幕間-06 「ツンデレ」
バーナード司祭一行が旅だった翌日の夜。
ヴェールは、これまでの経緯を報告するべく、ヒカリに通信をしていた。
「・・・・・・だそうです。残念ながら氷漬けの方たちは・・・力不足ですみません」
『ヴェールが謝ることではありませんよ。それに報告を頂いて感謝しています』
「いえ、報告はスパイですから、当然です」
ヴェールがイタズラっぽく笑いながら言った。
『そうでしたね』
「それはそれと皆さん、おかわりありませんか?」
『はい。特にはありませんよ。個人的に困っている事ならありますが』
「え? ヒカリさんでも困るような事とかあるのですね。少し意外です」
『そうですか? 言わないだけで困る事はありますよ』
「それで、今は何を困っているのですか?」
『それが今、新しい武器と私の身体を作っているのですが、武器は一応修復だけなので問題はないとして、私の身体について、関節部分の素材が見つからなくて困っています』
「身体? 作るのですか? それはヒカリさんが、動けるようになるってことですか?」
『はい。厳密にはちょっと違いますが、そんな感じです。玄人たちが冒険者になるというので、私も一緒に戦えるようにと考えているのですが、なかなか動きが滑らかにならないもので。それで困っています』
「悩みの次元がちょっと高度というか・・・どれくらい滑らかなのが良いのかさえ、私には分かりませんが・・・あっ!」
『どうしました?』
「流動ミスリルはどうですか?」
『流動ミスリルとは?』
「最近発見された使い方で、ミスリル鉱石に大量の魔力を流すと、柔らかい金属に変質をするんです。一度魔力を流したミスリル鉱石は、魔力を入れ続ける必要があって、魔力の供給を止めると固まってしまい、二度と溶けなくなるそうですが・・・魔力の量を調整することで、形状を変化させたり、硬度を変えたり出来るそうです。さすがに一日中魔力を入れ続けるなんてことは大変なので、通常は溶かして固めた状態で武器にするのが流行っています」
『それは良いことを聞きました。使えるかどうか、早速、ミスリル鉱石を取り寄せて試してみます。それと、固め直して武器にするのが流行っていると言いましたが、それは何故なのですか?』
「強度は変わらないようなのですが、金属に粘りがあるとかで、切れ味が良いみたいです。それに魔力伝達が良くなるとかで、体内魔素量が多い人ほど攻撃力が上がるらしいです。それでも数は出回っていませんから、お金持ちの貴族のコレクションみたいなものだと思います」
『そうですか。コレクションとは言いますが、それはまさにルージュの為の武器という感じですね。彼女は魔力操作が苦手みたいですが、魔素量は多いですからね』
「でも魔力の操作は苦手でも大切ですよ。私はどれだけ効率よく使っても、すぐに魔素が底をついてしまうんですけど・・・。それでも魔力の温存は戦闘継続時間を伸ばすことに繋がりますから」
『そうですね。少しルージュにも魔力操作を少し学ばせた方がいいかも知れませんね』
「はい、是非。・・・それで、ルージュは、お元気ですか?」
『折角ですから、通信を繋ぎますね。あ、玄人以外ですけど』
「え? クロードさんにも繋いでくださいよ!」
『今話すにしても、玄人だと氷漬けの方々の事とか質問攻めにしかならないと思いますよ』
「え? あ、それでも、別に・・・」
『また、そのうち、事が進展したらということで、ルージュとアマリに繋ぎますね』
「・・・はい」
『ルージュ、アマリ。ヴェールから通信です』
「あ、え? ヴェール? ん? これもう、繋がってるの? え? まあいいか。おひさ〜」
「こんばんは、ヴェールさ・・ん」
ルージュとアマリージョが挨拶をする。
「あ、こんばんは。ルージュ・・さん、アマリージョさ・・ん」
続いてヴェールも応答する。
「!? アマリもだけど、ヴェール!? 2人とも見知りか!! あーもうダメ、ダメ。やり直し。全員呼び捨て!わかった?」
「あ、はい」
「分かりました」
アマリージョとヴェールが小さく答える。
「えー、ゴホンっ。はい。じゃあやり直し。ヴェールおひさ〜」
「ヴェール・・こんばんは」
「ルージュ、アマリ、こんばんは」
その後、ヒカリを含めた4人は第2回女子会と称し、様々な話で盛り上がった。
中でも一番盛り上がりを見せたのは、第1回と同様、クロードの話で、ルージュとアマリージョもそれなりに好きだが、決定的に何が好きか言われるとよく分からないという、なんとも訳の分からない話だった。
「それでお二人は、そもそもクロードさんのどこを好きになったのですか?」
ヴェールは恋愛の話が特に好きだった。
「そう聞かれると困るのよね。私はアマリが殺されかけて、私も死ぬと思った時に、突然現れて助けてくれたから。凄かったわよ。横から、何か影が来たと思ったら目の前のオグルベアが消えて・・・あの時は、あーこれが白馬の騎士ってやつだ〜って思ったわ」
「私も同じですよ。意識は朦朧としていましたけど、眩しく光る人が助けてくれて、運んで貰っている時にすごく安心したのがきっかけですね」
「なんだか、2人とも過去形っぽいですね」
「あ、別にそんなこと、ねえ、アマリ」
「はい。そんなことはありませんよ。私は、クロードさんが純粋に好きなんです。優しいお兄さんみたいですし。この人と一緒にいれたらな〜とか。結婚してもいいかな・・・とも思っていますけど。でも同時に私はあの人もいいな〜とか、この人もいいな〜とか。好きなのは、ずっと変わらないと思うんですけど、私、結構気が多いから・・・。でも姉さんはちょっと違うと思いますよ」
「な、何が違うのよ!」
「違うんですよ。私はクロードさんが、ただ好きなんですけど、姉さんは好きなだけじゃなくて、たぶん尊敬してるんです」
「尊敬なんてしてないわよ」
「アマリ、私から見てもルージュがクロードさんを尊敬しているようには、とても見えなかったですよ」
「ふふーん。ヴェールもまだまだですね。私には分かるんです。姉さんがクロードさんを荒く扱うのは好きだからなのです。でも、好きなら普通はどんどんくっついていくのに、クロードさんには、ほとんどくっついていかないんです。そういう時の姉さんは、結構本気の時の姉さんで、それは相手を認めて、尊敬する部分があるからだと思うんです」
「そ、そんなこと無いわよ・・・」
アマリージョの分析を、ルージュが照れながら否定するが、ヴェールは気にせずに感心していた。
「さすがは姉妹って感じです。でもそれって、あれみたいですね。この間、泊まった時に言っていた・・・なんでしたっけ?」
『ツンデレの事ですか?』
思い出せないヴェールにヒカリが助け船を出す。
「あぁ、それです。ツンデレ」
ヴェールが嬉しそうに言う。
「たしかにそうですね。姉さんってツンデレだったんですね」
アマリージョもどこか楽しそうだ。
「もう、うるさいわね!! 勝手に私の事を分析しないでよ!」
一人怒るルージュをよそに、この後も4人の会話は夜遅くまで続いた・・・




