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【89】はじめての護衛任務編① 〜護衛任務、開始!〜


 冒険者育成学校2年生となったアーシスたちエピック・リンクの次なる課題は、実践型の「護衛任務」だった。


 ──教室の中。


 パブロフが鋭い目つきで生徒たちを見渡す。

「いいかお前ら、次の課題は“護衛”だ。今回はパーティごと、依頼主も目的地もバラバラになる」


 ざわざわと湧き立つ生徒たちの中で、ひときわ目立って声を上げるのはやはりグリーピーだった。


「なんだよ、そんなの余裕だろ!楽勝楽勝!」

 鼻息荒く自信満々な様子に、パブロフの眼鏡が冷たく光る。


「……護衛任務をなめるな」


 ぴしりとした声に、教室が一瞬で静まり返る。


「いいか、護衛で一番優先されることは、"護衛対象の無事"だ。モンスターを倒すのが目的ではない。

 さらに、進行ルートの確認、選定。緊急時の退避経路の確保。地形・気象・街道の安全性を事前に確認するのが鉄則だ。

……なめてると、痛い目にあうぞ」


 ズシン、と重く響く言葉に、さっきまで浮かれていた空気が一変した。



   ◇ ◇ ◇


 ──数日後。

 ウィンドホルムの街外れ、冒険の起点となる街門。


「はじめまして、スコッチといいます。マルケスタまで、どうぞよろしくお願いします」


 エピック・リンクの依頼主は、スコッチ=カルメンという若い商人。線が細く、どこか頼りなげに見えるが、人当たりは良く、ニコニコと微笑んでいた。


「よろしくお願いします!お任せください!」

 アーシスが元気よく挨拶する。

「安全なルートは事前に確認してありますので、ご安心を。」

 アップルもぴしっと応えると、スコッチは安心したように笑みを深めた。


 こうして、エピック・リンクの護衛任務がスタートした。



   ◇ ◇ ◇


 しばらくは順調そのものだった。

 道中、小型の弱いモンスターがちらほらと出現したが、いつもの連携で難なく撃退。


「ふわぁ〜、楽勝だな〜」

 見張り役のアーシスがあくびをかみ殺しながら歩く。


「ちょっとアーシス!今はあんたが見張り担当なんだから、ちゃんとしなさい!」

 荷馬車からアップルが顔を出して叱る。マルミィとシルティは隣でウトウトしていた。


「わかってるって〜」


 だがその時──


 ガサリ、と茂みが揺れ、大型のカエル型モンスターが飛び出してきた。


「ゲコォォォ!!」


「な、なんでここにオオヒキゲッコが!?」

 アップルが叫ぶ。


「どわあっ!?」

 咄嗟に荷馬車の前に立ち塞がったアーシスは、カエルの体当たりを防ぐが、荷馬車は横転してしまう。

 すぐさまアップル、マルミィ、シルティが外へ飛び出す。


「スコッチさん!大丈夫ですか!?」

 アップルが即座にヒーリングをかける。


「……くそっ、シルティ、力勝負でいくぞ!」

「おう!」

 アーシスとシルティが突撃したその瞬間──。


「だ、だめにゃ!!」

 にゃんぴんが頭の上で悲鳴を上げた。


「え?」

 カエルは口を大きく開き、ドロリとした緑色の液体を噴き出した。

 アーシス、シルティ、そしてにゃんぴんまでが一瞬でネバネバの液体に覆われる。


「うわっ……」

 シルティとにゃんぴんはその場に崩れ落ち、アーシスも顔色が悪くなり、苦しそうに血を吐いた。


「毒、です…」

 マルミィがつぶやく。


 苦しみながらもアーシスは立ち上がり、よろけながら荷馬車を襲おうとするカエルへ向かう。


「……アーシスくん!?」

「ぐっ…、俺は大丈夫だ。……シルティとにゃんぴんを頼む……!」


 倒れ込んでいるシルティとにゃんぴんにマルミィは解毒魔法をかけはじめる。


 剣を構え、カエルに向かうアーシス。


「アーシス、オオヒキゲッコの弱点は腹部!熱に弱いよ!」 アップルが叫ぶ。


「……了解…!」

 アーシスは小声で呪文を唱え、剣に火炎魔法を宿らせた。飛びかかるカエルの舌をスライディングでかわし、勢いそのままに腹部を切り上げる。


「うおおぉぉぉ!!」


 剣が腹を裂き、火炎が内部を焼き尽くす。悲鳴を上げたカエルはのたうち回り、やがて動かなくなった。


「アーシス君っ!」

 マルミィが駆け寄り、解毒魔法をかける。アップルもすぐにヒーリングを施す。


「ありがとう……助かった……」

 アーシスは肩で息をしながらスコッチを気遣う。


「ご無事で何よりです……すぐに荷馬車も立て直します!」 散らばった荷物を拾い集めるアーシス。その肩に、じっと険しい目をしたにゃんぴんが飛び乗る。


「……どうした、にゃんぴん?」

 アーシスが小声で尋ねると、にゃんぴんはほんの一瞬視線を鋭くさせた後、「……なんでもないにゃ」とだけつぶやいた。


 荷馬車を復旧し、改めて旅を再開する。



   ◇ ◇ ◇


 しばらく走ると、ついに視界が開ける。


「……おお……」


 ウィンドホルムとはまったく違う、港と市場の町並みが広がっていた。大河ドヴィリバーのほとりにそびえるその街──。


「ここが……商人の街、マルケスタか」

 異国情緒あふれる風景に、アーシスは息を呑んだ。


(つづく)


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