体育祭準備でも勝ち組
今日から6月になった。
俺の朝は、1杯のブラックコーヒーと日本経済新聞から始まる。
(グフフフフ、記憶通り、先週の新製品発表でここの株価は急上昇だぜ。
そろそろ売り抜けどきだな。そういえば、ここの製薬会社は夏にストップ高になってたな。
前世では、ライバル会社に投資してたせいで、大損したが、今度はやらせない!ゲヘヘヘ)
「未来の記憶」というインサイダー取引のおかげで、俺の資産は増える一方だった。
制服が夏服に変わる。
冬服は紺色の地味なものだったが、夏服は白を基調として緋色のアクセント。
スカートは、緋色の地に、白のストライプが2本。
布地が薄手なので、色めの強い下着だと透けてしまうのが難点だが、
夏服だけなら「かわいい制服ベスト10」入りするだけはあり、とても人気が高い。
俺も前世では、この制服の女の子を目で追った経験がある。
まだ肌寒いので学校指定の灰色ロングカーディガンを羽織って、家を出る。
駅につくまでも、駅で電車を待つ時も、電車の中でも、冬服の時よりも視線を感じる。
「三つ葉の夏服はかわいいよね~」という声がちらほら聞こえてくる。
これから、毎年こうなんだろうなぁ。
学校につくと、優衣ちゃんと志野ちゃん、恵が3人で、何やら話していた。
「おはよ~。何話してたの?」
「オハヨ~。」「おはようございます。」「おはよ。」
「スカート丈について。やっぱり、膝上20センチかなと。」
優衣ちゃんは、どうして脚を見せたがるのかな。
「それは、優衣ちゃんが脚綺麗だからだよぉ。わたしは肌が弱いから見せられない。」
志野ちゃんは、見せない派だもんな。細いのにもったいない。
朝のホームルームの時間。
「今月は体育祭があるぞ~。怪我をしないよう頑張るように。」
唐突に、体育祭が始まることになった。
今年の中等部1年生は、「400mリレー」「二人三脚借り物競争」「玉入れ」「騎馬戦」
「障害物競争」「応援合戦」のいずれかに出なければならない。
あとは、全校参加で、謎のダンスを行うくらい。
放課後のホームルームで出場希望を取るので、放課後までに決めておかねばならない。
「400mリレーを希望する!」
あぁ、優衣ちゃんはそうだよね。陸上部だもんね。聞かなくてもわかる。
「でもさ、陸上部はリレー禁止だよね?」
「あ、そうだっけ。じゃ、みんなで騎馬戦!」
「いやぁ、それはちょっと止めたい・・・」
部活動勧誘会の下見で出会った、空手部主将、バリトンボイスの女子高生を思い出す。
(三つ葉女子のラオウだよなぁ。)
「りっか・・、私と一緒に、借り物競争にでない?」
「いいけど、何で?」
恵の方からふってくるとは、ちょっと意外だ。
「借り物には自信があるから・・・」
どういう自信なのか良くわからないが、そうしよう。
優衣ちゃんと志野ちゃんも対抗してペアで借り物競争希望になることにして、
放課後のホールルームに臨むことにした。
ほのか先輩からの前情報では、例年「騎馬戦」がもっとも人気が無く、
あぶれた希望者が流れていく形になっている。騎馬戦は避けたいな。
今日の授業は、1、2時限目は体育。
体育祭が迫った今、毎度のように体育祭の練習なので、いまひとつ気が乗らない。
体操服に着替えて、校庭に出る。
ブルマというのは、いったい、どんな紳士が考え出したものなんだろうか。
ジャージで良いと思うんだ。脚全露出なので寒いうえに恥ずかしい。
女子校だから、まだましだが・・・・。将来、廃止されるわけだ。
そして、迎えた、放課後のホームルーム。
ここが決戦場。ここで、体育祭で出るものが決まる。
一番人気は、「玉入れ」いちばん、適当でいけるもんな。
二番人気が「障害物競争」次いで「二人三脚借り物競走」となる。
波乱の幕開けが始まった。
「応援合戦」に坂巻さんが立候補したのだ。昔ながらの「学ラン」コスプレが似合いそうだ。
彼女の友人も一緒に立候補したため、2番不人気の「応援合戦」は終了。
こんな積極的な子じゃなかったはずだけどなぁ。これも豆腐効果か。
あのカウンセラー、ただの、イカレタ豆腐女子じゃなかったのかもしれん。
そして、一番不人気の「騎馬戦」は、今年から無くなったのだ!
まぁ、お嬢様学校で「騎馬戦」は如何なものか という声が高くなり、急遽無くなったそうな。
穴埋めが、チア部の出し物になるあたり、人の欲望が見え隠れするが、
スーパーボウルと思えば、気にはならない。
無事、希望どおり、借り物競走になれたのだ。
「へぇ、りっちゃん、借り物競走するんだ。
じゃ、「手作りお弁当」とか入れておこうかな。」
ほのか先輩が言うには、例年、3年生が「借り物」ネタを作るらしい。
さすがに「下ネタ」は禁止であるが、一体何が出てくるものやら。




