214話 ばい~ん
街の中央の通りをゆっくりと進んでいく。
マッキナのいかついボディのせいで、かなり目立っていたが、城壁内の道を正しく走っていることから、警戒はされているが魔物の類いだとは疑われていないようだった。
「うちの大使館はこの先にあるの?」
『はい。この真っ直ぐ2つ目の角を左に曲がったところです』
「分かった。でもまぁ、ここまで大きなトラプルもなく無事着いて良かったよ」
「やーっ」
こん。
「そうね。でもティグリスは獣人の国というだけあって獣人だらけね。それになんだか凄く警戒されてるみたいだし・・・これは私たちが人間だから? それともマッキナのせいかしら?」
「やーっ」
こん。
「どう考えてもマッキナだと思う。剣に手をかけてる人が何人もいるし」
「やーっ」
こんっ。
「そりゃそうよね。誰でもこんな車みたら魔物だと思うわよね」
「やーっ」
こんっ。
「あの〜話してるところすいません。さっきから、コンコン変な音が聞こえるですけど」
アマリージョが不思議そうな顔をしながら聞いてきた。
「やーっ」
こん。
「あっ、本当だ」
「聞こえるわね」
「それたぶん、あの音だと思います」
窓際にいた桃子が、後ろの方を指差しながら言った。
「後ろ? ヒカリモニターに映せる?」
『はい』
運転席の正面にあるモニターに、側面と後方の映像が映し出される。
「やーっ」
こん。
「やーっ」
こん。
「何あれ?」
「なんでしょう?」
「やーっ」
こん。
「どう見ても私らに喧嘩売ってるわよね?」
「喧嘩というより、マッキナを魔物だと思って戦ってるように見えますけど」
ルージュの疑問に桃子が答える。
「やーっ」
こん。
「おお、さすが桃子」
「確かにそう言われたら、そう見えてくるわね」
ルージュも納得したようだ。
「やーっ」
こん。
「なんだか、かわいいですね」
「あははははははははははははっ」
『やーっ」
こん。
「どうしましょうか?」
「放っておいてもいいんじゃないの? 物理防御の魔法陣も働かないくらいの攻撃みたいだし」
「やーっ」
こん。
マッキナは、その後も止むことのない攻撃を受けながら、大使館に到着する。
大使館は三階建ての王城と同じデザイン。
つまりは迎賓館のミニチュア版だ。
マッキナを建物の敷地内の馬車置き場に停車させ、全員が降りると、そこにはずっとマッキナを叩き続けていた少年が立っていた。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・や、や、やっと姿を現したな、この魔物使いたちがっ」
「魔物使い? 誰のこと?」
「誰でしょうか?」
「クロードじゃないの? 視線ロックオンしてるし」
「あはっ キノコ食べる?」
「い、いるかっ。それを食べさせて我を操る気だな。その手には乗るかっ 魔女めっ」
「あはっ魔女きたっ! キノコ魔女っ 魔女キノコ・・・魔女っこ・・・魔女っ子ヴィオちゃん・・・うぷぷぷふっ」
「な、何がおかしいっ! この魔物使いめっ。まずはお前から退治してくれるっ・・・・我は足軽の国の侍・・・おこめ丸。くらえ! 必殺、スーパーおこめ剣!!」
――あっ・・・どうしよう・・・受ける? 避ける? うーん・・・めんどくさい
スーパーおこめ剣が空を切る。
「な・・・!?」
「クロードなんで避けるのよっ そこは当たって上げなさいよっ」
「え? なんでだよっ 木剣とはいえ痛いよ・・・当たったら」
「くらえ、必殺!スーパーおこめ剣!!」
――ヒカリ、物理防御
〝ばい~ん〟
おこめ丸の緩い斬撃が、俺の手前に出来た物理防御に阻まれて跳ね返された。
「くそ~ くらえ!!」
〝ばい~ん〟
「やーっ」
〝ばい~ん〟
「取りあえず、大使館に入ろうか?」
〝ばい~ん〟
「ここまで急に無視とか・・・クロードもえげつないわね」
「まぁ、これくらいなら大して邪魔じゃ無いし・・・」
「何かあれば私がお家まで送っていきますよ」
桃子はいつでも優しかった。
♣
大使館に入ると、ヒカリが作った執事が待っていた。
ほかの職員はまだいないらしい。
「クロード様、ルージュ様、アマリージョ様、桃子様、ヴィオーラ様・・・そちらの・・・方は初めての方のようですが・・・ようこそお越し下さいました」
〝ばい~ん〟
「あぁお久しぶりだね・・・そういえば執事さんは自立型なんだっけ?」
「はい。自立型でございます。ヒカリ様から支持はありますが、基本的には自分で考えて行動をしております」
〝ばい~ん〟
「あぁ、なるほどね・・・」
基本的に俺は執事とヒカリと意識を共有していると思っていたが、別人格で動いていたようだった。
――執事は配下だけど、ヒカリが行動を管理してる訳じゃないんだね
『――はい・・・執事は現在更に増やして25名おります。さすがにすべてを管理すると容量が不足してしまうので自立型にしてあります。とはいえ害がないように、決められたルール下で思考と行動をするように制限はしていますが』
――それで、おこめ君を見て不思議そうな顔をしてたのか
『――はい。玄人たちにも執事は一人の人格のあるものとして扱って貰いたく、あえて伝えませんでした。まぁ、彼がどういう思考をするのかも興味ありましたし』
――思考?
『――無視するのか、誰なのかを聞くのか、ですね。玄人が無視しているため、彼も無視することを選んだみたいでした』
――そういうことか
♣
執事の案内で、奥の会議室に通される。
かなり広めの会議室だ。
適当に別れて席に着くと、執事がすぐにお茶とお茶菓子を持ってきた。
「これはこの地方で獲れるグラブという実のジュース、それと名物のシュークリームです」
「おっシュークリーム・・・」
「さすが名物ね!」
〝ばい~ん〟
「ボク・・・食べる?」
桃子は優しい。
〝ばい~ん〟
〝ばい~ん〟
もぐもぐ〝ばい~ん〟
――食うんかいっ!
「ねぇねぇ、執事4号さん、この大使館ってほかに職員いないの?」
もぐもぐ〝ばい~ん〟
「本日は皆様が到着するということで、極秘にティグリス王が訪問されるご予定になっておりましたので、職員は一度帰らせました」
「ティグリス王ってトクガワ・ジュウシロウさん?」
「はい。門兵が伝えているはずですので、30分ほどでお見えになるかと存じます」
もぐもぐ〝ばい~ん〟
「じゃあ、その子・・・帰した方がいいんじゃないの?」
「そうだよな・・・」
「クロード、一回殺されなさいよ」
「な、なんでだよっ」
「じゃないと終わらないわよ」
もぐもぐ〝ばい~ん〟
「うーん・・・面倒だしいいんじゃない? 全然話聞きそうに無いし・・・最悪ほら、執事さんが監視してるから、やばそうなら分かるでしょ・・・」
「玄人がいいならいいけど・・・ティグリス王にはちゃんと説明しなさいよ」
もぐもぐごっくん〝ばい~ん〟
それから20分ほどして、ティグリス王の来訪を告げる大使館の玄関チャイムがなった。




