【66】温泉リゾート編① 〜出発!憧れのリゾートへ〜
冒険者育成学校、正門前。
晴れ渡る青空の下、ズラリと並んだ生徒たちの前に、馬車型大型バスが二台停まっていた。
白銀に輝く車体に、豪華な金の飾り。馬は四頭立て、毛並みはどれも極上。
見た瞬間、全員のテンションが爆発した。
「うおおぉぉ!すっげぇ!!」
「えっ、今日これ乗るの!?」
「うそでしょ、これ超高級仕様だよ……!」
騒ぐ一年生たちの中、アーシスも目を輝かせていた。
「すげーな!俺、こういうの初めて見た!」
にゃんぴんもアーシスの肩の上で興奮気味に跳ねる。
「にゃふー!乗り心地良さそうにゃ〜!」
担任パブロフが腕時計をちらりと見ながら言った。
「はーい、整列整列!乗車時間押してんだからな! 一年生はこのバス、二年生は向こうのバスに分乗だ! 荷物積み込み終わったら、すぐ出発するぞー!」
生徒たちはそれぞれ自分の荷物を抱え、わちゃわちゃと乗り込んでいった。
バスの中は、早くもわいわい賑やかだった。
「やべぇ、椅子ふっかふか!」
「窓でっか!」
「飲み物サービスあるし!」
思い思いに騒ぎながら、座席を取り合う一年生たち。
アーシスは、シルティ、マルミィ、アップルたちと並んで座った。
「ふわあ〜……楽しみすぎて、もう帰りたくない……」
アップルがすでに半分トロけている。
「まだ着いてないだろ」
アーシスがツッコミを入れると、シルティがにやりと笑った。
「……でもわかる。テンション上がる」
マルミィも小さく、でも確かに頷いた。
にゃんぴんは窓際にちょこんと座り、ふわふわと空を見ている。
「リゾート……おやついっぱい……たのしみ……」
馬車が出発すると、車内には穏やかな揺れと軽快な車輪の音が響いた。
のどかな丘陵地帯を越え、川を渡り、林を抜ける。
どこまでも続く青空と、風にそよぐ草原。
まるで、絵本の中の冒険旅行のようだった。
「ははっ、マジで遠足だな!」
アーシスは窓の外を見ながら笑った。
「うん……すごい景色……」
マルミィも、頬を紅潮させながら外を見つめる。
「アーシス、窓側代わって!」
「やだ!」
「こらこら、ケンカしない」
シルティが呆れながらも微笑む。
こうして、わいわいガヤガヤ賑やかに馬車は走り続け──
◇ ◇ ◇
──数時間後。
馬車は、ひときわ大きな門の前で停まった。
《リゾート・シュエンブルグ》
石造りの重厚な看板が誇らしげに掲げられている。
「着いたぞ!リゾート・シュエンブルグだ!」
パブロフの声に、生徒たちは一斉に歓声を上げた。
「でっか!!」
「すごーい、ほんとに温泉ついてるー!!」
見上げる先には、広大な敷地に立ち並ぶ温泉宿とスパ施設。
その周囲をぐるりと囲む森と湖。真っ白な噴水が、きらきらと陽光を反射していた。
まさに、夢のリゾートだった。
「すっげぇぇ……」
アーシスも思わず呆然と立ち尽くす。
にゃんぴんもふよふよと浮かびながら目を丸くしている。 「にゃんという……しゅごい……」
「みんな〜、部屋割りはこのあと発表するから、まずはロビーで集合だ」
パブロフの指示に従い、生徒たちは荷物を抱えてリゾートの中へと入っていった。
天井の高いロビー。きらめくシャンデリア。高級な絨毯と、どこまでも広がる大理石の床。
そこに、学年を超えた少年少女たちの賑やかな声が響く。
そして、アーシスはふと思った。
(……最高の旅になりそうだな)
わくわくと高鳴る胸を押さえながら、彼もまた、夢のリゾートへの第一歩を踏み出していった──。
(つづく)




