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96話 商業ギルド

 俺たち4人は、階段を降りて冒険者ギルドのカウンター横を通り過ぎ、建物正面の受付まで戻ってきた。

 

「あ、さきほどの・・・登録は出来ましたか?」

 受付のロザリーがこちらに気がつき話しかけてきた。


「おかげさまで・・・それで今度は商業ギルドで素材の買い取りをお願いしたいんだけど」

 少し緊張が取れたのか笑顔で話すロザリーに、俺が買い取りの取り次ぎをお願いする。


「買い取りですね? では、こちらで申し込みをしますので、チームリーダーのギルドタグをこちらの石版にかざして貰えますか?」


『はい。こちらでいいですね』

 ヒカリが前へ出て、受付の石版に自分のギルドタグをかざす。


「え!? リーダーですか? 子供・・・え、Cランク? でも今登録・・・エンハンブレ?」

 彼女の中で情報が大渋滞を起こしているようだ。


『Cランクで登録して頂きましたエンハンブレです。これからよろしくお願いします』

 ヒカリが混乱し続けるロザリーに、頭を下げて丁寧に挨拶をした。


「Cランクもですけど、エンハンブレって? 一時期噂になっていた、あのエンハンブレですか? あなたがリーダー?」


『はい。噂は知りませんが、エンハンブレのリーダーでヒカリと申します』


「あーっ! 今年一番ビックリの出来事かも・・・」


『一応、私たちは暫くこの街で暮らすつもりですから、これからもよろしくお願いします』


「あっ・・・はい。こちらこそ・・・依頼もたくさんあるので、お待ちしています。・・・って買い取りでしたね。こちらから地下へお願いします」


『ありがとうございます。ロザリー』

 階段を下ると、そこは大きめの待合室になっていた。

 順番待ちも出来るようにするためが、部屋の左側にはバーカウンターが設置されていた。

 お客は俺たちだけで、広い空間が寂しく思える。

 右側に一定間隔で仕切りの付いたカウンター、正面には個室と思われる部屋のドア。

 ギルドっていうのは、やはり儲かる仕事なのだろうか。

 ちょっとした装飾に、いちいちこだわりを感じた。


「買い取りのエンハンブレさんですねー。こちらでお願いしまーっす!!」

 一人の若者がカウンターから身を乗り出して、手を振りながら声を張り上げる。


「何? 買取ってこんなに目立ってやるものなの? 他に客はいなくても恥ずかしいわ」

 ルージュがそう言いながら、まるで汚い物を見るかのような目で、手を振る若者を見る。


「コラッ! 全くお前はいつもそうだ!」

 後ろから現われた髭をはやした上司っぽい男が、若者にゲンコツを落としてから頭を下げる。

「申し訳ありませんでした。今日は人手が足りず、コイツに手伝ってもらっているのですが、噂のエンハンブレの方が来たって・・・驚きと嬉しさで思わず大声を。コラ!お前も謝れ!」

「すんませんした」

 若者が上司に小突かれて頭を下げた。


「あのさぁ、さっきからあのエンハンブレ、あのエンハンブレって、何なの? 私ら別に、何かしでかしたような覚えもないんだけど・・・」

 ルージュが上司の男に促された席に腰を下ろしながら、少し不満げに言った。

 俺たちも、ルージュと並んで横並びの席に腰を下ろす。


「いえいえ。あなた方は厄災の眷属を討ち取り、クリチュート騎士団の団長から便宜を計らうよう言われた特別な存在。それなのに、長い間、姿も見せず・・・最近ではあれば作り話だとか、手柄を副団長に取られたくない団長の妄想だとか、いろいろ言われていましたから」


「あの団長、いい人そうだったのに、そんなことになってたのか・・・」

 俺がボソッと独り言のつもりで呟く。


「はい。それが今日突然現れて、いきなりCランク登録。商業ギルドでも、冒険者ギルドでも、ちょっとした騒ぎになっていますよ」

 上司の男が俺を見ながら笑顔で答える。


「そういう事なのね。分かったわ。要するに、ただもの珍しがっているって話ね・・・」

「そうだな。扱いが珍獣と同じような気もするし」

 俺も妙なことで騒がれたり、変に目立つのは遠慮したい。


「いえいえ、そういうことよりも、単に眷属を倒した冒険者がいるって話の方が何倍も多く伝わっていますから。作り話だとかの噂話は、ほんの些細なことと言いますか・・・。それに商業ギルドとしては、あなた方の後見がブルーノ商会だと言うことも知っていますので、誰も見たことがないだけで、意外と身元はハッキリしている冒険者なのですよ」


『話はだいたい分かりましたので、そろそろ買い取りをして頂けると助かるのですが』

 ヒカリは自分達の噂がどうであろうと、全く気にしないのだろう。

 とはいえ、当のルージュもそろそろ飽き始めていたから、話はこれくらいでいいだろう。


「これは、申し訳ありませんでした。では査定をして欲しいものをこちらにおいて下さい」


『では、まずこちらの素材からお願いします』

 ヒカリはそう言うと、自分の後ろに樽を5つ出し、その内の一つをカウンターの上に乗せた。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 何も言わずに固まる若者と上司。


『すみません。よろしいですか? こちらからお願いします。中身を出して並べた方がよかったですか?』


「いえ・・・それよりも、今、樽はどこから出てきたのでしょうか?」

 上司は、目が点になったままの状態で聞いてきた。


『樽ですか? 手からですが、それが何か?』


「何かって・・・なんで手から樽が出るのでしょうか? 自分で言ってて、意味が分からないのですが・・・」


「あ、それはうちのリーダーはそういう魔法が使えるのよ。それくらい察して黙って仕事しなさいよ。プロでしょ」

 ルージュが面倒くさそうに、何の説明を無しに、力ずくで押し切ろうとしたが、それが返って功を奏した。


「あっ! 大変失礼しました。冒険者の能力については聞いてはいけませんでしたね。能力は即、命に関わる情報だけに取り扱いは慎重にしなければ・・・申し訳ありませんでした。では中身を改めさせてもらいます」

 我に返った上司の男はそう言うと、何も聞かず樽の中身をカウンターに出し始めた。

「こちらは魔物の素材ですね。ゴブリンの爪や牙・・・ゴブリンが好んで身に着ける装飾品ですね。それにこちらは、ウサギのなめし革、他にもいろいろありますね。あとは・・・ワイバーンですか? 鱗と革、トゲ、爪・・・凄いですね。あれ? あと毒袋はありませでしたか? 尻尾のトゲの所についていたと思うのですが・・・」


『尻尾ならそのまま丸ごとありますが、高いのでしょうか』


「ワイバーンの素材だと、やはり牙が一番高いですが、毒袋は薬にもなるため需要が高く、状態によっては高額で取引されていますよ」


『では、丸ごとお願いします』

 ヒカリはそう言うと、手のひらをカウンターにかざし、ワイバーンの尻尾を丸ごと出した。


「うわっ! すごっ・・・うん・・・状態も悪くないですし・・・毒袋がトゲと一緒にそのまま全部ありますよ。一応この毒袋とトゲ・・・尻尾丸ごとで金貨15枚。ほかの素材と合わせて金貨40枚ってところですかね。モンローさんからギルドの手数料は取るなと言われているので、これでも通常よりも手数料分高く査定しています」


『では、そちらはその値段で結構です。あとはこちらの武器と防具、それと魔石もお願いします』

 ヒカリはそう言うと、一つの樽から魔石を、残りの3つから武器と防具を取り出した。


「うわっ、魔石・・・大丈夫ですか樽なんかに入れて・・・」


『はい、問題ありません。周囲から魔素を吸収しないように樽に魔法陣を描いてありますので』


「魔法陣を?あなたは魔法陣師なのですか?」


『いえ、ただ書けるだけです』


「書けるだけと言っても、それが普通は出来ないのですが・・・というかこの樽で魔石を入れて運べるならば、この樽ごと売っては貰えませんか? えーと見たところこれが一番大きくて、あとは小さいのが・・・それにしても凄い数ですね。でもまぁ、樽ごと丸々全部で、金貨25枚でお願いします」


『では、その値段でお願いします』


「え? いいの? 即決? さっきも即決だし、こういう買い取りって、もっと粘って買い取り価格を上げていくものかと・・・ルージュも、アマリージョもそう思わない?」

 即決していくヒカリが不安になり、ルージュとアマリージョにも助けを求める。


「まあ、ヒカリがいいなら、いいんじゃない?」

「私も、よく分かりませんからヒカリさんにお任せで」

 ルージュとアマリージョもお金に対する執着が少ないのだろうか? 俺の味方は同じチームにはいないようだ。


玄人(クロード)、良いのです。この方々は私たちの後見がブルーノ商会であることを知っていて、かつ眷属を倒せる実力があることも知っています。その上、騎士団の団長やギルマスのモンローさんの口利きもあるのに、公式な取引で騙そうとはしてこないはず・・・むしろ気を遣って少し多めの金額を無理して提示してきてもおかしくはありません。ですから金貨25枚だと言えば、25枚で良いのです』


「そういうことよ。クロード。多少のことで欲を張るのは小物みたいだから格好悪いしね。それに、嘘ついて騙そうとするなら、全員切り刻んで終わりよ」

ルージュはある意味いつも簡単でいい。


「・・・・・」

「・・・・・」

 若者と上司に揃って口を閉じる。

 

『ルージュ。もうそれくらいに・・・そういう訳ですから買い取り価格は金貨25枚で問題ありませんので・・・』


「だ、大丈夫ですよ・・・私たちもその辺はプロですから。仕事で嘘はつきませんから」

 上司は場慣れをしているのか、面倒な客をあしらってきた経験があるのか、すぐに笑顔が戻り作業を再開した。逆に若者の方は、ガチガチすぎて、息も静かにしているようだが・・・そこは気づかないふりをしておこう。


――しかし、冒険者ギルドではレベル300とか、いらぬ恥をかいたが、商業ギルドの方はいたって順調。職員の人も一目置いてくれているみたいだし。意外と俺って、冒険者よりも商人の方が向いているかな。


 俺は順調に進む買い取り作業を見つめながらそんな事を考えていた。





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