樹を切り続けていたからな」


「徹夜で? 別にそんなに無理しなくても・・・」


「無理というか・・・まぁ、徹夜で作業するより、儂の周りがな・・・休憩中も口ばかり挟むもんで、精神的に疲れとるだけだ・・・・まぁ気にせんでええ」


 そういえば周囲がいろいろうるさいとかなんか言ってたっけ。

 最初見たときは強いボスライオンって感じだったのに・・・なんか今は群れから追い出されたライオン・・・実際、一人で来ちゃってるし。


「ほれ、儂のこともうええだろ」

 ジュウシロウはそう言うと、大きな袋から聖大樹を切るのに使った大鋸と切り取られた聖大樹の枝を取り出して俺に渡してきた。


「こ、これが聖大樹の枝・・・」

「やっぱり、クロードが折った若木よりだいぶ太いわね・・・でもこのツヤツヤした感じはそっくり」

「本当、近くにいるだけで、ほんわか暖かい気がします」


「暖かく感じるのは、それだけ魔素の含有量が多いっていう証だな。おっ、それとこれも渡しておこう」

 そう言ってジュウシロウは袋から、小さな子袋を取り出して俺に渡してきた。


「これは?」


「それは聖大樹を切ったときに出た大鋸屑(おがくず)だ。ただの木屑だが馬鹿にできんほどの魔素を秘めとる。持っておけば何かの役には立つと思ってな・・・」


「顔の割に意外と細かいことに気が付くのね」

「姉さんっ!!」


「ええって、ええって・・・しかしこれでちょっと見直したじゃろ」



「うーん・・・そうね・・・じゃあこれからはジュウさんって、さん付けにするわ」


「ジュウさん・・・ま、悪くはないか・・・それより儂にもついでに飯を食わせてもらえんか? あいつらが五月蠅くてな。できれば脂身たっぷりの肉がドーンと、焼き加減はこんがりで頼むぞ!」


 それから執事がしまっておいた肉を焼き、ジュウシロウにふるまった。

 聞けば、聖大樹切りは体力勝負だが、健康も大事だといわれて、多めの野菜と肉をバランスよく食べさせられていたらしい。


・・・見た目は完全に肉食獣なのに。


 それからジュウシロウがデザートを食べ終わるまで、俺たちはずっと愚痴を聞かされ続け・・・話が終わった頃には、昼をだいぶ過ぎていた。


「じゃあ、俺たちもそろそろ出発しますので・・・」

 本来なら王城まで出向いて聖大樹の枝をもらうところを、国王自ら訪ねてきて全ての用事を済ますことができたため、俺たちもティグリスを出発することを伝えた。


 ジュウシロウはもう2、3日滞在して貰いたがっていたが、今後のことも考えるとなるべく早いほうが良いので快く見送ってくれた。


「あんまり大々的に見送れなくて済まない」

 ジュウシロウがそう言って頭を下げたが、来たときも大げさにはしていないので、帰りも静かなほうがいいと言って、ジュウシロウだけに見送られてマッキナへと乗り込んだ。


 ゆっくりとマッキナを走らせ街の外へ出ると、王都内にある見張り台からジュウシロウが手を振っているのが見えた。


 よく見ると、門番たちも・・・そして警備隊長のゲンマイと弟のおこめ丸も見送りに来ていた。


 カレー屋の人たちは? と思ったが桃子には既に手紙が届いていたらしく、それには銅像製作と「桃子姫のカレー」から「桃子姫公認カレー」に名称が変更になる旨が記されていた。

 長かったティグリスもこれでお別れ・・・


     ☘


 7本の聖大樹の枝を求めて・・・


 残るは、エルフ、ブルクハント、デゼルランダ、アルチペラーゴ、それから騎士の国カヴァリエールと魔王の国の6本。

 エルフとブルクハントは、ヒカリが銀龍石を加工して大鋸を作り、それぞれの国で枝を切り取ってもらう手筈になっている。


 デゼルランダとアルチペラーゴについては、事情は説明してあるが、直接、大鋸を持参してお願いすることになっている。


 一度サンシャインまで戻ってから出直そうかという話も出たが、結局俺たちは船でサンシャインの領地まで戻り、そこからそのまま南下して砂漠の国デゼルランダ、そしてさらに南の諸島連合アルチペラーゴを目指すことになった。


 旅は長くなりそうだったが、順調そのものであった。

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