【81】進級試験編④ 〜未調査ダンジョン突入!命をかけた最終試験〜
曇り空が広がる朝。
冒険者育成学校の校庭には、緊張した面持ちの一年生たちが整列していた。
その前に立つのは、やつれ顔に七三分けの担任──パブロフ。
「よし、集まってるな。今から進級試験、後半戦の内容を説明する」
生徒たちの表情が引き締まる。
「お前たちが向かうのは──“未調査区域”にある、実際のダンジョンだ」
ざわ……と、場の空気が揺れる。
「この区域はまだ十分な調査が済んでいない。魔物も罠も“リアル”だ。命の危険はないよう監視はしているが、それでも甘く見れば負傷は免れん。場合によっては、命を落とす危険すらあると心得ろ」
一瞬、空気が凍るような静けさが場を包んだ。
「……とはいえ、今回はあくまで“試験”だ。よって、各自に緊急脱出用の《帰還の転環石》を一つずつ支給する。ピンチになったら迷わず使え。命あっての進級だ」
教師たちが、手のひらサイズの魔導石をそれぞれの生徒に配っていく。
「試験の内容はこうだ」
パブロフは指を一本ずつ立てていく。
「一、制限時間内に、できるだけ深く進み、無事に帰還すること。
二、味方が倒れた場合、減点対象。助けられるなら助けろ。
三、罠の解除をミスった場合、対象モンスターが強化される。下手をすれば全滅する。
四、敵から逃げてもいいが、一定数の撃破と進行が求められる。逃げ続けるだけでは評価にならん。
五、制限時間は180分。それを超えた場合、問答無用でチーム全体の失格」
生徒たちの顔に緊張が走る。
普段の演習とは違う。これは、文字通り“命のやり取り”なのだ。
「この試験はな……“現実”を見せるための試験でもある。魔物は待ってくれない。罠は気まぐれに牙をむく。仲間がミスをすれば、自分も道連れになる。全てを受け入れ、全てを乗り越えろ」
パブロフの目が、生徒一人ひとりを見渡すように動いた。
「以上だ。……行ってこい、お前たち。胸を張って、戻ってこいよ」
アーシスは仲間たち──シルティ、マルミィ、アップルと目を合わせ、うなずいた。
◆ ◆ ◆
──ダンジョン前。
遠くに並ぶ教師陣に見守られる中、生徒たちは次々とダンジョンへと進んでいく。
「じゃ、俺たちも行こうぜ」
アーシス=フュールーズが、腰の剣を軽く叩いた。
「了解」
シルティ=グレッチが短く答える。
「ふぇぇ……。が、がんばりますぅ……」
マルミィ=メルミィは目を潤ませながらも杖をぎゅっと握る。
「支援と回復は任せて!無茶はしないでよ、アーシス」
アップル=チェチェンティンは手のひらにそっと魔法の光を灯す。
四人が歩みを揃え、ダンジョンの前に立つ。
その先には、岩盤と闇が支配する“未知の領域”が広がっていた。
「よし……行こうぜ。進級の、その先へ!」
アーシスが声を上げ、チーム“エピック・リンク”がダンジョンへと足を踏み入れた──。
(つづく)




