吾輩は王である
我輩は王である。名前はない。
だが、勘違いしてほしくないのは、吾輩はあの猫とは違って偉大な両親から名を授かっているのだ。ただ幼くして両親が死に、周りの人間に「王」としか呼ばれないせいでちょっと忘れちゃっただけなのだ。そういう意味では「王」が吾輩の名前なのかもしれないな。
吾輩は王である。名前も王である。
両親が3才の時に死んだので、吾輩は3才の時から王である。吾輩は、まだ12才であるが、来年には即位して10年目になるベテランなのだ。まあ、実務はほとんど爺やがやってくれるから、国のことはよくわかってないのだけど。気が向いたら考えるよ、王だからね。
吾輩はベテランの王である。名前は王である。
吾輩は、実は闘病中ということになっているのだ。実際、吾輩の持病のプレイシックと言われる病はなかなか難病で毎日苦しんでいるのだ。朝は、ベッドから起き上がるのも難しいと思ったら、夜には寝れなくなっているのだ。近頃、爺やがお土産で買ってきたゲームボーイとやらは吾輩の病気を加速させているようなのだ。まあ、手放したらよくないことが起こるかもしれないから今日もポケモンを進めるのだ。
吾輩はポケモンマスターである。名前は王である。
昨日、ついに爺やにゲームボーイを取り上げられてしまったのだ。あと少しでポケモンも全クリというところだったのに取り上げられてしまったのだ。吾輩は、相棒のリザードンを奪還するためについ爺やを強い言葉で非難してしまったのだ。
「だって、私もポケモンやりたい~!」
爺や、半泣きだったのだ。定年も超えてるというのにあまりにも働きすぎなのだ。
その夜は2人でポケモンをやってぐっすり寝たのだ。
吾輩はポケモンマスターである。名前も王である。
この間の爺やゲームボーイ事件で、王の業務と吾輩の執事をする爺やの負担の大きさを知って、流石に王として働く覚悟を決めたのだ。覚悟を……決めたのだ。爺やにお願いして、復帰の発表を明後日やることになったのだ。吾輩は再び王になるのだ。
吾輩はニートである。名前とかもうどうでもいいのだ。
働きたくないのだ。もう明日なのだ。働きたくないのだ。
吾輩は駆け出しの王である。名前は王である。
久しぶりに見た外の景色は案外きれいなものだったのだ。高い壁に囲まれたこの国は城からそのすべてを見ることができるのだ。父と母から受け継いだこの国はその細部に至るまで美しいと素直に思うことができたのだ。吾輩はようやく王になるのだ。




