伊豆旅行でも勝ち組(feat.恵)
自慢じゃないが、私には友達がいない。
小さな頃から、他人には見えないモノが見えた。
それは、誰かの頭の上や肩の上、背後。ぼんやりした光の球が見えた。
小学校に入る頃になると、動物の姿に見えたりもした。
でも、誰もそれを信じなかった。
信じるふりをしながら、裏では私を笑いものにする子もいた。
それからは、誰にも話すのをやめた。
私立の中学に行ったのも、小学校の同級生と別れたかったから。
そこで初めて、信じてくれる人に出会った。
今日は、彼女たちと旅行に行く日。
友達と旅行なんてはじめて。すごく楽しみ。
「恵、服装かぶったねぇ。でも、夏に黒は熱くない?」
私は、黒のミニワンピに7分丈のレギンス。
りっかさんは、薄緑のミニワンピに7分丈のレギンス。
「どうせ車内だから。それに、向こうに着いたら水着でしょ?」
「そういえば、そうか。」「あ、来たみたいだよ~」
バスが到着する。
「みんな おはよ~」
窓から手を振る優衣ちゃん。優衣ちゃんちは、大家族なのでバスで行くらしい。
まるで、修学旅行みたいだ・・・・
バスに乗ると、男の子ばっかり。視線が痛いなぁ。
「いやぁ、ほんと助かったよ~。みんなが来てくれて。
もう、このまま男の子になっちゃうんじゃないか って勢いだったからね。」
「よしよし。じゃ、志野ちゃんから美少女エキス吸っていいからね」
「わ~い すりすりちゅうちゅう」「や~め~て~」
優衣ちゃんと志野ちゃんは仲がいいなぁ。ん?優衣ちゃんと目があった。
「恵ちゃんからも吸っていい?」
「ダメダメ、私吸っても美味しくないよ?」
「じゃ、たくさん食べよう。そしたら、美味しくなれるよ」
そういうものなのでしょうか。優衣ちゃんは、おにぎりを2個もくれました。
そんな童話がありましたね。
伊豆の海に着きました。恥ずかしながら、実は海は初めてなのです。
そう言ったら、みんな驚いていたっけ。
こんなに青いんだねぇ。広いんだねぇ。向こう側が見えない。
お昼ごはんを済ませて、水着に着替える。
私は日焼けに弱いから、念入りに日焼け止めを塗る。
背中は誰かに塗ってもらわないといけないんだけど、りっかさんと優衣ちゃんは目付きがおかしいので、志野ちゃんにお願いして、塗りあいっこした。
りっかさんと優衣ちゃんは、レスリングの試合みたいになってた。
「お~い、ビーチバレーやろうぜ」
浜辺にでた途端、いきなり声をかけられた。優衣ちゃんのお兄ちゃんとその友達。
私は、茶髪ぎみの背の高い人とペア。
「よっし、当たり!行くぞ、戸田ぁ!と、おまけの妹」
「おまけ言うなぁ!負けないよ、恵ちゃん」
ペアの人は、すごく運動神経が良くて、どんな球でもレシーブしてくれる。
私はその球をトスして、彼がアタック!
でも、兄妹ペアはすごく息があっていて、頑張ったんだけど、負けちゃった。
次は、りっかさんペアVS志野ちゃんペアの試合。
「ごめんなさい、私、あんまり上手くなくて」
「俺は楽しかったぜ?楽しめればそれでいいじゃん。海行って砂落としてくるわ」
彼は、スライディングレシーブを何回もしたので、砂まみれ。
「あ、私も行ってもいいですか?前から、海に入ってみたかったんです」
「え?恵ちゃん、もしかして、海は初めて?」
「はい、実はそうなんです」
「そっか~。行こう行こう」
手を掴んで引っ張られた。男の子と手を繋ぐなんて、久しぶりだなぁ。
海は、ちょっと冷たかった。
「あ~、気持ちいい。もうちっと深いところまで行こうぜ?」
腰の深さまで、引っ張られた。ビーチバレーの火照った体には気持ちいい。
そう思っていたら、波にさらわれて転んじゃった。鼻に海水が入ってくるよう。
「うわわ、うぷ~~」「大丈夫か?」
彼に助けてもらった。うん、良い人だ。
「砂も落ちたし、試合見に戻るか」「はい」
背後霊さんほどの、どストライクではないけど、ちょっとうれしかった。
りっかさんと志野さんの試合は、何故か4対4の様相を呈していた。
何を言ってるのかわからないと思うけど、私も何が起こったのかわからなかった。
ビーチバレーに、「外野」なんてポジションあったっけ??
私のペアの彼は、早速謎ルールのゲームに乱入。私も一緒に引っ張られて乱入。
何をどうすれば勝てるのか、もうわからないよぉ。
夕方。夕食の準備。わたしとりっかさんは、お米を研ぐ係だ。
5キロのコメ袋。これを全部研ぐんだよね?おかしいよ、おかしいよ、これ。
りっかさんが途中で逃げ出したので、私が残りをやる羽目になった。
後で仕返ししなきゃ。カメラ持ってきたから、寝顔を撮ってばらまこう。
2日目はバナナ・ワニ園。
ワニは苦手だな と思ってたけど、熱帯植物園なんだね。
原色のお花がたくさんあって綺麗だった。フルーツパーラーも美味しかった。
帰りがけに、漁港のそばの魚市場で夕食のお買いもの。
といっても、既に「予約」をしていたようで、受け取るだけ。
「なんか、食べたいものがあったら言ってね。」
とおじさんに言われたけど、魚がいっぱいで、どれがおいしいのかわからないや。
まるで、水族館みたい。そう思いながら、市場をひとまわり。
優衣ちゃんがお魚の顔真似。すごく似ていて、つぼに入っちゃった。
夕ご飯は、お刺身。お刺身大好き。新鮮だからさらにおいしそう。
私が乗れそうなくらいの、大きな大きな船にお刺身を盛り付けていく。
これ、そこまでする必要あるのかな?普通のお皿でいいのでは?ちょっと疑問。
りっかさんが配膳していたので手伝いに行ったら、
「これぞ、日本海海戦!バルチック艦隊がこう、連合艦隊がこっちからこう」
と、わけのわからないことを言っていたので、きちんと並べなおしておいた。
ミカサが、ミカサが と叫んでいたが、一体何だったんだろう?
3日目の朝、ついにりっかさんの寝顔を写真に撮れるチャンスが訪れた。
彼女よりも先に起床できた。が、カメラを探しているうちに起きられてしまった。
しょうがないから、優衣ちゃんと志野ちゃんの寝顔を撮った。
朝食後、海で遊びに行く。
優衣ちゃんは、すごい勢いで海に突進し、そのまま泳ぎ始めた。
足の届かないところで泳げるのはすごいよね。
私は志野ちゃんと波打ち際で波遊び。足の下で、砂が溶けて行く。
その後、ビーチマットを持ってきたりっかさんも加わって、海を満喫しました。
帰り道。お土産屋さんで、とっても可愛いペンダントを見つけた。
ピンク色の巻貝のネックレス。白い二枚貝のネックレスとペアで並んでいた。
欲しいけど、2個も使わないしなぁ。ふと顔を上げると、りっかさんが見えた。
私は、初めてできたともだちに、旅行のお土産を渡した。
りっかさんは、怪訝な顔をしていたけど、ペンダントを着けてくれた。
今年の夏休みは、最高!




