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プロローグ

 蝉の鳴き声が本格化してきた七月下旬、一人の男が死んだ。名を原田太助はらだたすけ

 太助は早朝の散歩を日課としていた。死んだその日も例外ではなく、ひぐらしが鳴く鎮守の森へ続く道を愛犬と共に歩いていた。

 いつもと変わらぬ散歩道をいつもと同じように歩く太助は、いつもは見かけぬモノを見つけて足を止めた。

 太陽は顔を出しておらず星もまだうっすら見える時間だというのに、木々で囲まれた山道に人が立っているのだ。

 愛犬が唸り声をあげ敵意をあらわにする。呼応するようにソレは歩き出す。

 いつの間にかリードを手放していたようで、愛犬は悲鳴をあげて逃げ出してしまった。

 木々が織り成す暗闇により、ぼんやりとしか認識できていなかった存在が、ソレだとわかる距離まで近付いても、太助は逃げなかった。


 逃げればいいのに、逃げ出せない。体がすくんで動けない。


 なぜ?

 だって――。


 太助が死んだその日の正午。山道への入り口で、一つのオブジェとメッセージが見つかった。

 一つは太助だったモノ。一つは始まりを告げる鮮血の文字。


『村の中に人狼がいる。生き残りたければ探し出して殺せ。汝は人間なりや?』


 七月下旬に起きた、始まりの事件。これを皮切りに、小さな村は地獄を再現することとなる。

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