218話 おもてなし
翌朝――俺たちは足軽の里を目指して出発した。
乗り込むのは、街ではすっかりと噂が流れて有名になってしまった装甲車両のマッキナ。
街中では、よほど人気なのか、獣人の子ども達が棒を振り回しながら追っかけてきていた。
「これは慕われているというより、完全に魔物扱いよね」
ルージュが言うことも分からないでもないが、執事からの報告によれば大人達には理解者が増えたが、子ども達はそれが伝わっていないとのことだった。
しかも、子供間ではマッキナに一撃を加えると人気者になれるらしく、目立ちたい子、女子の前でいい格好したい子、グループを仕切る悪ガキタイプの子らが、次々に押し寄せているということらしい。
「こんな事になったのは、昨日あの子に手出しをしなかったクロードのせいだわ。それに子供のやることとは言え、ちゃんと教育してやらきゃダメだわ」
「まぁ、いいじゃん別に・・・子供のすることなんだし」
俺はルージュを宥めながら、昨日貰った地図を司令室にいるリカちゃんに渡すと、マッキナのフロントガラスの左上にマップが表示され、足軽の里までの道のりが表示された。
「ほんと便利な機能ね」
表示された地図をマジマジと見ながらルージュが何度も頷いく。
ルージュの気は、とても移ろい易かった。
それから俺たちは子供たちの棒で叩かれるという洗礼を甘んじてうけながら、街を出る。
門を抜けて外に出た段階から、自動運転に切り替えて、スピードを上げていく。
時速100キロを越えた時点で、魔物に対する迎撃モードを発令し、俺たちは改めて里に到着してからのことについて話し合うことにした。
昨日の話ぶりからするとカレーの件は桃子のおかげでなんとかなるとの話だった。
あれだけ涙を流していて、まさかこれが何かしらの罠だとも思えない。
だとすれば、里の人たちの話は本当で、数百年前にいたという渡り人の話を詳しく聞くことが出来れば、ある程度の疑問も解消するかも知れない。
だから・・・今決めなきゃ行けないことは
「危なくなったら全力で逃げよう」
「ま、そりゃそうね。根本的な指示がアホね、クロードは」
「私はマッキナがいれば大丈夫だと思いますよ」
「あはっ、里にはキノコ生えてないかなぁ」
「あの・・・なんだかごめんなさい。私のカレーのせいで・・・」
皆で騒ぐ中、桃子が一人なんとなく申し訳無さそうにしていた。
「ん? 何? そんなこと気にしてたの? 桃子もバカね! 私らはカレーが食べられたらいいの。しかも家でねっ。里には他にもお宝っぽいものがあるような雰囲気もあるし。この旅はグルメ旅なのよ! いちいち小さいことは気にしちゃダメなの! 美味しいものを求めて命を賭ける! これこそがグルメハンターなのよ!」
ルージュが桃子の腕を掴んで、桃子を揺すりながら熱弁を振るう。
「ルージュ・・・何んだよグルメハンターって。俺そんなのになった覚えないぞ」
「姉さん・・・それ本来の目的自体が変わってますよ・・・」
「ふふふふっグルメ・・・キノコ・・・私はキノコハンターに・・・ぐふふふふ」
「まぁ、いろいろ間違ってるけど、みんな楽しんでるんだから。桃子も気にせずに楽しみなよ」
話がどんどんと外れていく気がしたが、俺がまとめてそう言うと、桃子は「・・・そうですね」と言って少し笑顔を取り戻した。
・・・ガガッ
「司令室より報告です。進路上の魔物が次々に倒されているですが・・・今のところこちらを狙うってくる気配はありませんが、いかが致しましょうか?」
ルームミラー越しにルージュと桃子とヴィオーラがじゃれ合っているのを見ていたら、司令室にいるリカちゃんから運転席に通信が入った。
「魔物が?・・・どういうこと?」
報告の意味が分からなくて、聞き返してみた。
「進路上の魔物を倒している人物が複数見つかっています。こちらを攻撃してこないとも限りませんので、報告をした次第です」
「あぁ、なるほど・・・その人物ってモニターに出せる?」
「はい」
そして、モニターに映しだされたのは、一キロほど離れた岩山の陰に隠れた一人の少女だった。
「あっこの子の格好・・・」
「そうだね」
その子の服装がフード付きの黒づくめ・・・そう、大使館に来た足軽の里の人達と同じ格好だった。
岩陰に寝そべった状態で構えているのは狙撃用のライフル?
映しだされる映像を見る限り、どうみても大型の狙撃縦を構えている少女だった。
その少女の後ろには、周囲を警戒しながら銃を構える少女。
・・・・ガガッ
「次のポイントも出します」
そう報告が来て映しだされたのは、またもや二人一組で、一人がライフルを構える姿であった。
「これ、俺たちの進路上の魔物を狩ってるのかな?」
・・ガガッ
「はい・・・そのようです」
「昨日、地図を渡されたときに言っていた安全なルートってこういう事だったんだ・・・律儀というか・・・なんというか・・・えーと進路は地図のルートから外れないようにしてくれる? それと黒ずくめの人は味方だからこっちからは撃たないようにお願いね」
俺はそう司令室にそう伝えながら、黒づくめの・・・足軽の里の人間たちの気遣いに、日本人的な隠れた気の使い方を感じ、少し嬉しくなった。




