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自慢じゃないが、勝ち組です!  作者: めへめへさん
四堂高校編(共学校)
33/39

部活動でも勝ち組

自慢じゃないが、前世の俺はサッカー部に入っていた。


中学時代は野球部だったが、高校ではサッカー部だ。

理由は、坊主頭が嫌になったのと、女子にもてたかったから。

「サッカー部は女子にもてるよ」と先輩に勧誘されたのだ。



4月も終わりになると、部活勧誘が大詰めを迎える。

佐野はサッカー部、坂田はテニス部、今野と田中は帰宅部。

アリサは水泳部、いちごは手芸部、恵は文芸部。

部活勧誘のポスターや立て看板を見ながら歩いていたら、いつの間にかサッカー部の部室前に居た。

前世ではこの部室で3年間を過ごした。強い部では無かったが楽しかったな。

思い出に浸っていたら、背後から声をかけられた。


「ねぇ、君、サッカー部のマネージャ希望?」

振りかえると、懐かしいサッカー部の面々がいた。佐野の姿も見える。

あの子、ミスコンの猫耳ちゃんじゃないか?という囁き声が聞こえた。

「いいえ、ちょっと通りがかっただけです」

「あれ、佐久間」横から、佐野が話しかけてくる。

「やほ~。そういえば、佐野くんはサッカー部だったね」

俺も前世ではこのサッカー部だったけどな。

「佐久間、良かったら、サッカー部のマネージャやってみない?」

「う~ん、どうしようかな。少し考えさせて」

手を振って、そのまま歩きだす。


正直なところ、この部でマネージャーも良いかな という思いもあったんだ。

だけど、冷静になって思い出してみると、女子マネ10人以上いたんだよなぁ。

さっきも、女子マネの半数くらいは、俺の事を超怖い目で見ていたし、

ここは、やめておこう。あばよ、佐野。


とはいえ、部活をやらないのもヒマになる。

「おぉ、佐久間、佐久間。ええとこで会ったわ。ちょいとここに名前書いてな」

「あれ、手芸部の副部長さん。えーと、入部届?」

「うんうん、あねさんのような、ぼんきゅっぼんのえろい体したおなごは貴重やん。

とっとと囲っておこ、思うてな」

「大阪弁でしたっけ?」

「女の子だから、そういう日もあるねん」

似非大阪弁のことはおいといて、手芸部かぁ。俺は手先の器用さには自信がある。

女子が編み物しているのを見て、ちょっとやってみたいな とか思ってたんだよな。

「ふふふ、クリスマスに手編みのマフラーとか、男子は弱いねんで。

夜になったら、あっつあつのねっちょねちょに突入確定やわ」

あんた、本当にえろいな。だが、まぁいいか。

「わかりました。手芸部に入部します」

「あんがとな~。うちは、副部長の2年A組 近衛まどか いうねん

これから、よろしうな、時は金なりや、早速部室行くでぇ」

近衛先輩の行動力はどこから来るんだろうな。


四堂高校手芸部は、小物班、服飾班、調理班、工芸班の4つの班に分かれている。

好きな時に、好きな班で活動できる自由さが売りで、男子の部員も少なくない。

「ねんがんのモデルをてにいれたぞ!」

近衛先輩は、手芸部の部室に入った途端、大声でそう叫んだ。

「さすがだ、まどか。よくやった!」

部室の中には、女生徒数人の輪がいくつかあり、

その中から、頭ひとつ背が高い3年の女生徒がこっちに歩いてくる。

目つきがきついが、スタイルは良い。この人がモデルやればいいのに。

「私は、部長の九条園子だ。よろしくな、猫耳ちゃん。

さて、まどか。私は、お前に選ぶ権利をやろう。

『力ずくで奪われる』と『手っ取り早く奪い取られる』のどっちが良い?」

「部長はん、そない脅しには屈しまへんで。お望みどおり勝負しましょや」

「望むところだ。どっちが多く、お手玉を作れるか勝負だ」

「負けまへんで」

2人は、すごい勢いで手近な机に駆け寄り、お手玉を作り出した。


「りっかちゃん、こっちこっち」

呆然としていた俺を、いちごが女生徒の輪の中に連れて来る。

輪の中心には机があり、その上には、

お手玉の材料と思われる布きれと、針と糸、小豆が山になっておいてあった。

「ごめんね~。うちの部長と副部長、いつもああだから」

「今ね、介護施設に配るお手玉を作ってるんだ。教えるから、やってみない?」

俺は手芸部の部員に教わりながら、お手玉を作ってみる。

なかなか難しい。いびつではあるけど、なんとか一個、形になった。

自分の努力が形で見える ってのは楽しいもんだな。

「できた!でこぼこですけど」

「でこぼこしてたほうが、指先をいろいろ使うことになるから良いんだよ。

みんな、長生きしてくれるといいね」「ね~」

いちごが、手芸部はみんな仲がいい って言ってたけど、本当だな。


「諦めたらどうだ?今なら、週に1時間だけ貸してやってもいいぞ」

「そないなこと言うてられるのも、今のうちや。ひいひい泣かしたるわ」


「調理班から差し入れダヨ~。カロリー控えめのクッキー焼いたヨ~」

「わ~い」「休憩~」「佐久間さんこっちこっち」

「猫耳作ったのわたしなんだ」「すごく可愛かったよね」

「ありがとうございます」

焼きたてのクッキーは、甘さ控えめでおいしかった。


「そんな腕で勝負になるとでも思ってるのか?あぁん?」

「ここからが本番や、俺の右手が真っ赤に燃えるぅ~」

あれは、ほっといて良いんだろうな。


お手玉は5個作れた。でこぼこしてるけど、自分で作ると愛着がわく。

なかなか面白いな、手芸部。今度は、調理班か工芸班を見に行くか。


「はははは、お前はこの九条園子にとってのモンキーなんだよ まどかぁぁぁ!」

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