STORY α 依頼
ある冬の日
三回のノックのあと 「どうぞ」と田中は言った。
から~んから~ん ドアが開くと同時に古い鈴が鳴る。
「いらっっしゃいませ、ようこそ卍屋へ」このとき田中は内心、久々の客だっ!!と意気込んでいたいた。
入ってきた男はタキシードをしっかりと着込んだ初老の男性と60代ほどのだった。
「わたしは・・・」と言いかけた男性を田中がさえぎった
「あなたは、黒川家執事ですね。」
すると男性は度肝を抜かれたように仰天した。
「な、なぜそれを・・・」
「簡単なことです、まずあなたの着こなしたタキシード。この近くに会社はありません、それにこの事務所の前の道は一方通行でタクシーも通れない、となるとサラリーマンじゃない。それだけじゃ確証がないのですがあなたのはめている白い手袋と、あなたのノックの回数でわかりました。通常、最近の人はノックを二回しかしません。しかしあなたは、三回しました。これは国際マナーとして通用している回数です。つまりかなりの教養がある人。決め手は、あなたの襟にあるブローチです。その紋様は黒川家の独特の紋様ですから。これらから導かれる答えはあなたが執事だっていうことです。」
しばらくの沈黙の精霊が飛び交った後・・・
パン、パン、パン、パン
「すばらしいよ、すばらしいやはり私の目に狂いはなかった、ここへ来てよかった…どこぞの株式会社、なんと探偵社なぞほざいてるところよりずっと明晰な頭脳を備えている。」
40代ほどの男は黒川 剛佑(くろかわ ごうすけ)と名乗った。黒川家次期当主らしい。執事のほうの男は龍川と名乗った。
さすがに冷静に推理を展開したものの、大富豪の黒川家がこんなボロ屋に何の用なのか・・・田中自身も不思議でしょうがないに違いない。
「で、では要件をうかがいます」田中はなるべく失礼にならないように丁寧な口調で注意していった。
「そんなに緊張なさらずに、ここを選んだ理由は一軒一軒こういうところをしらみつぶしに訪ねているからです。あなたは今まで見たどんな人よりも明晰だ」黒川氏が直々に行った。
「さて、要件だがこれだ」と言って黒川氏が出したのが一枚の写真だった。
写真には一枚のメモ用紙が写っていた。
そのメモ用紙には、一言「KHM 15」としか書いていなかった。
「こ、これはなんでしょう・・・」田中が狼狽していると黒川氏が説明を始めた。
「先日、私の19歳の娘が失踪して…過去に警察に頼んだ事件があったのだが、そこから警察が信用できなくなり今回も頼まなかったのだ、だからこうして私立の探偵のような職業を探しているのだ。その失踪した娘が部屋に唯一残したメモ用紙がこれなのだ。何かあってはまずいと現場保存をしておき写真だけ取ってきたということだ。この件についてはお父様にはまだついたえていない。
」黒川氏が焦っていった。どうやら執事からこの件を聞いて単身赴任のロシアからすぐさま飛んで帰ってきたらしい。
「今までの話から察すると、現場を見せてくれるそうですね」
「はい、そうです。ちなみに住所は静岡県の・・・・・・です お送りしましょか?」
ここで卍屋のポリシーが出ましたぁ
「いえ、いえ書いてある通り、私はいかなるところもママチャリで行くことが本社のポリシーなのです」誇らしげに言う田中。本社と行っても社長:田中 唯一の社員:田中である
すると黒川氏は一瞬驚いた顔をしたが、すぐさまニコッと笑って答えた。
「それは頼もしい、では訪問を期待していますよ。明日の黄昏までに来てくだされば井幸いです。」
「わかりました、では明日の午前11時前後にお伺いします。」
「よろしくお願いいたします。」そう言い残し黒川氏と執事の龍川は去っていた。
遠くで重厚なエンジン音が聞こえた気がした。聞こえたならリムジンだろう・・・
そん中で事務所内の地方ラジオは、静岡県内で一部の地域に集中して電柱に落書きがされていたり、ごみの不法投棄や、パーキングエリアの車内のごみのポイ捨てなどについて報道された、街の環境作りにふさわしくないとして気をつけるように注意するため報道しているようだ。
「さてと・・・」と言い田中は今回使用するママチャリ選びを始めた。母方の実家が自転車のマニアで世界中から様々な自転車を集めており、その中から数台もらったのだ。その中で見た目はママチャリじゃないが性能、商品名がママチャリの05-X146の超高性能をこいでいくとしよう。
05-X146の基本データ
ギアチェンジ7段速 瞬間最高時速55㎞/秒 平均時速35㎞/時 大量量産品ではあるが、ママチャリをスピード走りやすさの重点を置いた通常のマウンテンバイクとも引けを取らない優れ物、現在は非売品となっている。
さらに母方の祖父が改造に改造を重ね、タイヤは雪、雨対応、さらにはGPS発信機も付いているのでカーナビのような機能も付いている。これらの機能とかの有名なアップル社のiphoneと組み合わせればもはや最強と呼べる代物になっている。
どうやらこの事務所から黒川邸まではやく110㎞ほどあるという。ちなみに田中は中学、高校共に陸上部の長距離種目の選手だった。体力は人より多い・・・田中はダウンコートに帽子、マフラー、手袋、耳あてなどの防寒対策をして出かけた。止まるかもしれないので着替えや充電器、ベストセラーの推理小説シリーズなどをバッグに入れた。
そんなことをしつつもiphoneをラジオモードにしてイヤホンを装着した。そして事務所のブレーカーを落とし事務所から出た。田中は愛車の随茶璃05-X146のカギ穴に、カギを装着した、カチンと軽快な音を出してエンジンをスタートさせた。そして田中はカーナビ機能を起動し自転車にまたがった。
なんか、メインのK&Yよりこっちのほうが、名探偵っぽいな…