鴨川旅行でも勝ち組 そのに
スイカを収穫していたら、警察に捕まった。
「これって、履歴書の賞罰欄に書かないといけない?」
「書かなくてもいいと思うヨ~」
近衛まどか先輩が鷹司やよい先輩と一緒に、警察からペンションに帰ってきた。
「近衛先輩、釈放おめでとうございます。おつとめご苦労様でした」
「無罪だってばさ」
既に夏野菜カレーはスタンバイしていたので、昼飯にしながら事情聴取。
なすとピーマンの素揚げと、オクラ、トマト。彩鮮やかだ。
「スイカを取りにいったら、帽子忘れててさ。
まぁ、手短なもので代用しようと思って、スイカで帽子がわりにしたさ~」
帽子を取りに戻った方が早くないか?
「しかし、スイカを被っていただけで不審者扱いするなんて、司法に異見を申し立てる!」
「近衛先輩、普通はスイカを被ってたら、職務質問受けますよ」坂田が突っ込む。
「なぜだ?何を被ろうと、私の勝手だろ?」
「それを変態仮面にも言えますか?」
沈黙が部屋に流れる。坂田、何を言い出すんだ。
「ごめん、私が間違っていた やよいにも迷惑かけた」
近衛先輩が、異常なくらい落ち込んでいた。
「ところで、どうして2人は急に参加したんですか?」
今野が尋ねる。
俺もそれは疑問だった。「前世」では2人は参加していない。
「今世」が変わり始めているのな。
「ふふふ、夏が終わった後、何がある?」
まどか先輩が問い返す。
「秋です」田中の回答はスルーすべき。
「なるほど。文化祭のミスコンですか」
「坂田くんだっけ。君、鋭くていいねぇ」
「それほどでも」
坂田が、いつものように眼鏡を直す。
まどか先輩もそれを真似する。あんた眼鏡かけてないだろ。
「え~と、よくわかんないんだけど、何でミスコンが関係あるの?」
「ミスコンは、ファッションコンテストの一面もあるのさ。
だから、うちのモデルちゃんと打ち合わせに来た」
「つきあわされたんだヨ~」
やよい先輩、ご苦労様です。
そして、俺も付き合わされるのか。
「今年こそ、部長をぎゃふんと言わせてやる」
食事をしながら、今後の事を話し合う。
全員で10人。現在時刻は13時前。
これだけの人手があれば、畑の見回りは、小1時間もあれば終わる。
畑に行ってから海で遊ぶか、海で遊んでから畑に行くか。
議論の結果、まずは畑に行くことになった。
部屋で動きやすい服に着替えて集合。
「なぁ、坂田くん」
「なんですか?近衛先輩」
「あんたの班でさぁ、こう、夏のめくるめく愛と情欲の一夜とか無いの?」
「ふ、無いですね」
即決か。まぁ、坂田のストライクゾーンは顔より、胸。それもHカップ以上。
超高め狙いだから、そんな女子高生そうそういねぇよ。
夏の畑は、野菜の葉っぱが青々と茂る。
いったん、スプリンクラーを止めてから畑に入る。
「今日の夕食は、夏野菜の冷製パスタにでもするかネ~。
なすと、トマトときゅうりと、もうなんでもいいから収穫して」
鷹司先輩の指示で、予め決めておいた畑に散らばる。
目的の一環として、熟れた野菜の収穫がある。
放置すると、腐って虫が湧いたり鳥が餌場にしてしまったりと、ろくなことが無い。
それならいっそ、収穫して食べたり、余ったら隣近所におすそ分けしたほうがいい。
「すいか、すいか」すいかはパスタに入れないでほしい。
小一時間ほど畑の手入れを行うと、大量に夏野菜が取れた。
「う~ん、まぁ男子もいるし、食べきれるでショ」
「よ~し!泳ぎに行くか」「行くか」
一旦、部屋に戻って準備をする。
海岸までは、歩いて10分ほどの距離。
男子は、水着とTシャツで行くらしい。
まぁ、俺も男ならそうする。
だけど、今は女子高生なので、そんな水着ショーをやる気はさらさらない。
「恵、どうする?」
「脱衣所が混みそうだから、水着の上にワンピース来ていく」
俺もそうするかなぁ。
「着替えたぞ~」
アリサといちごが迎えに来た。
予想通り、二人とも水着の上にパーカーを羽織っただけ。
「アリサ、ここから、その恰好で歩くの?」
「うん。そうだけど?」
勇者がいるな。
結局、俺と恵はリゾートワンピを水着の上に来ていくことにした。
さすがに、水着で道路を10分も歩くのは気恥ずかしい。
「お待たせ~」
男子のいでたちは、まぁ、みんな似たようなもの。
選ぶ必要が無いから楽というか、選ぶ楽しみが無いというか。
「お~し、行こうぜ」
普通の道路を水着で歩くと、さすがに人目を引く。
でも、アリサはスタイルというか、競泳選手だけあって筋肉があるから、
それはそれでアリな気がする。
いちごは、あんまり目立っていないからありか。
「佐久間、水着どんなの?」
「ん~、見てのお楽しみってことで」
「楽しみだな」
何故、佐野が楽しみなのかわからんが、褒められておこう。
「そういえば、先輩たちは?」
「なんか、買い出しに行くっていってたぞ」
「手伝った方がよかったかな?」
「いや、手芸部のほうみたいだった」
布地でも買いに行ったか。それなら気にしなくてもいいや。
汗が滲んできた頃、海水浴場が見えてきた。
青い海、白い空、人口密度はそこそこ。
男の時は、人口密度が低い=可愛い女の子が少ない なので少し悲しかったが、
女の身だと、変に注目されないから、少なめの方がありがたいな。
手荷物を、ぼったくり価格のコインロッカーに入れて、
我々8人は海へと向かった。




