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自慢じゃないが、勝ち組です!  作者: めへめへさん
三つ葉女子中学生編
22/39

文化祭でも勝ち組

自慢じゃないが、俺は大根役者だ。


演技をすると棒読みになるし、同じ側の手足をだしてしまう。

役柄を演じるのは、緊張するんだよな。



秋になると、文化祭が行われる。

文化祭のあと、生徒会の選挙があるので、文化祭の出し物のスケジュール調整や

出店の場所設定が今期生徒会役員の最後の仕事になる。


文化祭は、高等部と中等部が同時に行われるため、高等部3年と中等部1年

高等部2年と中等部2年、高等部1年と中等部3年がペアになって出し物が行われる。

我々、中等部1年A組は、高等部3年A組、ほのか先輩のクラスと一緒に、演劇を行う事になった。

題目は、恵の「スOーウォーズ」もどきだ。意外と文芸部で人気なんだな。

さすがに、話はかなり違っていたが。


ある平和な国があった。その国で、悪い大臣のクーデターが起こり、王と王女は殺され、お姫様だけが逃げのびる。

お姫様に一目ぼれし、お姫様の逃亡を手助けする大臣の子供の「騎士」は、

自分が大臣の息子であることを隠して逃避行を助ける。

お姫様が国を取り返した時、秘密を暴かれ、どこかへ去っていく というもの。


配役だが、演劇部は演劇部で出し物があるし、他の部活も出店がある。

帰宅部の中から選別され、ほのか先輩が騎士役、俺がお姫様役となった。


その日から、練習が始まった。

「あ~、台本覚えるのがキツイ。ほのか先輩はよく覚えられますねぇ」

「生徒会長って、スピーチすることが多いからね。だいたいの流れだけ覚えればあとはアドリブ」


ある日の放課後。

生徒会活動が終わってから、ほのか先輩と台本の読み合わせを行っていた。

ほのか先輩は、これが最後の文化祭になるんだよな。

絶対に成功させよう と思うので、ついつい熱が入った。もうかなり遅い時間だ。

「もうこんな時間ですね。すみません、遅くまで付き合ってもらっちゃって」

「ううん、わたしも練習になったし、楽しかったよ」

「でも、まだつっかえるから、もっと努力しなきゃ」

ふと、会話が途切れる。もう暗いので、校舎内は静かだ………


「りっちゃん、努力って何だと思う?」

窓の外を見ながら、ほのか先輩が問いかける。

「将来の結果のために、今、頑張ること ですかね?」

「そうだね。

でも、わたしは、努力が結果だけとは思わないんだ。

わたし達は、女優になりたい とか 脚本家になりたい とか

そういう結果のためだけに、努力しているわけじゃないよね。


結果なんて伴わなくたって、『努力した』ってことだけで、

楽しいんだ、凄いんだ って事。それをみんなに知ってほしい。

わたしは、『結果なんて無くたって、努力を誇りに思って良いんだよ』 

ってみんなに教えてあげられるような、教師になりたいんだ」

はじめて、ほのか先輩の夢をきいたなぁ。距離が近づいた気がした。

「ほのか先輩ならきっとなれますよ」



そして、文化祭当日。

文化祭は2日間にわたって行われる。劇は午前と午後に1回ずつ。

合計4回上演される。

上演時間以外は余裕があるので、ほのか先輩と一緒に、出店を回ったり

演劇部の劇を見たり、軽音部のデスメタルを聞いたり、文化祭を満喫した。

まるで、デートですね と言ったら、ほのか先輩はさびしそうに笑っていた。


そして、最終日の午後の上演。

3回もの本番を超えたおかげで、皆が舞台になれてきた。

最終回の劇はクライマックスだ。


騎士(ほのかせんぱい)が、秘密を暴かれ、お姫様(おれ)のもとから去るシーン。

「姫さま、私は……、わたしは、あなたが大好きです。

いつも、いつまでも、一緒にいたいと思っています。

でも、それは叶わぬ願いです。」

(あれ、ほのか先輩、泣いてる?)

彼女の眼もとに、少しだけ、光るものが見える。

「もう、わたしの居場所は、あなたのそばでは無いのです

さようなら、姫さま。ずっと、ずっと、大好きでした。」

騎士は、お姫様を残して、歩き去って行く。

お姫様は、騎士を追うこともできず、幕が閉じてゆく。


文化祭は盛況のうちに終わった。

カーテンコールで見たほのか先輩には、涙の跡は無かった。

俺は、見間違いだった と思う事にした。


翌週、生徒会選挙が行われ、新しい生徒会役員が決まった。

そして、ほのか先輩は生徒会長で無くなり、生徒会室には来なくなった。

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