episode.2 原因不明
あれから2日たった。
昨日は検査をして、午後はずっと芽衣ちゃん達と喋っていた。
自分・・・琉という人は、無愛想で、面倒くさがりやで。
それでも運動はできたらしい。
『他にはどんなことをしてたの?』
と聞いたけど、
それには言葉をつまらせて答えてはくれなかった。
まぁ、すぐ他の話になったから、気には止めなかった。
「りゅう、元気にしてるーっ!?」
「め、芽衣ちゃん・・・病院だから騒がないで」
そして今日もまた、お見舞いに来てくれたらしい。
「いいのいいの!ここ個室だし、気にする人いないよ!それと、芽衣でいいってばっ」
「オレが気にするよ・・・」
能天気な彼女につられて、優伍も入ってきた。
「よー琉」
「あ、優伍!聞いてよー、りゅうがちゃんづけで呼ぶ!」
苦笑いしながら優伍を見るといじわるそうな顔をして言った。
「確かに、琉は芽衣って呼んでたなー。ん?思い出すために、名前で呼ばないと」
「や、それはちょっと・・・」
はっきり言って、芽衣はかわいい。
こんな子がオレの知り合いにいることにもびっくりだけど、
それをさらに名前で呼ぶとか・・・!
「りゅう〜〜・・・、名前で呼んで?」
負けた。
こんなの反則だ。
「め・・・・めー・・・・芽衣」
テレまじりに言うのが限界だった。
「・・・こ、こんなりゅうもいいかも・・・」
「ん?な、なんか言った?」
「なんも言ってない!なんも言ってないよ!!あ!あたし飲み物買ってくる!!」
そういうと彼女はドタバタと部屋を去っていった。
「あいつ、まだ・・・」
「どうかしたの?優伍」
なんでもねぇ、と言って、彼は椅子に座った。
「琉、お前、罪悪感のひとつぐらい感じないのか?」
「・・・え?」
「俺だけならまだしも、幼なじみである芽衣のことも忘れてる。わかるか、”忘れられる側”の気持ち」
考えてもみなかった。
いや、正確にいえば考えようとしてなかった。
確かにそうだ。
今のオレには記憶がない。
赤の他人の記憶がなくなるのはまだいいかもしれない。
けれど、友達、しかも親友にいきなり『誰?』ときかれる辛さは図りしれないだろう。
「・・・ごめん」
謝ることしかできない自分が、情けなかった。
「・・・なんてな、冗談だよっ。そんな間に受けんなって」
オレの頭をぐしゃぐしゃすると、芽衣が戻ってきた。
「ふぅ、ただいまー」
「おかえり、芽衣」
「・・・・なんでそんな汗かいてるんだ?」
優伍の言葉のとおり、なんだか暑そうだ。
「き、気にしなくていいんじゃないかな?あはは〜」
「あら、芽衣ちゃんに優伍君」
「菜々さん!」
そこにいたのは菜々さんだった。それと・・・
「琉君。検査結果が・・・出た」
あの時の医師だった。
その姿を見ただけで、自分が記憶喪失なんだと改めて実感する。
「親権者以外は退「オレ達も聞きます」」
「オレ達はりゅうのダチだ。だから、聞く権利がある」
医師がお母さんに目配せすると頷いた。
「わかりました」
そして、一間おく。
「琉君の記憶は・・・
もう戻りません」
暑いですね・・・。
夏バテ注意です!