ミスコンでも勝ち組 (feat.佐野)
自慢じゃないが、俺は恋愛には全力投球だ。
小学校の頃からバレンタインデーには女子からチョコレートを貰っていた。
中学ではラブレターも貰った。だが、決まって断ってきた。
恋愛は真面目に行きたいからな。
「佐久間律花です。
わたしも黒野さんと同じ三つ葉女子から来ました。よろしくお願いします」
佐久間と初めて出会った時、美人だな と思った。
これから3年同じ班なら、美人のほうが良いからうれしかった。
昔から友人だったように、彼女とはウマがあい、話していて楽しかった。
転機が訪れたのは、親睦旅行。
「うきゃぁぁぁ 怖い怖い怖い。アリサ、助けて~~~」
俺は、とっさに手を伸ばす!彼女は力いっぱい俺に抱きついてきた。
最初に「何て、軽いんだろう」と思った。
「何て、柔らかいんだろう」「何て、良い匂いなんだろう」と思った。
よほど怖かったのか彼女は少し涙目で頬が紅く上気し、とても綺麗だった。
ずっと、彼女を見ていたかったが、さすがに浴衣がはだけているので、
無理やり視線を外す。
「あー、ごめんな、俺が誘ったから」
「ううん、大丈夫。助けてくれてありがとう」
浴衣を整えなおした彼女は、俺を快く許してくれた。
良かった、怒ってなかった。
「いやぁ、楽しかったナァ。田中くんも、エンペラーやるよネ?」
いや、怒っていた。まぁ、矛先が俺で無いからいいとしよう。
ありがとう、田中。そして、さようなら、田中。
その後、田中は、乗馬マシンエンペラーモードに、えんえん掘られ続けた。
奴の口から「うふふ、うふふふ、はぁぁん」という、ヤバそうな声が漏れ出た時、みんなで佐久間を止めた。
これ以上は、田中が帰ってこれなくなる気がしたからだ。
親睦旅行から戻って数日後、今度はミスコンがある。
この学校、やけに行事が多いな。
旅行前は、坂田や田中に対して「面倒事おしつけられたな」としか思えなかったけど、今は少しうらやましい。彼女と一緒に、壇上に登れるからだ。
『猫耳メイド』でも良いか?と言われるときついものがあるがな。
坂田は良く似合っていたし、佐久間は可愛かった。
しかし、田中は何やってんだ?ハイヒールでこけて捻挫退場って、
おいしいところを持っていく男だな。
佐久間と坂田は、コスプレしたまま、校舎を1周する。
『執事服』と『猫耳メイド』の服のまま。
坂田が佐久間を抱き上げたところで、俺は逃げた。
坂田は俺の親友だ。この高校で、最も仲の良い男だ。
大の巨乳好き。Eカップ未満は幼女と言い切るやつだ。
彼女にするなら、Hカップは欲しい といつも言っていた。
佐久間はそこまで胸は無いと思っていたから、あまり考えないでいたが、
ヤツは良い男だもんな。お似合いだよな。
2人が校舎を一周し着替え終わる頃を見計らい俺は臨時更衣室に向かった。
なんとなく、佐久間と坂田を二人きりにしたくなかったからだ。
でも、彼らに会ったら、何て言えば良いんだろうな。
「お似合いだよ」とでもいえば良いのか?
なんとなく煮え切らないまま、校舎を歩いていると、向こうから坂田がやってきた。
坂田は、1人きりだった。佐久間はそばに居ない。
少し、ほっとした。
「よぉ、坂田。優勝おめでとう」
「ありがとう。ところで、教室はどうだ?」
「お前らを待ってるよ。ところで、佐久間は?」
「あぁ。まだ更衣室にいるぞ」
外はもう夕方だ。夕陽の赤い色が、坂田の眼鏡に反射してすこしまぶしい。
「あのさ、坂田。お前、佐久間さんのことどう思う?」
「俺の趣味は知ってるだろ?Hカップに満たない女に興味は無い」
変態じみた事を、堂々と話すよな、こいつ。
聞いてるこっちが恥ずかしくなる。でも、心が軽くなった気がした。
「そっか。そっかそっか」
「お前、佐久間さんに気があるのか?」
「どうなんだろう 今はまだ、よくわからない」
「ま、お前を応援してるよ。でも育ったらちょっかい出すかもしれんぞ?」
「その時は受けて立つさ」
「ところで、優勝祝いに、なんか奢れ」
「ガリガリ君でいいか?」
「コーラが良いな」
恋か友情か バカバカしい二者選択をする必要なんか無かったんだな。
総取りを目指すぜ!




