表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/186

【75】アンセスターダンジョン研修編④ 〜最終日!エピック・リンクの快進撃〜


 アンセスターダンジョン──その歴史は悠久。

 深く、暗く、そして未知なる領域へ。


 アーシスたち《エピック・リンク》のパーティは、確かな足取りでその最奥へと挑んでいた。


 三日目。

 到達階層は5階。

 そして今日──研修最終日。


「じゃあ、行こうぜ!ラストスパートだ!」

 アーシスの声がダンジョンの石壁に反響する。


 仲間たちは頷き、それぞれの武器と杖、そして気持ちを整えていた。


「ボペットさん、準備できました」

 アップルが優しく声をかけると、インストラクターのボペット=ヤンクスはビクッと肩を跳ねさせた。


「え、あ、ああ……。ちょ、ちょっとな、腹の調子が……」  青ざめた顔でお腹を押さえる彼。昨日から続くこの反応は、明らかに恐怖によるものだった。

(な、なんなんだこいつら……こっちは罠に一つ引っかかっただけで命がけだったのに……)


 ダンジョン6階、7階と進むにつれ、敵は徐々に凶暴さを増していた。

 それでも《エピック・リンク》の四人は、まるで研ぎ澄まされた刃のように──


「《氷晶壁》」

 マルミィが素早く魔法を発動、横から回り込んできた魔獣の動きを封じる。


「《加速ヘイスト》!」

 続けてアップルがアーシスとシルティに支援魔法を重ねる。


「──ありがと!」

 シルティがその隙に滑り込むように剣を振り下ろし、封じられた魔獣の心臓を正確に貫いた。


「おりゃああああ!!」

 アーシスは残る敵を一閃、地に倒した。


 ボペットはすでに座り込んでいた。鼻の奥がツンとして、じわりと涙と鼻水が混じる。

(つ、強すぎる……こんな学生たちがいるなんて……俺が教えることなんて、何もなかったじゃねえか……)


「ボペットさん、大丈夫ですか?」

 マルミィがそっと手を差し出す。ボペットはそれを見て、むしろ自分のほうが守られていると確信した。



   ◇ ◇ ◇


 ──そして、アーシス達はついに8階層に到達する。


「……これは、すごい景色だな」

 アーシスが呟いた。


 その階層は他の階とは異なり、天井が高く、半透明の光る鉱石が周囲に浮かんでいた。

 中央には、起動していない古代の魔導装置。歴史の重みを感じさせる空間だった。


 だが──


「タイムオーバーです」

 パブロフの使い魔から、研修終了の合図が魔導板に表示される。


「くっそおおおおお……まだ行けるのにいいいい!!!」  アーシスが悔しそうに地面に座り込む。


「うぅ……あと一層、あと一層だけでも……」

 マルミィも膝を抱え、静かに嘆く。


「まあ、ここまで来れれば、悪くないでしょ」

 シルティが腕を組み、どこか誇らしげに言った。


「ふふ……みんな、よくがんばったね」

 アップルが笑顔を浮かべ、全員を見渡す。


 このアンセスターダンジョン研修での《エピック・リンク》の最終到達階層── 8階。これは、冒険者育成学校における歴代最高記録だった。


「……あ、あのな、お前ら……」

 ボペットが呟く。声は震えていた。


「なんだかんだで……助かったぜ。……お前ら、すげぇよ……まじで……」

「こちらこそ、ありがとう、ボペットさん」

 アーシスが笑って手を差し出す。


 ボペットは一瞬、ためらったが── がっしりとその手を握り返した。


 そして彼らは地上へと戻る。


「さぁ、帰ろうぜ!」

 ボペットは勢いよく歩き出した。


「あ、そこ、落とし穴ありますよ」

「…え?」


「あああぁぁぁぁぁぁ…」

 最後の最後で落とし穴を踏み、一人下層に落ちるボペットだった。

(さようなら、ボペットさん。今まで、ありがとう…)



   ◇ ◇ ◇


 ダンジョンを出ると、温かい風が達成感と安堵を運んで来た。


「次は……もっと深くまで行けるよな、絶対」

 アーシスが笑った。

「うん!」

 マルミィが頷く。

「食料は多めに準備しておけよ」

 ぐぅ〜っと鳴るお腹を押さえながらシルティが言った。

「お疲れさまでした、みなさん!」

 アップルが締めるように声を張る。


 ──こうして《エピック・リンク》は、また一歩、強くなった。

 それはきっと、終焉の先に続く“物語”の中で確かな礎となるだろう。


(つづく)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ