なんてことはない僕の非日常
これは、いつかの僕のシナリオ
なんてことはない非日常のお話
ある日ある日、ある所に女の子が居ました。
彼女には小さくて可愛らしい妹が居ました。
彼女には美人な母親が居ました。
彼女達は、
少なからず日常を幸せだと感じていました。
けれど、女の子は非日常の人間だったのです。
ある日、彼女は夢を見ました。
鶏が二匹逃げて、妹を抱き締めながら、雨の中で地べたに転がっているものを見つめている夢です。
彼女はなんのことか、さっぱりわかりませんでした。
彼女は、ある時夜中抜け出して自転車で散歩に出掛けました。
帰りに、コンビニによりました。
そんなときに、運悪く、がらの悪い男に声を掛けられました。
彼女の父親です。
彼女は、彼のことをゴミクズでどうしようもないろくでなしだと思っていました。
実際にそうであったから仕方ありません。
彼女は店を出て、自転車を押しながら話をしました。
何を話していたかわかりませんが、下種な男の言う事です。
彼女を怒らせる何かを言ったのでしょう。
例えば、母親を侮辱するような言葉 でしょうか。
仮にも彼は父親で、その所為か二人の娘のことは愛していたようです。
けれど、父親らしいことは何一つせず、自分の伴侶への暴力ばかり。
彼女には、あまりにも耐え難かったのかと思われます。
自分をバカにされるよりも、人を貶される方が堪える様な人種の彼女だったのです。
そして彼女は後ろから、父親を蹴りました。
父親は地面に突っ伏すまではいかないものの膝立ちになりました。
彼女との身長差を埋めるにはそれで十分でした。
彼女はなにも考えていませんでした。
ただただ虚ろに、父親の後ろ首に手を力一杯突き付けただけです。
首の後ろに、穴が開くくらい窪みが出来ました。
男はなにも出来ず苦しそうにしているだけです。
思い切り手刀の形で力を加えますが、皮膚は何故か千切れず
到頭彼女は骨をその手で掴みました。
骨にヒビでも入ったのか、男は暴れだします。
近くのゴミ捨て場や、
鳥小屋にぶつかっては様々な物を破壊しました。
その時、祖父に連れられた彼女の妹が現場に鉢合わせました。
近隣の方々も野次馬として集まっていました。
父親は、周りには目も呉れず娘たちの元へ足を運びます。
彼女は、妹だけは守ろうと、ぎゅっと抱き締めました。
けれど、降ってきたのは生暖かい温もりでした。
気味の悪い謝罪でした。
彼女は、父親が嫌いでした。
けれど、父親は、彼女にとって父親でした。
死に際に、謝罪の言葉を聞いた彼女はただただ
その温かさを 気持ち悪い と思いました。
けれど彼女は呟きました。
妹をぎゅっと抱き締めながら、呟きました。
父親だけに聞こえるように呟きました。
ごめんなさい と、ただ一言。
父親は、二人の娘の頭を撫でました。
彼女は何故か目を擦っていました。
何故かポロポロと泣いていました。
町の人は、その男がろくでなしであることを知っていたので
みんなで隠蔽工作をしました。
こうして小さな町の、なかったようなお話は終わります。
君が悪いお話。
気味が悪いお話。
これは、いつかの僕の非日常的な
夢で見た親殺しのお話。