水着選びでも勝ち組
自慢じゃないが、俺はトランクス派だ。
トランクスの方が、風通しが良さそうな気がするからだ。
それの何処が自慢だ？という話だが、一度慣れるとブリーフ派には戻れない。
６月の梅雨を過ぎると、ショッピングモールでは水着シーズンが始まる。
様々な形の色とりどりの水着が、買われるのを待っている。
男モノは片隅にちょっとだけあるくらいだ。
俺が男の時には全く気がつかなかった事がある。
女子は、毎年水着を買い替える必要があったのだ！
女性の水着は、一部を除き体に密着しており、特にワンピース型は胴体を包む形状をしている。
そのため、トランクスよりも体形変化に弱く、成長著しい年頃には、
１年間の成長で、水着のサイズが合わなくなり、着ることができなくなるのだ。
毎年水着購入をしているのは、しょうがないんだよ！面倒だけどさ。
本当に、女って物入りだ。選ぶ楽しみが多いという面もあるけどな。
今日は、休日を利用してＢ班女子の皆で水着を買いに来ていた。
「りっかは、アレ行けるんじゃないか？」
アリサが貝殻をモチーフにした、マイクロビキニを指さす。
「アリサの方が似合うと思うよ」
毎年のお約束だ。
今年の夏は、今野の叔父さんがやっている鴨川の海近のペンションに行く予定だ。
叔父さんがヘルニアの手術で１か月ほど入院するのでペンションは夏でも休業中。
だが、もぎたて野菜が売りのペンションなので、畑を管理する人手が必要なのだ。
今野家は親戚一同でかわるがわる手伝いに行くことになったらしい。
俺にとっては、前世でも行ったイベントだ。
男子は全員参加、女子はアリサといちごが参加した。
しかし、アリサは競泳水着、いちごはひらひらふりふり水着。
せっかく男女で行ったというのに、「ありがたみ」が欠片もありゃしない。
ナンパをしようにも、佐野はお堅いし坂田は面食いならぬ胸食い。
今野に至っては、食材の事しか頭になかったので、一人で恥をかいてきた。
色気が無い夏休みだったなぁ。
「あたしは、これにすっかな」
何故アリサは競泳水着にするのかなぁ。一応、海水浴場に行くんだぜ？
手札から『店員』カード発動。競泳水着を墓地送り。
「店員さ～ん、すみません 彼女に合う水着を選んでください
海遊び用の、リゾート向けでお願いします。出来ればビキニとかで」
アリサを店員に押し付ける。
今日はボケ役が多いからいちいち構ってられないんだよ！
「りっかちゃん、これ似合うかな？」
次はいちごだ。前世の通り子供用？水着だ。もしかして、狙って選んでいないか？
「いちご～、もう少し大人っぽいのにしようよ」
「でも、りっかちゃんほどスタイル良くないからさぁ」
「パッド使えば良いじゃない。水着用のもあるよ」
その手があったか！という顔になるいちご。表情が読みやすいな。
そして、俺の胸をちらちら見る。行動に感情がダダ漏れしてるな。
「いや、これは本物だからね。そんな疑惑は無いからね」
こっちも店員さんに押し付ける。次は恵か。
「りっかさん、これどう思う？」
恵が持ちだしてきたのは、白いビキニ。
スク水もどきを予想していたが、斜め上で外れたな。色以外は良い感じだ。
「恵は色白だから、黒の方が良いと思うよ」
「『黒野』だけに、黒の？ぷぷぷ」
そういえばお前の苗字、黒野だったな。
どうでもいいから、さっさと試着して来い。
もう『店員』カードが無いんだよ。シーズンだからみんな忙しいんだ。
さて、俺自身はどうすっかな。
俺はやせ気味だから、淡色がいいって、ほのか先輩が言ってたな。
２，３選択し、試着室で合わせてみる。
このスカイブルーに白いドット模様のワンピースにしておくかな。
ボケ役が多くて突っ込み役が少ないと、忙しくてしょうがない。
アリサも普段は常識人で突っ込み役なのに、ファッションに関しては変な方向にすっ飛ぶからなぁ。
アリサは、ワンピースタイプを選んでいた。さすがにビキニにはしないか。
ハイレグほどではないが切れ込みが強調され、脚を長く見せている。
色はみどり色に、白のパターンチェック。
「いやぁ、なんだか恥ずかしいな。女の子みたいでさ」
お前は女の子だよ？多少、人より身長があるだけで。
身長があるからスタイルもすっきりして、大人っぽいからモデルみたいに見栄えがする。
いちごは、小花柄のビキニにしたらしい。
胸元とショーツの両サイドにリボンがあって可愛らしい。
いつも着替えを見慣れているので、胸のサイズの違和感に気がつくが、初見ならばれないだろう。
「見てみて～ ビキニにしちゃった。アリかな？」
「ありあり」「良く似合ってるよ～」
いちごが赤くなった。ちゃんと装えば、高校生に見えるって。
恵は、色白さを生かした、黒のビキニスタイル。
定番であるが、だからこそ、着こなすのが難しいんだよな。
恵もスタイルは良いし、上にパーカーでも羽織れば良い感じだ。
良かったな、男子共。今回は色気の無さに気が滅入る事はなさそうだぞ。
