雪に歌い舞踊る
白いきつねの少女と仲良くなった少年は、毎日社へと通っては日暮れまで一緒に遊びました
雪が積もる前までは少年の兄からのお下がりだったコマでドチラが長く回していられるかや、竹トンボでドチラが高く遠くに飛ばせたかを競ったりもしました
灰色の雲に被われる天気の良くない日などは社の中に上がり込み、きたる雪に備え2人はカンジキや雪ぞりをこさえて過ごします
やがて雪が降りだし積もり始めると社の周りに雪ウサギや雪だるまを沢山作っては並べて飾ったり、前に作った雪そりで坂道を滑って遊んだりしていました
そして凍える様に寒い日にはカマクラを作って2人で仲良く肩を寄せ合い暖をとり、少年が里で語り部に聞いた伝承を、少女に話して聞かせました
たまには喧嘩もしました
始まりは口喧嘩だったのに、何時しか2人だけの雪合戦に発展しては笑いあい謝りあうのが常でした
そんなある時、何時もと違う遊び方をしたくなった少年は、古く壊れてしまった木桶を持ってきて太鼓にみたて少女の前で叩き鳴らしてみました
すると彼女も楽しくなったのか、彼の叩く音に合わせて歌い踊り始めました
〜冬の天から手紙が届く
チラチラ舞い散る白い雪
季節の機嫌を報せる便り
白い大地は椿の花を
返事の代わりに咲かせてた
凍える天に香りよ届け
雪の舞台で楽しく歌い踊ったら
何時しか顔出す蕗の薹
春も間近と報せてた〜
歌に合わせる様に、少女は社の影を指さしました
少年も太鼓を叩く手を止めて少女の指し示す場所に視線を向けると、其処には歌の示す通りの小さな黄緑色のモノが顔を出しておりました