全員平等だ!!
今日のメニューは白ごはん。下町のインプとフェアリーの夫妻が焼いたパン。これはオレ直々に買いにいった。オレのお気に入りだ。鳳凰の卵焼き。これは無精卵だから殺生にはならない。鳳凰の夫妻も毎日産まれるので持っていって構わないと言っている。セイレーンの捕った魔魚のムニエルと塩焼き。魔界の森名産魔樹リンゴとレタス、にんじんのサラダ、人間界のマヨネーズとか言うソースで和えたものだ。これはうまい。ゴブリンの作ったバターとチーズ。悪戯好きな輩だが仕事はきちんとしている。そして毒抜きに48時間かかるキノコのスープ。
和洋折衷。いつも通りだ。
サラダを食べ、お気に入りのパンにチーズを乗せその場で炎魔法で軽くトーストして食べた。
卵焼きを二つ、スープをすする。
「よく食べますわね~」
「お前も食えよ、リオ」
「はい~」
そう言うと優雅な手つきでムニエルを食べた。
「美味しいです~」
パンをもうひとつと思ったら、バスケットにもうなかった。
「てめぇ!シェリー!!」
「アハハハハ!!遅い遅い!」
「パパ、パンあげる」
「いや、いいよアオイ。どうせパンをあげる代わりにキノコスープを飲んでくれだろ」
「うっ・・・」
アオイの考えはわかっている。アオイはキノコが苦手だ。次はたぶん・・・
「あねご~」
シェリーのことをアオイはあねごと呼んでいる。正確には呼ばされている。
シェリーは食後の一服をしているところだった。さっきとは違うジッポライターで火を着けている。
「ダメだよ、ちゃんと食べなきゃ」
紫煙を吐き出してから優しくたしなめる。
「うぅ~・・・」
またとてとてと歩いていく。
「おねえさま~」
アオイはリオのことをおねえさまと呼んでいる。これは自発的に呼んでいるようだ。
「ダメですよ~」
「うぅぅ~・・・」
今度は控えているクラウンのところへ歩いていく。
「ひつじちょー」
「執事長ですよ」
「スープ、あげる」
「ダメです、私は執事ですから。一緒に食事をとるわけにはいきません」
「なんで~?ひつじちょーも四大魔王だよ?」
「ですが・・・」
どうやらお困りのようだ。
「クラウン、食卓につけ」
「大魔王様?」
「今日は執事をしなくていい。副執事長のフリントに仕事を頼め」
「ですが、しかし・・・」
「お前はよく働いてる。キノコスープ、半分飲んでやれ。最近はお前食卓についていないだろ」
オレは手元に置いてある鈴を鳴らした。
「なんでしょうか、大魔王様」
気配もなくフリントが現れた。
「フリント、聞いていたな。一人前の食事を」
「委細承知でございます」
すぐに給仕メイドが現れてクラウンの分の食事を運んできた。
「と、言うことだ。アオイ、半分はきちんと飲めよ」
「ひつじちょー、優しい」
「ちょっ・・・サタン!」
「へぇ?珍しいなオレのことを名前で呼ぶなんて」
「私はあくまでも執事、それも執事長です」
「それがどうした。ここの主人はオレだ」
クラウンは少し考えたあと言った。
「わかりました。ご一緒させていただきます」
「クラウン君が食卓につくなんて何年ぶりかしら」
リオが言った。
「私感激です~」
「ざっと150年ぶりくらいだね、執事長になってからは一回も無かった」
シェリーはそう言った。
「やめた。クラウンをぶっ殺すのは。四大魔王水入らずで食事を続けてくれ」
そう言って近くの給仕メイドに皿を下げさせた。
気勢が削がれた。いくらあのクソクラウンとは言え少々働かせ過ぎている。オレの理想は全員平等だ!!
「人間界にでもいくか」
そう言って転送魔方陣を地面に書いた。円の中に六芒星を書き上に立つ。行き先は・・・
「勇者にでも会いに行くか」
誰もが使える簡単な魔方陣で少量の魔力と行き先の名前が分かれば人間の子供でも魔界と人間界をいったり来たりできる。
「さて、久しぶりに会うなぁ。アイツリンゴが好きだったなぁ。魔樹リンゴ、持ってくか」