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自慢じゃないが、勝ち組です!  作者: めへめへさん
三つ葉女子中学生編
16/39

体育祭でも勝ち組

自慢じゃないが、俺はスポーツにはうるさい。


やる方もそこそこだが、見る方もだ。

野球など、ビールがあればいくらでも野次れる。

スーパーボウルでは、ハーフタイムのチアガールにも声をかける。

そんな俺が、今は女子校の体育祭に来ていた。出場側として。


体育祭は、中高同時に開催される。

とはいっても、中等部と高等部は、グラウンドのはしとはしで

同時に進行していくので、あまり接点は無い。

だが、入場の許容量というものは存在するので、入場制限がかかる。

毎年、入場券は、プラチナチケットと化していた。いろんな意味で。


校長の話、選手宣誓とプログラムは進んでいく、といっても、やることは行進するぐらい。


「次は、中等部1年、二人三脚借り物競走です。選手は所定の位置に集合してください。」

さっそく出番。

「いちご、バナナ、それともキウィ・・・ふふ燃えるよ!」

クレープごちバトルに燃える優衣ちゃんと、引きずられがちな志野ちゃんのペア。

「恵、私たちも頑張るよ!」

「はい、背後霊(みぎうえ)さん、見ててください。恵は頑張ります。

もし、もし、勝てたら、私、勇気を出して告白します!」

あぁ、だから二人三脚したかったのね・・・・右側で。

俺の背後霊は、前世での俺の形をしていて、いつも物憂げに周りを見ているらしい。

気にはなるが、恵にしか見えず、喋る事もないので、気にしない事にしている。

そして、恵。俺を無視すんな。


二人三脚借り物競走とは、二人三脚で借り物競走を行う、過酷な競技だ。

2か所のチェックポイントには体育委員が立っており、彼らの持つ箱の中には

高等部3年生からの、心づくしの「借り物(ネタ)」達が取りだされるのを待っている。


我々の出番がやってきた。

「よーい、ドン!」

恵と俺のペアがトップ。少し遅れて、優衣&志野ペアと他3組が並走する。

まずは、一つ目のチェックポイント。

「はーい、好きなのえらんでネ」

体育委員の先輩が、箱を差し出してくる。


俺が早速、中から一枚の紙を取り出す。

『ギャルのパンティ』

ちょっと待て、それはこの衆人環視の中で脱げと?

それは困る。トイレにでも行って・・・それも嫌だ。恵に脱がせればいいのか。

「すみません、下ネタなのでチェンジで。」

恵が紙を先輩に渡す。

「これはしょうがないよね。はい、もう一枚どうぞ。」

借り物競走といっても、下ネタや、車、ブランド品といった借りにくいものは変更が

可能なルールになっている。脱いだぱんつ片手にゴールしてもうれしく無いものな。

今度は恵が紙を取り出す。


『江口先生』

胸元を嫌らしい目で見てくる、脂ぎったエロ教務主任か。

まぁ、教員テントに行けば居るだろ。そう思って走り出そうとしたら、

「すみません、下ネタなのでチェンジで。」

恵が紙を先輩に渡す。少しの間、沈黙があり・・・・

「これはしょうがないよね。はい、もう一枚どうぞ。」

OKがでた。下ネタ扱いで良いんだ、これ。


『眼球』

は?目をこすってもう一度見直すが、眼球だった。

そうか!理科準備室の人体模型。あれは確か眼球が取り出せたはず。

「はい、眼球です。」恵が自分の目を指差しながら、目をぱちぱちしている。

「はい、OKですよ~」

ナイス機転だ。「見せる」事ができればOKだったな。


少し手間取ったせいで、優衣&志野ペアには抜かされたが、まだ追いつける。

二人三脚でよろよろしながら、次のチェックポイントに着いた。

今度の体育委員は、中等部の2年生、小柄で眼鏡をかけた気弱そうな女生徒。

「借り物を引いてくださ~い」


『真心のこもった、手作りのおべんとう(はぁと』

ほのか先輩だな、これ。筆跡でわかるぞ。これはチャンスだ。

もし、借り物競走が午後であったならば。苦しい借り物であったろう。食べちゃうもんな。

だが、今はまだ午前中。早弁しているバカを除けば、誰でも所持しているはずのモノだ。

手作り弁当などいくらでも借りられるだろう・・・・・


「ん?何してるの?」

恵が唐突にグラウンドに座り込み、土団子を作り始めた。

2個、3個と作り、手の上に乗せて体育委員の眼前につきだす。

「鬼嫁の真心がこもった、意地悪な姑に食べさせる手作りのおべんとう(はぁと です。」

「え?え、え?でも、食べられなきゃダメじゃないかな」

「意地悪な姑なら食べられます。いえ、無理にでも口にねじ込みます。

先輩は、意地悪な姑ですか?ひとつ食べて(ねじこんで)みますか?」

「・・・はい、良いです」

OKがでた。ちょっと後ろ暗いような気持ちがあるが、気のせいだろう。


「急ぎましょう、このままトップです。」

てづくり弁当を投げ捨てながら、恵が気合を入れる。

投げ捨てられ、ぼろぼろになった真心を踏みにじりながら、我々は走り出した。

そして、見事、二人三脚借り物競走で1等になったのだった。レーンから出ること無く。

そういえば、何一つ「借り」ていないな。


「負けたぁ~」

我々がゴールしてしばらくすると、優衣ちゃんと志野ちゃんがやってきた。

2等のようだ。

「借り物が、簡単だったからね。」恵が返す。

「わたし達は、『靴下』と『眼鏡』でした。眼鏡でちょっと躓いちゃったかな」

「こっちは、『眼球』と『お弁当』」

「良く借りれたね?」

「へへ・・まぁ、ね」

そして、我々の体育祭は終わりを告げたのだった。


後日。

「りっちゃん、借り物何だった?」

「あ、ほのか先輩。

『眼球』と『真心のこもった、手作りのおべんとう(はぁと』でした。」

「あ、わたしの引いてくれたんだ~。運命だねぇ。で、どんなお弁当だったの?」

「え、えーと、ゴマ塩のおにぎりでした。」

本当のところは、答える事が出来ませんでした。


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