伊豆旅行でも勝ち組 そのいち
自慢じゃないが、俺は世界をとびまわる男だ。
昨日はウォール街、今日はロス 明日は東京、来週からはドバイにアムステルダム
当然、「枕が変わると眠れない」なんて事は無く、何処でも安眠できる体質だ。
その俺が、今回は伊豆に行くことになった。
駅で、志野ちゃんと恵と一緒に、バスが来るのを待つ。
志野ちゃんは薄緑のマキシワンピース、恵は黒のミニワンピに7分丈のレギンス。
もう、すっかり夏だねぇ。俺は恵とかぶったよ。ちくしょう。
知り合いの車に乗る時は、相手の車が解らないと迷うもんだが、今回は心配無い。
さっきから、この道はバスなんて1本も走っていないから、バスがきたらソレで決まりだ。
30人は乗れそうなバスがやってきて、自分の前に止まる。
「みんな おはよ~」
窓から手を振る優衣ちゃん。ちょっと恥ずかしいなぁ。
優衣ちゃんの叔父さんが、バスの横面をぱっくり開け、荷物を入れてくれた。
ありがとうございます。 ますます、修学旅行じみてきたな・・・
バスに入ると、20人くらいのひと、人、ヒト。
「こんにちわ。お世話になりまーす」
「よろしくお願いしまーす」
「こっちこっち~」
バスの真ん中を通って、優衣ちゃんのところまで行って座る。
いやぁ、わかってはいたけどさ、ほんとに男ばっかりだね?
「いやぁ、ほんと助かったよ~。みんなが来てくれて。
もう、このまま男の子になっちゃうんじゃないか って勢いだったからね。」
「よしよし。じゃ、志野ちゃんから美少女エキス吸っていいからね」
「わ~い すりすりちゅうちゅう」「や~め~て~」
平常運転である。周りの、思春期の男子どもには地獄だろうがな。
「これからの予定を説明するぞ。これから、高速に乗って10時過ぎに一度休憩。
そこから一気に伊豆まで行って、向こうについてからお昼ご飯。
それから自由行動。夕食は庭先で海鮮バーベキューだから、腹減らすように」
「バーベキューだ!」「はーい」「泳ぐぞ~」
いやぁ、若いね。そして、騒々しくて元気だね。
男のときは、あまり気にしなかったけど、「日焼け」は女子には大敵だから、
ちゃんとUVケアしないといけないんだよな。
「じゃ、これからおにぎりを配るからな。各自3個までだぞ~」
重箱に入ったおにぎりを持って、叔父さんが席を回っているようだ。
これは、食べさせとけば黙る ってやつだ。
「着いた~~海だ~~~」
「はいはい、各自、部屋に荷物を置いたら食堂に集合。
部屋割は、事前に決めたとおり。」
バスから降りた人数は22名。我々含め、「お客さん」が10人もいるわけだ。
部屋割は、私たち女子4人に10畳と6畳の続きの和室二間を使わせてくれた。
食堂に行く前に、優衣ちゃんに案内されて、お祖母ちゃんの書斎に行く。
「おや、優衣。よく来たねぇ。お友達もいらっしゃい」
「これ、みんなからお祖母ちゃんへのお土産だよ」
「お世話になります」「よろしくお願いします」
「ほうほう、手ぶらで来る野郎どもとは大違いだね。のんびりして行きな」
いやぁ、緊張した。手に汗が滲んできたよ。食堂につくと、そこは戦場だった!
仕出しのお弁当が山と積まれ、みんなが各々手に取っていく。
3個まで持って行ってもいいらしい って、おにぎりじゃないんだからさぁ。
だが、食べざかりの男子14人の食欲の前に、どんどん無くなる弁当箱。
「早くいこう。無くなっちゃうよ」あわてて、優衣ちゃんが確保しに向かう。
修学旅行 というより、部活の合宿だなぁ、こりゃ。
昼食を食べて、部屋で一休みしたら、泳ぎに行くことにした。
この豪邸、目の前がすぐ海水浴場。
男子の一部は、即向かったらしい。海でリバースしてないといいけど。
海に行くので、日焼け止めを念入りに。髪の毛にもしゅしゅ~とね。
いろいろあって1時間はかかったけど、無事に水着に着替えて海水浴場へ向かう。
「お~い、ビーチバレーやろうぜ」
浜辺にでた途端、いきなりナンパされた。
といっても、優衣ちゃんのお兄ちゃんとその友達だけどね。
男女ペア2人で総当たり戦。お約束のように、兄妹ペアになってたけどね。
兄妹ペアは単独最強だったけど、他の3組は実力伯仲で勝負が白熱していき、
さらに、乱入に乱入を重ね、決着がついた頃には結構な時間になっていた。
いやぁ、楽しかったけど、海入ってないよね?
今夜の夕食は海鮮バーベキュー。男子は場所の準備、女子は食材の準備。
えびは殻をむいて、魚は切り身。野菜はきれいに洗って、食べやすい大きさに切る。
優衣ちゃん上手いなぁ。志野ちゃんもなかなか。美少女が料理って絵になるよね。
でもさ、彼女達の横にある、1升炊き炊飯器3台が、ぶち壊しにしているんだよ!
俺と恵は米をとぐ係だが、3台目になると、もう面倒くさくなってきた。
総勢30人弱。その大半が食べざかりの男子だから3升炊くんだ。
漁港から直売してきた海鮮類は最高のおいしさで。
降るような星空の下、わいわいがやがやと食事をして、
旅行1日目は終わったのだった。
温泉シーンはカット。
4人とも日焼けにお湯が沁みて、何もできずに入って洗って出ただけだから。
 




