夢
(ここはどこだ…)
真っ白な空間の中に、ただ一人俺はいた。
真っ白な世界は果てを知らないと言っていいほど、ずっと周囲に広がっていた。
「ねえ、君」
「うお!!!??」
誰もいないと思っていた空間に、ただ一人見知らぬ少年が、俺から5mほど離れた場所に立っていた。
「お前…誰?」
「誰だっていいじゃない」
少年はそう言うと、にっこり笑い俺の周囲を歩き出した。
俺もついていこうとしたが、どうにも足が動かない。
石のように重く、地面から離れようとしないのだ。
「君、名前は?」
「夜空蒼…お前のことは、なんて呼べばいい?」
「ウルブ」
「そうか…ウルブな」
「ねえ」
ウルブは立ち止まって、急に俺のほうへ顔を寄せてきた。
「君の夢は?」
「ねえよ」
「僕はコックさん」
「…」
「僕の料理でみんなを元気にさせたいんだ。僕の夢は叶うかな?」
「夢を叶えるって事はそんな簡単じゃねえよ」
俺はいつの間にかキレていた。
小学生ぐらいの子供にだ。
そんな中でも、ウルブは表情を変えなかった。
「夢を叶えるには、険しい筋道を考えて、それを実践しなくちゃいけない。考えるだけでも、門を開けるだけでも必死なのに、その先にある道はもっと険しい。甘い考えじゃ、夢なんて叶えられないんだよ、一生な」
ウルブの顔が急に無表情になった。
俺はそんなウルブから目を逸らした。
別に嘘は言ってない、でも………
「君は」
ウルブはあそこまで言った俺にまだ声をかけてきている。
顔を上げるとそこには、笑顔のウルブがいた。
「君は今、ひとつの嘘を言った」
「…」
「夢が『無い』んじゃなくて、『あった』でしょ?」
「だったらなんだよ」
「僕は君の夢を応援してる。でも、君があきらめてちゃいけないんだ。僕の応援は、君の気持ちしだいなんだ。あきらめないで。夢はそこに行くのが目標じゃない、どうやってそこまで行ったのか、そこが重要なんだよ」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
俺は荒い息を吐いて飛び起きた。目の前のテレビの画面には、『GAME OVER』の文字が写し出されていた。カーテンの間からは心地よい光が差し込んでいる。俺は部屋の隅にある、勉強机の上にあるものに目を向けた。ずっと使っていなかったため、埃を被ってしまっていた。俺はゆっくりと立ち上がり、机の前まで歩き、埃まみれのものを手をとり、中を開けた。何も無い。外見とは裏腹に中はとてもきれいだった。
「……そろそろ、がっこ、行くか…」
俺はかばんの埃を払った。
どぉもどぉも、『ハードボイルド探偵』です。今回は、まじめな文学系に挑戦してみました。いかがだったでしょうか?
実際自分的には、苦手なんです。こういう、現実味ありありな奴って…。しかし書き始めると、以外にも、ペンが(というか、指が)止まらなくなってしまいました。
自分の中でもかなりの力作だと自負しています。暇があれば自作も作ろうと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。