手芸部でも勝ち組(feat.アリサ)
自慢じゃないが、あたしは不器用だ。
子供のころから、料理とかはダメなんだよな~。
というか、女の子らしい趣味は、あんまり面白くない。
だから、いつも男の子と泥だらけになって遊び回っていた。
あのころは、男女関係なしに遊べたから楽しかったな。
高校に入学してから1か月。GWも過ぎ、5月に入った。
高校生になったら、あたしにも『彼氏』ができたらいいな~と思っていたけど、
そんな話は無さそうだ。
うちの班の男子は、佐野、坂田、今野、田中、全員、見た目はかっこいい。
部活で、学校のかっこいい男子の話になると、必ず名前が上がる。
あたしに言わせると、もっとワイルドな男が良いんだけどな。
そういえば、今野っちの姉がりっかに告白した って聞いたけど、
女子校出身だと、そういうことが多いのかね?
「今日はりっか遅いねぇ。休みかな?」
GW明け。今日は5月最初の部活日だ。
今週、水泳部はプールの大掃除。
室内プールだから通年使えるが、時折水を抜いて、掃除してから水を入れなおす。
これらは、1年生の仕事になる。今日は、水を抜く日で先輩たちはお休み。
新入生が特権的に、自由にプールを使えるのだ。楽しみ、楽しみ。
あと5分くらいでHRが始まる というところで、りっかが教室に駆け込んできた。
「はぁ はぁ、はぁ。なんとか間に合ったぁ」
「おはよ~。遅かったねぇ 寝坊した?」「珍しいね」
走ってきたせいで、息が荒くなり、頬が火照ってる。
もう暖かかくなってきたから、半そででもいい日和だ。
「寝過ごした~。もう暑いね」
彼女は、上着を脱いで、リボンを取り、ブラウスのボタンを外す。
クラス中の男子の視線が、こっちに集まってるような気がするよ、りっか。
それ以上、ボタンを外しちゃいけない。
あたしの心の声が届いたのか、彼女はボタンを1個だけ外してやめた。
「ちょっと汗っぽいから、制汗スプレーしてくるぅ~」
りっかは立ち上がって、よろよろと手洗いに歩いていく。
彼女は胸があるから、白いブラウスが肌に張り付き、やらしい事になっている。
うっすらとブラが透けていたので、戻ってきたらこっそり注意しておこう。
相変わらずえろい体してるよ。白いブラウスにスカートだけ ってのがいいね。
そう思いつつ、あたりを見回すと、クラスの雰囲気が張りつめていた。
ごめんよ、りっか。男子の視線が痛いから、注意するのはやめておくよ。
休み時間。
「アリサ、今日手芸部の調理班に行って、何かお菓子を作るつもりなんだけど、
部活、何時ごろに終わる?持ってくよ」
「さすがりっか様。今週はプールの大掃除だから、早めに終わるよ。
ちょっとだけ泳いだら栓を抜いちゃうから、5時過ぎには終わるかな」
気遣いがうれしいねぇ。相変わらず、女子力が高い女だ。見習わないとな。
美人でえろい体してて、気立てまでいい って、最高じゃないか。
もう、あたしがもらいたいくらいだ。
「ところで、男子にもあげるの?坂田っちとかさ」
「何で?アリサと恵と、いちご、わたしで4人分だよ」
ちょこっと坂田ネタで揺すってみたけど、ノータイムで返してきた。
坂田っち、お姫様だっこはGJだったけど、脈は無いみたいだよ。
放課後。今日は3時30分に授業が終わる。
水泳部は、部員40人程度のそれなりに大きな部だ。
県大会の出場者も何人もいるそれなりの強豪。体育会系の気風で上下関係には厳しい。
だが、今週はプールの大掃除なので、先輩たちは居ない。
自由に泳げるぞ~。急いで着替えて、プールサイドに行く。
「ひゃほ~」ばちゃーん
「ほひゅ~」べちゃ~ん
先に来ていた同級生が、謎の飛び込みをしていた。
普段そんなことやったら、先輩たちがめちゃめちゃ怒るんだよねぇ。
「やほ~」ぼちゃ~ん
さっそくあたしもとびこんだ。こんな時でしかできないもんな。
みんなで一斉同時飛び込みをしたり、競泳したりして1時間くらい力いっぱい遊んだ。
プールの栓を外し、水を抜く。明日からは大掃除だな~。
すきっ腹を抱えながら、調理室に行ってみる。
途中で恵に会った。
「よう、恵~。調理室?」
「うん、りっかさんに呼ばれたから」
「ところでさ、なんか、焦げくさくない?」
「うん……失敗したのかな」
「そうかもねぇ」
まぁ、時には失敗もあるよ。ちょっと残念だけど、しょうがないさね。
調理室に着くと、りっかといちごを探して聞いてみる。
「なんか、焦げくさいけど、どうしたの?」
「ちょっと、焦げちゃってね。わたし達のは大丈夫だから、安心して」
りっかにもらったスイートポテトは、ちょっと崩れてたけど、美味しかった。
男子が貰ったら、喜ぶんじゃないかね。
部員の中には、綺麗にラッピングしてる女生徒もいた。青春だな~。
そういえば、手芸部の2年生が五重の塔炎上とか言ってたな。
京都で火事でもあったんだろうか?




